【子宮頸がん予防ワクチン】しきゅうけいがんよぼうわくちん

「子宮頸がん」は、子宮の入り口にできるがん。国内で毎年約2万人が診断され、約3500人が亡くなっています。つまり、毎日約10人が亡くなる計算に。「発症のピークは35歳ですが、最近では20代の罹患率が高くなっています」(今野 良先生)

 他のがんと違うのは、その原因が解明されている点です。「子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)による感染が原因。ごくありふれたもので、ほとんどが皮膚や粘膜の接触で感染します。女性の約8割が一生に一度は感染するとの報告もあり、全ての女性がかかる可能性があります」(今野先生)

 約9割は免疫力で自然と排出されますが、感染が長く続くと子宮頸がんを発症することが。「この発がんの原因になるウイルスの感染を防ぐのが、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)です。日本の子宮頸がん患者の70%を予防する効果があります」(今野先生)

 2006年、最初にアメリカで承認され、現在は世界120カ国以上が承認。40カ国以上が接種費用を公費で助成しており、現在1億人以上が接種しています。「子宮頸がん予防ワクチンは、HPVに似た『偽ウイルス』をハイテク技術で作ったもの。本当の中身(遺伝子)がないので、接種しても子宮頸がんに感染することはありません」(今野先生)  

積極的接種推奨の一時的差し控えとは

  日本では2009年に承認。効率的な予防のため、今年度から小学校6年生~高校年生相当の女子への無料接種が始まりました。しかし、6月に厚生労働省により、「子宮頸がん予防ワクチンの接種勧奨の一時的な差し控え」という勧告が。

 その理由としてあげられているのが、副反応の問題です。「副反応は、予防接種後に起きる可能性のある症状のことです。このワクチンの場合、免疫反応から起きる発熱や接種部位の痛みや腫れなど。また、ワクチンの成分とは関係ない注射の心配や緊張をきっかけとした失神などがあります」(今野先生)

 今回、厚労省の勧告が出たのは、注射など外傷をきっかけとして慢性の痛みが出る「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」や、慢性疼痛の事例によるもの。

 専門家の会議では副反応の発生状況について、ワクチンの有効性と比較した結果、接種を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでした。ただ、副反応の発生頻度等が明らかになるまで、積極的に勧めるべきではないとしたものです。

 厚生省によると、子宮頸がん予防ワクチンによるCRPSの発症は、約860万接種に1回の割合と報告されています。 「ねんざや骨折、採血がきっかけで発症することも。実際、献血後の症例も報告がある病気です」(今野先生)

 もし予防接種後、そういった副反応が出た場合はどうしたらいいのでしょうか。
 「接種した医師、自治体の担当窓口に相談を。健康被害が生じたときは、法に基づく補償が受けられます」(今野先生)

また、世界保健機構(WHO)からは、世界での使用が増えており「子宮頸がん予防ワクチンの安全性には安心している」という見解が出されたばかりです。

検診の重要性がますますアップ

  子宮頸がんの予防は、個人の問題と考えられがちです。「集団でワクチンを接種することこそが重要です。多くの人がワクチンを接種することで、社会全体のHPV感染率を下げ、子宮頸がんを撲滅することにつ ながります」(今野先生)

 子宮頸がん予防ワクチンは接種が中止されたわけではなく、希望者は受けることができます。「このワクチンは3回接種することで十分な効果があります。すでに1、2回の接種を済ませ、今後の接種をためらっている人、新たに接種すべきか迷っている人は、まずは接種医に相談してみてください。厚労省の積極的な接種推奨が再開された後、接種を再検討するのも手だと思います。標準的な接種間隔は6カ月間に3回ですが、間隔があいても3回行えば十分な効果がありますよ」(今野先生)

 1、2回で接種を中止した場合は、効果が不十分な可能性があるので、検診を必ず受けて。「日本の子宮頸がん検診受診率は約20%と低く、技術や治療法が進歩しても死亡者数が多いのが現状。病気に邪魔されない一生を送るために、ワクチンを接種した方も、検診は必ず受けるようにしてください」(今野先生)

お話を伺った先生
今野 良先生
自治医科大学附属さいたま医療センター 産婦人科教授。子宮頸がん征圧をめざす専門家会議・実行委員長。20年以上HPVの研究を続けてきた専門医。『子宮頸がんはみんなで予防できる』(監修・日本評論社¥1,680)。