【中鎖脂肪酸】ちゅうさしぼうさん

 脂肪はダイエットの大敵、そして健康の大敵——そう考えてできるだけ「油物」は食べないように心掛けている人も多いでしょう。確かに脂肪=油脂は1gあたりのエネルギーが9KCalもあり。B摂り過ぎれば肥満の原因になるばかりか、動脈硬化や心臓病、心筋梗塞を引き起こしかねないことも周知の通りです。

 ところが中鎖脂肪酸を成分とした油は、これまでの常識をくつがえし、体脂肪として蓄積されないばかりか、体についているほかの脂肪も燃やすというダイエット効果が期待できる「からだにいい油」なのです。

3カ月で体脂肪が4.4キロ減った

 まずは近藤和雄教授が行った油の実験を紹介しましょう。

 AとBのグループに全く同じ食事を12週間してもらい、Aは中鎖脂肪酸配合の油、Bは長鎖脂肪酸の油(大豆油)を使用しました。その結果、なんと中鎖脂肪酸の油を摂った人たちは、平均で体重が4.5kg減り、体脂肪も平均4.4kg減ったのです。さらに、ウエストは平均4.0cm(!)も減少しました。

 つまり中鎖脂肪酸が配合された油には、体脂肪を減らす効果がはっきりと確認されたのです。言い換えれば、中鎖脂肪酸はダイエット効果が期待できる成分だということです。

 


●中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸
 ところで、中鎖とか長鎖とは、いったい何なのでしょうか。簡単にいえば、脂肪酸を長さで分けたもの。脂肪酸を構成する炭素数の長さです。リノール酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、あるいはステアリン酸といったお馴染みの脂肪酸はすべて長鎖脂肪酸です。私たちの身近にある油脂類は、そのほとんどが長鎖脂肪酸で構成されています。
 短鎖脂肪酸の代表は酢酸です。「えっ、お酢って脂肪酸なの!?」とちょっと意外な感じがしますが、間違いなく脂肪酸の一種です。
 そして中鎖脂肪酸は、身近な食品に含まれている天然の物質です。たとえば牛乳やチーズなどの乳製品や、人間の母乳にも含まれています。他にパーム核油、ヤシ油にも中鎖脂肪酸が含まれています。中鎖脂肪酸は、こんなに身近にあったのですが、ほとんど注目されなかったのは、調理には使いにくい油だったからです。それが新技術により、調理にも使える健康オイルとして登場してきて、今、こうして注目を浴びているわけなのです。

油なのに、なぜ体にたまらないの

 油は体脂肪を増やす元凶だといわれてきました。それに対して、中鎖脂肪酸は体脂肪を増やさず、むしろ減らしてくれるというのですから、普通の油とは、だいぶ性質が異なっています。なぜ中鎖脂肪酸にはそのような働きがあるのでしょうか。

 普通の植物油に含まれる長鎖脂肪酸は、胃では消化されずにそのまま通過し、十二指腸に入ってから分解され、腸管壁で吸収されます。その後リンパ管経由で血管に入り、血流にのって体の各組織を廻る間に、細胞に取り込まれてエネルギーとして利用されたり、体脂肪として蓄積されるという経路をたどります。
 

 それに比べ、中鎖脂肪酸は、胃で消化されて、速やかに腸管壁に吸収され、肝臓に運ばれていきます。そして肝臓で燃やされてエネルギーとなり、最後は水と炭酸ガスになってしまいます。

つまり中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸より約4倍も吸収が速く、代謝も約10倍速いので、体脂肪にならないわけです。

 さらに、中鎖脂肪酸が肝臓で燃えるときに、中鎖脂肪酸以外の脂肪も燃えやすくなると考えられています。自分自身は燃えてしまって蓄積されないうえに、ほかの脂肪まで燃やしてくれるというのですから、中鎖脂肪酸は肥満防止や動脈硬化の予防につながると言えます。中鎖脂肪酸を含む油は、現代人の健康を守ってくれるのです。


近藤和雄先生
医学博士・お茶の水女子大学教授・同大学生活環境研究センター長
脂質代謝、臨床栄養学を専門に研究