自分を成長させるには適度な緊張感がポイント-能力のエッジを探る

「エッジ」という概念を用いて

 

3月を迎え、2008年度も締めくくりの時期となりました。異動や転勤、転居といった変化の時期を迎える方も多いでしょう。新たな世界を前にして、期待に胸を膨らます方、どちらかといえば期待より不安が大きい方、様々だと思います。

今回は、「エッジ」という概念をもとに、変化の多い時期を新たな成長の機会として捉える方法について、探ってみたいと思います。

~例をまじえて考えてみましょう~

例えば、経験のない新たな仕事を任されたとします。

Aさんは、不安や心配で頭がいっぱいになり、身動きをとることができません。行動に移す前に不安で押しつぶされ、上司に相談して元の仕事に戻してもらいました。後になってよくよく考えてみたら、過去の経験が活かされる箇所がいくつもありました。

一方、Bさんは、新たな仕事に1日も早く慣れようと、毎日遅くまで残業をします。進捗が遅いことに気がつくと、休日出勤もし、家にも仕事を持ち帰ります。思うように進められない自分を責め、もっともっとと頑張ります。最近よく眠ることができず、家族は心配していますが、考えないようにして仕事に邁進します。

~エッジとは何か~

国語辞書には、「ふち」「へり」「端」といった意味が記載されていますが、心理学の分野では、「物事に取り組む際に、能力が、緩みすぎず、無理もしすぎずに発揮される地点」としていった意味で使われることがあります。

人は、力が緩みすぎている(エッジの手前にいる)と、余裕がありすぎて心が散漫になります。既に経験済みのことが多く、新たな成長には繋がりません。一方、無理をしすぎている(エッジを越えている)状態では、必要以上に緊張が高まります。長く維持することができず、体験をゆっくり味わうこともできません。「エッジ」という概念では、適度な緊張感の中で、この中間地点を保つときに、新たな可能性が生まれてくると考えます。

エッジを保つとき、様々な心の動きが浮かび上がります。不安、怒り、欲求不満、罪悪感等です。これらは、思い込みや固定概念、過去の経験に伴うものであることも多く、実際に今ここでの体験に根ざしているものかどうか、注意深く観察する必要があります。

上記の例で考えると、Aさんは、心の動きに圧倒され、冷静さを失い、エッジの手前であきらめてしまうという傾向が、Bさんは、エッジを大きく超えていることに気づかず、罪悪感に支配されて頑張りすぎてしまい、その時の体験に十分意識を向けることが難しいという傾向を読み取ることができます。これは、どちらがいい・悪いという話ではありません。エッジは人それぞれ、またその時々によって異なります。心の動きに惑わされる難しい一面もあるため、自分と対話しつつ、試しながら探るという丁寧な作業が必要になります。

~ご自分の傾向を振り返ってみましょう~

Aさん、Bさんの例を参考に、皆さんの傾向を振り返ってみましょう。新たな局面を迎えたとき、皆さんはどんなスタンスで向かい合ってきましたか?その時浮かび上がってきた心の動きはどんなものであったか、思い出してみましょう。そして、今後同じような局面を迎えた際に、どんなスタンスで向かい合いたいか、考えてみましょう。

ご自分自身と対話し、エッジを探る取り組みには、新たな成長の可能性が潜んでいます。変化の多い時期を、主体的に取り組む手段のひとつとして、是非活用してみてください。

【執筆】
ピースマインド・イープ 若尾秀美


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