【フィトンチッド】ふぃとんちっど

 最近、森や林の中を歩きましたか? 今回は樹木が発散する森林の香りのお話です。緑溢れる森林を散策していると、気持ちが落ち着き、すがすがしくなってくる、そういう経験は誰もがしていることでしょう。森の空気はとても澄んでいて、どこからともなくかすかな香りが漂ってきたはずです。それが『フィトンチッド』。樹木が自分で作り出す揮発性の微量ガスで、その主な成分はテルペン類と呼ばれる有機化合物です。「たかが木の香りじゃない!」と侮ってはいけません。フィトンチッドは私たちの健康づくりに役立つ存在で、木の香りのパワー=フィトンチッドの効能が、今注目されているのです。


フィトンチッドは自己防衛の武器

 フィトンチッドがどんな有効作用を持っているかを考える前に、「樹木がなぜフィトンチッドを作るのか」その理由から調べてみましょう。
「樹木は光合成を行っています。私たちが食事を摂るのと同じだと考えて良いでしょう。太陽エネルギーを利用して、炭酸ガスと水から炭水化物を作り酸素を放出するのです。そしてこの炭水化物を元に二次的にフィトンチッドなどの微量成分を作り出します」(野村修三先生)。
 このフィトンチッドには、樹木が自分の命を守るためのさまざまな働きがあります。昆虫や動物に葉や幹を食べられそうになったとき、根を腐らせる病害菌に冒されそうになったとき、あるいは他の植物が自分のテリトリーを犯そうとしたとき、土に根ざしている樹木は移動することはできません。外敵からの攻撃にスタコラと逃げ出すことができないんです。そこでフィトンチッドを発散して、身を守っているというわけです。そう、フィトンチッドは、樹木にとって命を守る自己防衛の武器。500年とか1000年以上も長生きできるのも、フィトンチッドのおかげと言ってよいでしょう。
 そもそもフィトンチッドとはレニグラード大学のトーキン教授が創り出した言葉で、フィトン=植物、チッド=他の生物を殺す能力を意味しているのです。ところが、「フィトンチッドは樹木に害なすものには有害物質ですが、人間に対しては、良い作用となって働きかけてくれます」(野村先生)。
 森林浴効果だけでなく、たとえばヒノキチオール(タイワンヒノキ、青森ヒバなどに含有されている成分)は、消臭剤や石けん、化粧水、入浴剤などでお馴染みですよね。

フィトンチッドの持つ消臭・抗菌作用を使っている注目の消臭機「ヴィ・ダッシュ」。フィトンチッドを部屋中に拡散し悪臭を分解、マイナスイオンで気分もリフレッシュ。部屋で森林浴気分が味わえます。本体¥50,000 消臭液¥2,000/トーマス


抗酸化作用など7つの働き

「フィトンチッドの主な働きは(1)抗菌・防虫作用、(2)消臭・脱臭作用、(3)リフレッシュ作用がよく知られていますが、私はさらに(4)抗酸化作用、(5)疲労回復作用、(6)空気清浄作用、(7)抗アレルギー作用にも注目しています」(野村先生)

 森の香りは、大脳皮質を活性化し、自律神経の調整を図り、副交感神経の働きを優位にさせます。これがフィトンチッドのリフレッシュ効果ですが、さらに野村先生は「慢性疲労による筋肉疲労、微熱、頭痛、抑うつ、集中力の低下にも効果が期待できる」といいます。
 また抗酸化作用では、「新しい文献によると活性酸素をブロックすると報告されています。生活習慣病の大きな原因が、脂質や糖分の過剰摂取・環境汚染による体内の活性酸素の増加であり、その結果免疫力が低下するからだといわれていますので、フィトンチッドに大きな期待を寄せています」(野村先生)。
 そして、この他に野村先生がもっとも注目しているのがアトピー性皮膚炎に対する作用。
「アトピー性皮膚炎の患者さんは食物を消化する力が少し弱いので、食物アレルギーを起こしがちです。さらに活性酸素が増えて、生命維持歯車の働きが悪くなるんですね。フィトンチッドの抗酸化作用は、アトピー性皮膚炎にも有効と考えられます」(野村先生)。
 さあ、森林に入ってフィトンチッドをたくさん浴びましょう!


野村修三先生 医学博士
ノムラメディカルクリニック院長/アレルギーの専門医。
栄養療法からの生体内環境改善治療、血液脆弱テスト、活性酸素測定を行っている。
http://www.tomte.co.jp/