【漆喰塗料】しっくいとりょう

「天然の空気清浄機」といわれるほど調湿性に優れ、防火性も高いことから、日本で広く使われてきた“漆喰”。
「昔から漆喰は、日本家屋の土壁の上に塗る仕上げ材として使われていました。お城や土蔵、寺社などの白い壁が漆喰です。有名な高松塚古墳の壁も漆喰だそうですから、相当古くから重宝されてきたものです」(本橋健司先生)
 実は漆喰にはウイルスを抑える働きがあり、インフルエンザや感染症の予防効果を持っています。しかし施工するのに高度な左官技術が必要なため施工費が高いのが現状。それが最近では、漆喰の特長はそのままに、現代の住宅用にアレンジされた、“漆喰塗料”が登場し注目を浴びています。
 そもそも漆喰は、日本特有の風土から生まれた壁材です。
「主原料は消石灰。これに海藻のフノリや、スサという藁を細かくした繊維を混ぜて水で練ったものを、壁に塗ります」(本橋先生)
 この消石灰がインフルエンザの予防に効果を発揮するのです。
「消石灰には、強い抗菌・抗ウイルス作用があります。鳥インフルエンザが発生したとき、鶏舎や周辺の農場に白い粉をまいているのをテレビで見たことがあると思いますが、あれが消石灰なのです」(本橋先生)
 その秘密は消石灰の小さな穴にあります。消石灰は炭酸カルシウムを焼いた後に、水と化学反応させて作ります。このとき粒子の間にすき間が多くできるのですが、ここにウイルスを吸着させ、消石灰が持つ強いアルカリ性で働きを抑えるのです。

インフルエンザウイルスを低減

「ウイルスは強いアルカリ性のものに触れると不活性化します。アルカリ性の漆喰の壁に触れれば、間違いなくウイルスの働きは抑制されるのです。こんな特長の壁材は漆喰だけです」(本橋先生)
 鳥インフルエンザ・ウイルスを含む液体を、漆喰の板に接触させると、ウイルスの量は30分で99.6%も低減することが実験で確かめられています。
 季節性インフルエンザ・ウイルスの実験では、99.9%の低減効果がありました(大阪大学微生物病研究所調べ)。季節性と同型の新型インフルエンザの予防にも効果が期待できます。
 漆喰には、消臭効果もあります。空気中の臭い成分を吸着して、分解。気になるタバコやペットの臭いを消してくれます。また、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの有害菌に対する抗菌性があることも実験で確認されています。
 さらに、漆喰にはもう一つ、大きな長所があるのです。
「シックハウス症候群の原因となる化学物質、ホルムアルデヒドなどを吸収分解して除去する力があります」(本橋先生)
 シックハウス症候群は、壁紙やプラスチック製品が放出する揮発性の化学物質が原因とされていました。また、最近では室内の気密性が高まり、通気や換気が不足することも要因のひとつと言われています。
「漆喰は、通気性がよく、空気の浄化作用にとても高い効果を発揮します。湿気の多い日本の風土に対応して、室内の湿度が高いと湿気を吸収、低いと湿気を放出して調整する作用が備わっているんです。そのため、結露を防止し、防カビ効果にも優れています」(本橋先生)
 漆喰は、シックハウスや、ぜんそくなどのアレルギーにもやさしい自然建材。まさに「呼吸する壁」なのです。

ローラーで塗れる漆喰塗料が新登場

 漆喰のメリットは数多いのですが、前述したようにコテで仕上げる熟練した左官技術が必要なことと、塗っては乾かすという行程を何度も繰り返すので施工に時間がかかりました。そのため施工費が高く、一般の住宅に気軽に取り入れることはできませんでした。それが最近、ローラーや刷毛で簡単に塗れる素材が開発され、ぐっと身近になったのです。
「主原料は漆喰と同じ消石灰。これに、フノリやスサの代わりにわずかな合成樹脂を入れ、水になじませて液体化しました。“漆喰塗料”と呼ばれ、漆喰が持つ健康効果を生かしたまま、より実用性を高めた画期的な塗料です」(本橋先生)
 高度な職人技術は必要なく、壁紙などの上からでも塗ることができます。作業効率を高めながらも、もともと漆喰が持つ、和の風合いはそのまま残っています。
「色分けや重ね塗りで独特の立体感をデザインすることも可能。家の新築やリフォームを考えている人には、これをおすすめしますね」(本橋先生)

お話を伺った先生/本橋健司先生
芝浦工業大学工学部建築工学科教授。独立行政法人建築研究所材料研究グループ長などを経て、09年4月より現職。塗料や塗装についての第一人者。