【キヌア】きぬあ

 キヌアという名前を初めて耳にする人も多いかもしれません。でも実は、今世界でもっとも注目を浴びている雑穀のひとつです。国際連合食糧農業機関(FAO)は、2013 年を「国際キヌア年」と制定。昨年から世界的なキヌアブームが起こっているなか、今年に入り日本でもテレビ番組や雑誌で取り上げられる機会が増えました。そのため、店頭では入荷待ちとなるほどの人気に。
 キヌアはボリビアやペルーを原産地とする1 年草。南米アンデス地域で4000~5000年前から広く栽培され、約3000もの品種があります。
「 母乳に匹敵する栄養価があることから“母なる穀物”とも呼ばれます。ボリビアでは妊娠中や産後の女性に無料配布したり、学校給食にも積極的に取り入れているんですよ」と語るのは、キヌア研究会事務局長で東京農業大学講師の日高憲三先生。

NASAが宇宙食として認めた“完璧な食物”

 キヌアはあわなど他の雑穀や精白米、玄米、小麦と比べてカルシウム、カリウムなどのミネラルが多く含まれる他、高タンパク。体に必要なすべての必須アミノ酸がバランスよく含まれているという点で優秀。ビタミンや食物繊維も豊富です。そうした面から、NASA(アメリカ航空宇宙局)は“完璧な穀物”として、キヌアを10 年以上前から宇宙食に採用しています。「 たくさんある品種の中でも、特にボリビアのウユニ塩湖周辺で栽培されるキヌア・レアルという品種が大粒で、ミネラル分も豊富。日本にも輸入されています」(日高先生)
 キヌアには抗酸化作用のあるフェノール類も多く、生活習慣病の予防やアンチエイジング効果が期待できます。また、高タンパクで糖質が少ない点もポイント。食物繊維の効果も加わり、ダイエットが気になる女性にはうってつけの食材です。

 欧米ではそんなキヌアのメリットが大きな注目を集めており、ヘルシーフードとして高い人気を得ています。
「キヌアの消費量が世界第1位なのはアメリカ。生産量でもボリビア、ペルーについで世界第3 位になっています。アメリカでは、どこのドラッグストアでも手軽にキヌアが買えるほどポピュラーです」(日高先生)
 一方、日本におけるキヌアの自給率は0%。
「キヌアは厳しい条件の土地でも栽培が可能なため、世界の飢餓対策になると期待されています。日本でも、チリで栽培されている海岸型の品種であればうまく生育することがわかっています」(日高先生)
 山梨県総合農業技術センターが10 年ほど前から試験栽培を実施しており、今後の進展が注目されています。

プチプチの食感とたんぱくさが特徴

 キヌアは今、世界的ブームから国際価格が上がっています。原産国の生産増強政策の影響で、栽培面積や生産量も急増中。
 日本では自然食や輸入食材を扱うお店やネットで購入できますが、どんなふうに食べるのでしょうか?
「 雑穀なので、日本人好みに調理するには、白米に混ぜて炊いて食べるのがもっとも手軽な方法。キヌアの特徴であるプチプチした食感とたんぱくな味を楽しみたいなら、スープやリゾット、サラダにトッピングするのがおすすめです。あまり茹ですぎるとせっかくの食感がなくなるので、さっと茹でる程度にするといいでしょう」(日高先生)

 ちなみにキヌアは、実はホウレンソウの親戚とか。
「 国内で葉を入手するのはなかなか難しいのですが、葉の部分をおひたしにして食べてもおいしいんです」(日高先生)
 主な生産国のボリビア、ペルーではキヌアのビールやシャンプーなども発売されています。
「 キヌアの皮にはサポニンという石けんに似た成分が含まれていて、現地では、昔から“キヌアを洗った水は捨てないで髪を洗うのに使いなさい”と言われているほどです」(日高先生)
 日本でも食材にとどまらず、様々なキヌア入り商品が店頭に並ぶ日が近いかもしれません。

お話を伺った先生
日高憲三先生
キヌア研究会事務局長。東京農業大学スペイン語講師。名古屋大学大学院・国際開発研究科修了。元JICA青年海外協力隊員。専門はラテンアメリカの食文化および地域研究。日本におけるキヌアの栽培・普及活動にも取り組んでいる。