【エクオール】えくおーる

 大豆には女性ホルモン「エストロゲン」に似た働きがあることはよく知られています。これは大豆のポリフェノール「大豆イソフラボン」によるものといわれてきましたが、ここ数年でその源が「エクオール」という大豆イソフラボンの代謝物であることがわかってきました。 エクオールが女性ホルモンのような働きをすることが発表されたのが1984 年。2001年には、更年期症状の重い人は尿中に排出されるエクオールが少ないなど、更年期症状とエクオールの関連性が証明されました。「 研究が進んだ結果、今ではエクオールがホットフラッシュや肩こりなど、更年期の様々な症状を緩和することがわかっています」(谷内麻子先生)

 大豆に含まれる大豆イソフラボンは「ダイゼイン」「ゲニステイン」「グリシテイン」の3つの成分に分類されます。そのうちのダイゼインが、お腹の中で乳酸菌ラクトコッカス20-9 2 株などの特定の腸内細菌と出あうことでエクオールが作られます。「 更年期の諸症状は、体内の女性ホルモン“エストロゲン”が減ることで引き起こされます。エクオールは体内でエストロゲンを受け取る受容体にくっつき、エストロゲンと同じ働きをすることで、更年期の症状をやわらげるのです」(谷内先生)

更年期症状や病気リスクが低下

 加齢によりエストロゲンが減ると、自律神経のバランスが崩れる、血流が滞る、骨量が減少するなど、健康を守るための体の機能が様々に悪化します。そのために起こるのが「ホットフラッシュ」「肩や首のこり」「骨粗しょう症」といった症状。「 更年期で肩こりに悩む人はかなり多いのですが、エクオールを食品として摂取したところ、このような女性から『こりが軽くなった』という声がたくさんあがりました」(谷内先生) さらには、肌弾力の衰えを抑えたり、メタボ、動脈硬化、糖尿病といった病気のリスク因子が下がったという試験結果も。「 エクオールは女性ホルモンのような働きで更年期の様々な不調を抑えますが、同時に、過剰なエストロゲンを抑える働きもあると考えられているんですよ。これにより乳がんのリスクを下げる可能性も期待されています」(谷内先生)

 私たちの体に多くの健康作用を及ぼすエクオールですが、実は誰もが同じように作れるわけではありません。体内で作れる人と作れない人がいるのです。「日本人は約半数が体内でエクオールを作ることができますが、欧米人は2~3割。日本人の方が作れる人が多いのは、大豆を食べる食習慣の影響といわれています」(谷内先生) 一方で、日本でも「20 代に限るとエクオールを作れる人は2~3割」「関西より関東の方がエクオールを作れる人が多い」という報告も。これらの差には、食の欧米化や大豆の消費量の差が関係しているといわれます。

エクオールを作れる体質かをチェック

 そこで気になるのが「自分がエクオールを作れる体質かどうか」ですが、今では誰でも簡単な尿検査でチェックできます。「 エクオールを作れる人の方が、作れない人より更年期の症状が出にくい傾向にあります。エクオールを作れる体質の人なら、積極的に大豆製品を摂ることで体内のエクオールの量を増やせば、更年期をより快適に過ごせるはず。エクオールは体内に貯めておくことはできないので、1日あたり納豆1 パック、豆腐半丁を目安に大豆を摂るよう心がけましょう」(谷内先生)

 一方でエクオールを作れない体質の人は、大豆を食べてもエクオールは増やせません。でもがっかりしなくて大丈夫。「最近、エクオールを食品にする開発が進んでいます。エクオールを自ら作れない人も体内に取り入れることができるようになるのはとても画期的なことです」(谷内先生) エクオールを作れる体質かどうかは、子供の頃の腸内環境に左右されると考えられています。診断でエクオールが作れなかったり、量が少ないという結果が出た人も、腸内環境を改善することで作れるようになる場合も。食物繊維が豊富な食事を摂る、暴飲暴食は避けるなど、腸に優しい生活習慣も大切に。

お話を伺った先生
谷内麻子先生
聖マリアンナ医科大学病院産科医長・東横病院女性検診科医長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学産婦人科に勤務。2003年から2年間、カナダ・トロント大学産婦人科に留学。生殖内分泌、周産期、更年期が専門。日本産科婦人科学会専門医・日本更年期学会認定医。