【HSP】ひーとしょっくぷろてぃん

 病気から体を守り健康を維持するだけでなく、シミやシワを防ぐ美肌効果もある「ヒートショックプロテイン(以下HSP)」。1962年にイタリアのリトサ博士がショウジョウバエの幼虫に熱ショックを与えた結果、急激に増えるたんぱく質を発見したのが始まりです。それ以降、このHSPを病気の治療や美容に応用する研究が、さかんに進められています。

 「HSPはひとことでいうと、ストレスから体を守ってくれるたんぱく質。通常、人間の細胞は体温に近い37℃前後で増えますが、HSPは42~50℃へ急激に温度を上げると数が増えます」と、慶應義塾大学薬学部教授の水島徹先生。
 研究が進んだ現在では、熱ストレス以外のさまざまなストレスでもHSPの数が増えることがわかってきました。これには紫外線や気温の変化などの物理的ストレス、大気汚染やタバコなどの化学的ストレス、人間関係や不安からくる精神的ストレス、そして細菌やウイルス、老化からくる生物学的ストレスなど、あらゆるストレスが含まれます。
 「ストレスからたんぱく質を守ったり、ストレスで傷ついた細胞を修復するのがHSP。HSPが多いほど自己回復力が強くなり、健康体でいられます」(水島先生)

ストレスを受けると体を守る力がアップ

 HSPには、適度なストレスで数を増やし、より大きなストレスに耐える力をつける細胞保護作用(アダプティブサイトプロテクション)があります。たとえば、アルコール度数の低いビールから飲み始めてだんだん強いお酒にすると、お酒への耐性ができて体への負担が少なくなるのと同じで、多少の刺激やストレスがHSPを強くします。
 HSPにはさまざまな病気を引き起こす原因となるストレスに対抗する働きがあります。では免疫力との違いは?
 「HSPは、大腸菌や酵母のような細菌から人間までのあらゆる生物に備わっていて、『細胞の回復力をアップ』するもの。一方免疫力は、体内に入ったウイルスや細菌、異物から『細胞を守る』力で、一定の高等生物以上が持っているものです。どちらもストレスから体を守るものですが、具体的な作用が違うのです」(水島先生)
 この特性を生かしたHSPの胃腸薬は既に一般的になっています。さらにはアルツハイマーやがんにも効果があることが判明するなど、さまざまな健康効果をもつHSPですが、最近ではシミやシワを防ぐ美容効果にも注目が集っています。
 「HSPはメラニンの生成や肌の炎症を抑えてシミを防ぐ他、ハリをもたらすコラーゲンの働きを助ける役目を果たしているんですよ」(水島先生)

42℃のお風呂でHSPを増やす

 HSPは加齢とともに減少するため、肌にはシミやシワなどの老化現象が現れます。そこでHSPを簡単に増やす方法としてあげられるのが「42℃温め」。
 「HSPは“熱”が上昇するときに急増するので、42℃くらいの少し熱めのお風呂に入るのはとても有効。温度が急に上がることが鍵なので、何度か浴槽に出たり入ったりするのを繰り返すのもいいでしょう」(水島先生)
 ただし急激な温度変化は心臓などに負担をかけることがあるので、絶対に無理はしないこと。
 普段の家事に「42℃」と「温度差」をちょっと意識してみるのも方法です。たとえば冷たい水で食器を洗い、42℃のお湯で食器をすすぐ。寒い外から帰宅してすぐに42℃のお湯でお風呂を洗ったり、手湯や足湯をするなどはいかがでしょう。
 最近ではHSPに着目した化粧品や美容器具の他、スポーツクラブやエステサロンでのプログラムも登場しています。
 HSPを意識して毎日を過ごすことで、ストレスに負けない、健康的で美しい体と肌に。

お話を伺った先生
水島徹先生
慶應義塾大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、山之内製薬(現アステラス製薬)研究員などを経て、2011年より現職。LTTバイオファーマの取締役会長も兼務し、医薬品開発に勤しむ。著書に『42℃温めで素肌美人』(幻冬舎¥1,260)など。