【乳がん患者の体験談】抗がん剤の副作用と戦う-綺麗でいたいという思い

病気との付き合い方、私の場合

人ごとではないから知って欲しい乳がんになること

乳がんの治療は、局所治療と全身治療の二つに分けられます。

患部を摘出する手術や、術後に取り残したがん細胞をやっつけるために乳房に当てる放射線治療は、部分的なものなので、局所治療とよばれます。
 かたや、がん細胞が血液やリンパの流れにのって全身を巡っている可能性がある場合は、点滴や注射、飲み薬によるホルモン療法や抗がん剤、新しいところでは分子標的薬があり、これらは全身に作用させるので全身治療とよばれます。

 術後の痛みや、乳房や乳首を失ったり、形が大きく変形したときの喪失感は、人によって性格を変えてしまうほどの影響を与えることもあります。また女性ホルモンの分泌を抑えるホルモン療法では、更年期と同じさまざまな不調がでてきます。しかし、なかでも辛いのは、抗がん剤治療ではないでしょうか。

 抗がん剤は、吐き気や胃腸の不調、しびれ、味覚障害など、個人差はあるものの身体的に辛い副作用を伴いますが、そこへ追い打ちをかけるのが、外見をガラリと変えてしまう脱毛です。
健康な細胞にも強いダメージを与える、標準治療の抗がん剤では、ほぼ完全脱毛してしまいます。それも頭髪だけでなく、眉もまつ毛も鼻毛も抜けてしまい、くすみやむくみ、肌荒れがおこり、まさに「重病人」の風貌になってしまうのです。

ニキビができるだけで、人に見られたくないと思うのが女性の心理ですから、想像するだけで耐えられない、と思うものです。
私も抗がん剤の選択を迷ったときに、そんな姿を人に見られたくない。おっぱいは服を着れば分からないけれど、顔は隠せない。抗がん剤をしたら、仕事も楽しいこともすべてあきらめて、引きこもっているしかない。そう思うと絶望的になりました。

皆さんは、がんというと、病院で寝たきりのイメージがあるかもしれませんが、実際は
 そうとも限りません。

乳がんの場合、手術で3日から長くて2週間日の入院。手術以外の治療はすべて通院が一般的です。いっそ入院しているなら病院に守られているし、患者だらけなので外見もそう気にならない。でも実際の闘病の場は、普段の生活の場なのです。病院の外では自分で自分を守らないといけないからこそ、孤独という恐怖を感じるのです。

ところが、医師や経験者の話を聞き回ってみると、抗がん剤の治療中、ずっと具合が悪いわけではないことが分かりました。確かに、薬を点滴した数日間は吐き気などの副作用がでるので、安静にしていたほうがいいけれど、それ以外は案外、普通の生活ができるというのです。

このことが分かり、やっと恐怖から解放されました。
「元気な日があるのなら、オシャレなウィッグを作ろう。流行の帽子を用意しよう。どうせなら今以上にオシャレになってやろうじゃないの! 病気だからって、ひと目を気にしてこそこそ生活するなんて、まっぴらごめん!具合が悪い日は病人だけれど、元気なときは普通の人に戻ろう!」そう思ったら、ムクムクと力が沸いてきたのです。

そして抗がん剤が始まる前に、希望どおりのオシャレなウィッグやつけ毛、帽子を準備できたときに、大丈夫だと思えました。「脱毛どんと来い!」と思えたのです。

髪はもちろん、病人風の顔も、元気に見えるメイクで克服できました。メイクして、ウィッグや帽子をかぶった私の姿は、我ながらとても抗がん剤中とは思えませんでした。すると不思議なことに、そんな姿を人に見てもらいたくなるので、体調がいいときは、積極的に仕事や遊びに出るようになりました。なんと、趣味のバレーボールも帽子をかぶって参加したほどです。

治療は医師に任せる。でも外見をキレイにすることは自分でできる。

女性にとって外見が心に与える影響の大きさと、外見を整えることの大切さを、この経験から改めて学びました。そしてこれはなにも、がんに限らずの話だと思いました。 辛く、具合が悪いときは、外見など気にする必要はありません。でも、元気なときは、外見を整えてやると、自分のモチベーションが上がるのです。再び社会とつながりたくなるのです。
身体力、気力、知識、経験はすべて、困難を乗り越えていく「力」になります。同じようにキレイも「力」、なのだと私は思っています。

自分の経験から、元気に見える簡単なメイク法を著書や講演会などで、機会があるごとにご紹介させていただいており、私が所属するNPO法人キャンサーリボンズが運営する、新百合ヶ丘駅(神奈川県・新百合ヶ丘)のリボンズハウスでも、定期的に小さな美容セミナーも開いていますので、もし機会があったら、のぞいてみてくださいね。健康な方も大歓迎です。

最後にひとつ、医療用ウィッグについてです。実は医療用のウィッグは、どんなに安くても10万円前後します(私は2種類買って、40万円以上しました)。製造にとても手間がかかるため、高額なのは仕方がないのですが、抗がん剤治療が高額な上に手痛い出費。もちろん買えずにあきらめる人も少なくないのが現状です。
残念ながら日本では医療用ウィッグに保険適用が認められていませんが、ファッション用のウィッグは患者用にできていないので、不具合が多いのです。髪はあればいいってももではない。不自然なヘアスタイルで人に会いたくなくなるものです。
現在NPOで抗がん剤を受ける患者さんに医療用のウィッグを贈る活動をしていますので、皆さんにも、ぜひそんな現状を知って頂けたら嬉しいです。

【執筆】
山崎 多賀子さん


美容ジャーナリスト
化粧品メーカー、女性誌の編集者を経てフリーに。スキンケアからメイク、健康・メンタル美容まで幅広いジャンルで取材を続ける。著書に自らの乳がん体験談や乳がん患者に役立つ情報をまとめた『「キレイに治す乳がん」宣言!』(光文社)、人気連載をまとめた『山崎多賀子の極楽ビューティ体験記』(扶桑社)がある。NPO法人キャンサーリボンズ理事。NPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーター。

【書籍】
『「キレイに治す乳がん」宣言!』
(光文社)

コラムに関連する病名が検索できます。

その他のヘルシーウーマンコラム

アクセスランキング一覧

100件中 1件~20件を表示

  1. 1 妊娠中のセックス、みんなどうしてる? セックスしていい時期、悪い時期って?
    妊娠中のセックス、みんなどうしてる? セックスしていい時期、悪い時期って?
    約10ヶ月にも及ぶ妊娠期間中。この間、セックスはしてもいいの? …
  2. 2 みぞおちの辺りが痛い 激しい痛みor鈍痛? 痛むのは真ん中・右・左?
    みぞおちの辺りが痛い 激しい痛みor鈍痛? 痛むのは真ん中・右・左?
    お腹の上の部分、みぞおちあたりの痛み。胃痛? それとも、ほかの病気? …
  3. 3
    女性にも急増! 自覚症状なく進む「膵臓」の病気 7つの危険な症状
    地味ながら、消化液を作りインスリンを分泌する重要な消化器 …
  4. 4 妊娠中でもSEXを楽しんで! 妊娠中のセックスをエンジョイするあの手、この手
    妊娠中でもSEXを楽しんで! 妊娠中のセックスをエンジョイするあの手、この手
    妊娠していても、体調がよければセックスは可能。産後のセックスレスを予防…
  5. 5 スマホ依存症にはどんな悪影響が?ドーパミンが依存に導く怖い現実
    スマホ依存症にはどんな悪影響が? ドーパミンが依存に導く怖い現実
    最近では、持っていない人を探す方が難しいスマートフォン普及率。便利なツ…
  6. 6
    妊娠中のエクスタシーはOK? セックスで気をつけたい5ポイント
    体調がよければ、妊娠中にセックスをしても大丈夫。でもいつもと違う状況な…
  7. 7 女の子の産み分けにチャレンジ! 女の子産み分けの鉄則4
    女の子の産み分けにチャレンジ! 女の子産み分けの鉄則4
    「かわいい洋服を着せたいから」「一人目が男の子だから」など、女の子を授…
  8. 8
    更年期障害チェック方法「あなたの更年期レベルをチェック」
    さまざまな症状が出る更年期。その症状は100人100様ともいわ…
  9. 9 女性の胸の大きさはどうやって決まるの? 遺伝or体質?
    女性の胸の大きさはどうやって決まるの? 遺伝or体質?
    女性らしさの象徴といえば、バスト。胸の大きさに悩む人は、遺伝や体質と諦…
  10. 10 老けたくない人はDHEAホルモンを増やすと良い!? 若さを保つ秘訣
    老けたくない人はDHEAホルモンを増やすと良い!? 若さを保つ秘訣とは
    今注目の若返りホルモン「DHEA」を食生活でキープしよう 体…
  11. 11
    足の小指が痛い人は要注意 「内反小趾」を治してサンダル美人に
    素足にサンダルを履くことの多い季節、足のトラブルには気をつけた…
  12. 12
    【医師が教える】猛暑も元気に乗り越えられる、夏バテの防ぎ方
    胃腸の冷えと栄養失調を防げば猛暑の夏も健康で過ごせる!! 夏バテの原因…
  13. 13 子宮筋腫の症状は?
    注意して!子宮筋腫の症状チェック。筋腫が大きくなると 肺や心臓まで圧迫する場合も
    子宮筋腫の自覚症状には個人差があり、かなり大きくなるまで無症状というこ…
  14. 14
    ヘルプマーク、ハートプラスマークなど、見えない障害を持つ人のためのマーク
    外見からはわからない障害を抱えている人がつけるマークを知っていますか?…
  15. 15 「昼顔」紗和「あなそれ」美都から見える、不倫に陥りやすい女性の特徴
    「昼顔」紗和「あなそれ」美都から見える、不倫に陥りやすい女性の特徴
    波瑠さん演じる「ヒロインの美都がクズすぎる!」と、批判の声が上がり大き…
  16. 16 産後もいいセックスライフを送りたい! 産後のセックスはどう変わる?
    産後もいいセックスライフを送りたい! 産後のセックスはどう変わる?
    以前の体に戻り始める産後。「前よりゆるくなる?」などの不安を解消して、…
  17. 17 男の子の産み分けにチャレンジ! 男の子産み分けの鉄則4
    男の子の産み分けにチャレンジ! 男の子産み分けの鉄則4
    せっかく妊娠するなら、できれば希望の性別の子を授かりたいと思うのは自然…
  18. 18
    大黒摩季が克服した『子宮腺筋症』ってどんな病気?【芸能人の健康まとめ】
    子宮疾患の治療のため活動休止中だったシンガー・ソングライターの大黒摩季…
  19. 19 仕事中でもできる簡単ストレッチ-足の冷えとむくみを解消!
    仕事中でもできる簡単ストレッチ-足の冷えとむくみを解消!
    脚全体の筋肉を使って循環を促し、冷えやむくみを改善 足、ひざ…
  20. 20 妊娠検査薬が陰性でも妊娠の可能性がある5つの理由|生理が遅れた原因
    妊娠検査薬が陰性でも妊娠の可能性がある5つの理由|生理が遅れた原因
    市販の妊娠検査薬はとても正確。なかには、精度が99%と言われるものまで…

一覧