【初乳】しょにゅう

 外出時はマスク、家に着いたらうがい、手洗い。猛烈な勢いで蔓延するインフルエンザの予防はこれだけでは心配…と思っていませんか?
 それが今、体の中から予防する方法が注目されています。
「人の体に本来備わっている免疫力は、ウイルスを無害化します。ですから、免疫力をアップさせれば万が一ウイルスが体に入っても感染しにくく、また感染しても重症になりにくいんです」(加地展之先生)
 その免疫力をアップさせるのに初乳がとても高い効果を発揮することがわかりました。
「初乳とは、産後1週間くらいの間に出る母乳のこと。赤ちゃんに必要な栄養成分はもちろん、赤ちゃんをさまざまな感染症から守る免疫物質もたくさん含まれています」(加地先生)
 この初乳を摂ることで、ウイルスから体を守れるのです。ちなみに、初乳の免疫物質は人より牛の初乳の方にたくさん含まれています。
「牛の初乳には人の初乳の数十倍もの免疫物質、とくにIgGという物質が約50倍も含まれています。IgGは強力な免疫物質で、体内に侵入してくるどんなウイルスでも無毒化してくれます」(加地先生)
 なんと、生まれてから6時間以内に初乳を飲まなかった子牛は22~75%が死んでしまうそう。この結果からも、初乳がいかに重要かがわかります。

感染しにくく、重症化も防ぐ!

 初乳を摂るとどうして免疫力が上がるのでしょうか?
「まず、口の中の粘膜をコーティングしてウイルスの侵入を防ぎます。また、体内の免疫物質も増加させウイルスを退治するんです」(加地先生)
 実際に、加地先生は初乳のサプリメントを使って3~9歳の小児を対象に、上気道感染症の臨床試験を行っています。
「上気道感染症とはウイルスなどにより、鼻やのどに炎症を起こす病気の総称で、風邪もこれに含まれます。そこで、子供たちを2つのグループに分け、初乳を摂るグループ97名と、摂らないグループ99名を冬期2カ月間検証。すると、初乳を摂らないグループは発症が平均1.28回だったのに対し、初乳を摂ったグループでは平均0.96回と明らかに発症が抑制されました」(加地先生)
 また、感染率と重症化率が高い3~6歳児では、病気が治るまでの日数も減少しました。
「初乳を摂っていないグループが平均8.14日だったのに対して、初乳を摂ったグループは平均4.67日。つまり、風邪にかかりにくく、かかっても治りが早いということなんです」(加地先生)

 風邪やインフルエンザにかかるメカニズムは、大人も子供も同じ。大人が初乳を摂っても、同様の効果が得られます。
 実際、30~60歳の男女を対象に口やのど、鼻などに分泌されるS-IgAという免疫抗体の分泌量を調べた試験でも、初乳を摂ったグループは摂らなかったグループに比べ有意に増加することが確かめられています。
「新型インフルエンザについては、実験データがないので確かなことはいえませんが、予防は期待できますよ」(加地先生)
 また、初乳は花粉症にも効果を発揮するそう。
「臨床試験でも、初乳摂取群は鼻水とくしゃみが明らかに抑制・緩和されたという報告があります」(加地先生)

髪や肌などのエイジングケアに

 初乳には、美肌に効く成分も含まれています。
「それはIGF-1という成長促進物質で、筋肉や骨密度、皮膚のハリ・ツヤ、毛髪、記憶力・気力の維持などにかかわります。この成分は16~18歳が分泌のピークで、40代になると3分の1くらいまでに減ってしまいます。これが老化要因のひとつ。初乳には牛乳の10倍ものIGF-1が含まれているんです」(加地先生)
 初乳を補給するとIGF-1が増加し、毛根を含む皮膚組織の血流が改善。コラーゲンの産生を助け、お肌や髪の老化を遅らせることが期待できます。
 初乳は、噛んで食べるタブレット型の健康補助食品として販売されています。
「私の試験では小児に1日3粒食べてもらいました。それで十分な効果がありましたから、大人でも1日に3~6粒くらいを目安に食べるといいでしょう」(加地先生)
 今年のインフルエンザ対策に、加えてみては。

お話を伺った先生/加地展之先生
法典クリニック院長。1993年浜松医科大学卒業後、聖路加国際病院、東京大学医学部形成外科を経て、2001年に医療法人社団うつぎ会開設。地域に根付いた病院として、予防医療と治療に力を入れている。