気、血、水のバランスをととのえる
花粉症は、アレルギー症状ですが、鼻水やくしゃみなどの症状を改善させるには、漢方の視点から言うと、気、血、水の乱れを改善することである程度対応できます。気、血、水の乱れは、おもに冷えやストレスなどで起こりやすくなります。体を温め、ストレスによって滞ったり、不足したりする気を補う食養で、気、血、水のバランスをととのえるようにしましょう。
また、花粉症を発症しやすい春は、体内の気が昇りやすいので、熱が上に逃げて体の上部にこもり、それが原因で鼻や目の炎症を引き起こします。この現象は、冬に部屋を温めても、冷気は下にたまり、暖気が上昇するのと同じで、体も下半身が冷えていると、熱が上昇し、鼻や目の炎症に繋がります。
とくに、春になると女性はスカートに素足など、薄着をする人が多いのですが、このとき、できるだけ下半身を冷やさないよう注意してください。
気、血、水のバランスをととのえるには、どうすればよいでしょうか。
まずは、気を巡らせることを考えましょう。血や水を巡らせているのは気で、気が滞っているとすべてに影響するからです。
そして、食事では、体が冷えてくしゃみを連発し、水っぽい鼻水が出る人は、タマネギ、金柑、鮭など、体を温め、気の滞りを解消する食材をとりましょう。
タマネギの辛味成分アリシンは、胃腸を温め消化と新陳代謝を促してくれます。利尿作用のあるカリウムも豊富で、水毒の改善にも役立ちます。なお、タマネギをサラダなど生で食べるときは、水にさらす人が多いと思いますが、その際、アリシンも減ってしまうので、さらす時間は2、3分にとどめるようにしてください。
粘り気のある鼻水が出る人の場合は、熱がこもっているので、余分な熱をとる食材が必要です。穀類なら、小麦やハトムギ、野菜類はホウレンソウなどの葉野菜、キュウリ、白菜、キャベツ、モヤシなど定番の野菜の大多数のほか、セリ、タケノコなど、春が旬の野菜も含まれます。
セリは春の七草の一つであることからも伺えるように、古くから栄養価や薬効が高いことで知られてきました。解熱作用と発汗、利尿など水分の代謝をよくする作用があり、香味で食欲もアップします。
タケノコは、熱を収めイライラを落ち着かせます。利尿作用や、便通をよくする作用など、体内の毒素や老廃物を排出するデトックス効果が高い食材ですが、粗い食物繊維が多く、体を冷やす性質が強いので、胃腸の弱い人や冷え症の人は控えめにしてください。
日本は4月からが新年度のため、春は卒業、入学、入社、異動、引っ越しなど、環境が大きく変わる時期でもあります。そのため、環境の変化からストレスが生じ、気の流れが滞りやすくなり、花粉症の悪化に繋がります。
気が滞ると食欲が落ち、食べないでいると"心身にとってよい気"も入ってこないという悪循環に陥って、慢性的な気滞の状態になってしまいます。
ストレスを軽減させるには、主に香りの高い食材がおすすめです。なかでも花粉症には、ジャスミン、紫蘇、ミントなどが有効です。
ジャスミンはモクセイ科の花で、身近なものとしては、その花の香りを緑茶に移したジャスミンティーが一般的です。爽やかな香りのジャスミンティーは、イライラを鎮め、気持ちを落ち着かせる効果や、血行をよくし、免疫力を高める作用などがあります。お茶として飲むほかにも、ジャスミンティーで豚肉を煮ると肉の臭みが取れて、柔らかくなるなど、料理に使うこともできます。
紫蘇は、胃や腸をととのえる働きや、発汗、利尿、精神安定など、さまざまな効能があります。刺身のツマや梅干しに用いられるのは、抗菌、防腐作用も高いためです。ただし旬は夏で、春のスギ花粉の時期は生の葉は手に入りにくいので、紫蘇茶や紫蘇ジュース、紫蘇酒などで対処するとよいでしょう。
清涼感のあるミントの作用は、解熱、鎮静で、炎症を抑え鼻づまりを緩和します。ハーブティーとしてドライハーブが市販されていますが、丈夫で育てやすく、春から秋まで収穫でき、フレッシュな香りを長く楽しめるので、家庭で栽培してみることもおすすめします。
体の不調はある日、突然起こるものではありません。そのため、食養では、調子が悪いその日、そのときだけでなく、一つ前の季節の過ごし方も大切だと考えています。
春にあらわれる花粉症の場合、その前の季節にクリスマス、お正月、バレンタインデーなどがあり、たいていの人がカロリーの高いもの、甘いものなどを食べ過ぎ、飲み過ぎる傾向があります。
花粉症などのアレルギーは、免疫機能の異常によるものなので、免疫機能を司っている腸が、過食や過飲によってダメージを受けると、アレルギー症状も出やすくなります。
また、冬の間は、食べたものや、それによって負担がかかった胃や腸の症状も、滞りがちで、体に蓄積されやすくなります。それが、春の芽吹きの季節になると、いっせいに体の外に出ていこうとして、花粉症の症状も強まるのです。
花粉症の症状を軽くしたいのならば、冬の間、食べ過ぎに注意して、胃や腸に負担をかけないようにすることをおすすめします。
温性 | 米麹、タマネギ、エシャレット、金柑、カジキマグロ、鮭、紫蘇、ジャスミン、ワイン、八角 |
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平性 | キビ、小豆、キャベツ、グリーンピース、ピーマン、スダチ |
涼性・寒性 | 小麦、ハトムギ、麩、春雨、豆腐、菊花、ホウレンソウ、小松菜、セリ、タケノコ(寒)、モヤシ(寒)、ミント、アサリ(寒)、ワカメ |
春の食材 |
菜の花、タラの芽、アサリ、グリーンピース ●おかず タケノコご飯、グリーンピースご飯、菜の花のゴマ和え、ヨモギ茶 |
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夏の食材 |
タマネギ、紫蘇、キャベツ、ピーマン ●おかず 紫蘇ジュース、じゃこピーマン |
秋の食材 |
サトイモ、鮭、菊花 ●おかず 菊花のおひたし、鮭のムニエル、金柑のハチミツ漬け、サトイモの煮もの |
冬の食材 |
ホウレンソウ ●おかず ホウレンソウのゴマ和え、サトイモのグラタン |