不妊症に悩む夫婦は増えている-不妊症の4つの主な治療法

夫婦でコミュニケーションをとりながら治療にのぞんでほしい

不妊の原因はさまざまだが、女性では年齢の影響が大きい。長引く治療では息抜きも必要。

「不妊症」は定義・診断基準が明確でなく、原因は多岐にわたる

 不妊症においては他の疾患と異なる特徴がいくつかあります。まず、その定義が明白でないこと。一般的に2年以上妊娠しない場合に不妊症と診断される場合が多いと思われますが、これは健常な男女が定期的に夫婦生活を営んだ場合、1年以内に約80%、2年以内に約90%で妊娠が成立するものの、3年目以降には新しく妊娠するご夫婦が増えてこなくなる、すなわち累積妊娠数が3年目以降は頭打ちになるという統計に基づいて従来からいわれてきたことなのです。したがって約10組に1組のご夫婦が不妊症のカップルということになります。

 しかしながら最近ではこの数字は確実に増加しており、現在では7~8組に1組が不妊症のカップルともいわれています。これには女性の社会進出に伴う晩婚化が影響しており、近年問題となっている少子化も、女性の晩婚化が一因となっていると分析されています。不妊症のカップルが増えているのは、女性の結婚年齢および出産年齢が高くなっていることが最大の原因と考えられます。

 次に診断基準が明確でないこと。ほかの疾患では、例えば血糖値がある一定値を超えれば糖尿病と診断されますし、胃カメラで胃の中に潰瘍(かいよう)形成が見つかれば胃潰瘍と診断されます。ところが不妊症は病名こそついていますが、ある独立した一つの病気ではなく、一定期間妊娠しない状態、すなわち2年間以上の不妊状態についてこの病名を当てはめています。

 ですからその原因は多岐にわたっており、一つの大きな原因が見つかることもあれば、いろいろな相対的な要因が組み合わさっていることもあります。また、機能性不妊あるいは原因不明不妊といわれる、検査所見上は特定できる原因は見つからないものの、なかなか結果が出ないケースもあります。これも正確には原因がないわけでは決してなく、それまでに行われた検査では、原因を見つけることができないというだけのことなのです。
 よく外来で「私の不妊原因は何ですか?」というようなご質問をお受けしますが、厳密な意味で正確にお答えすることは非常に難しいということになります。

女性は35歳以上になると妊娠率が低下、流産率は増加する

 また、妊娠には女性の年齢が大きく関与してくること。すなわち女性の年齢によって、検査や治療の内容やスピードが大きく左右されます。男性があまり年齢の影響を受けないことと比較すると、女性の場合、とくに35歳以上になると卵子の老化に伴う質の低下によって妊娠率は明らかに低下してきますし、運よく妊娠された場合でも流産率は増加してきます。40歳以降の女性のtaking baby home rate(無事に出産して赤ちゃんと共に自宅に戻る確率)は、なんと約2%といわれています。
 我々不妊治療を行う側においても患者年齢を考慮し治療計画を立てていかねばならないため、女性の年齢は一番重要なファクターといっても過言ではありません。

 もちろん理想は自然妊娠ですから、より負担の少ない方法で妊娠していただきたいのですが、一方で患者さんにとっては妊娠することが最終目標ではなく、家庭に新しい家族が増えて、子育てをして新しい生活を営んでいただくことまでを治療のゴールと考えると、効率よく妊娠していただくための治療手段を考えるという点も大変重要な要素になってきます。

不妊治療は二人でじっくり話し合って進めてほしい

 そしてもう一つ重要なことは、治療にはご主人の理解と協力が不可欠なことです。よくご主人があまり協力的でなく女性側だけで検査や治療を進めていくケースがありますが、タイミング指導ぐらいまではいいものの、誘発剤を使用したり、人工授精に移行したりと治療のステップアップを考えていく上では、どうしてもご主人の協力がないとうまく治療が進みません。

 そして何よりも精神的な支えとして、ご主人のバックアップは必要と考えます。とくにお子さんがすでにいらっしゃる場合の治療に関しては、ご夫婦の間で治療に対する温度差を感じることもたびたびあります。
 スムースな治療計画を立てていくためには、長い目で見た場合、まずは検査や治療の進め方について、いつまでするのか、どこまでするのか、といった大きな事柄に関しては、お二人でじっくり話し合ってコミュニケーションをとりながら行ってほしいものです。

治療には根気が必要だが、ときには肩の力を抜くことも大事

 さて、不妊治療についてですが、大きく分けると次の4種類になります。(1)タイミング指導、(2)誘発剤(経口薬・注射薬)を併用したタイミング指導、(3)人工授精の併用、(4)体外受精や顕微授精などの補助生殖医療(ART)です。通常、(1)から順番に階段を上るように徐々にステップアップしていきます。

 妊娠の成立には、排卵から卵管による卵子の捕捉および受精を経て、受精卵の分割や子宮への移送、最終的な着床という一連のプロセスを経てゴールまでたどり着くのですが、それまでにたくさんのハードルがあります。患者さんは毎周期どこかのハードルでつまずいているのです。そのハードルをいくつか取っ払ってゴールにたどり着きやすくするのが不妊治療ということになります。

 治療が進むにつれて取っ払うハードルの数が増えるので妊娠率は高くなりますが、その分患者さん側の負担も増大してきます。その際、治療回数やステップアップまでのインターバルを決める上で、前述した年齢や不妊原因、不妊期間、過去の治療歴といった要素が重要になってきます。

 また治療の奏功率すなわち妊娠率ですが、タイミング指導で1周期あたり5~10%、一番確率の高い補助生殖医療でも胚移植1回あたりの成功率は30%前後なので、まだまだ十分満足のいく成績ではありません。ですから不妊治療には根気や息抜きといったことも必要で、治療が長引いて精神的に煮詰まってしまわないように、ときには休憩を挟んだりして肩の力を抜くことも大事なことと考えます。

 そして医療機関を選ぶ際には、治療に関してご夫婦の希望が第一になりますので、それを尊重しつつ正確な情報を提供し、治療計画を立ててくれる医療機関をお探しください。
 あくまでも一般的にですが、妊娠率が比較的高い30歳代前半までは一つの治療を決めた場合には5~6周期は同じ治療を繰り返して次の段階へステップアップを、30代後半からは3周期程度でステップアップということがすすめられています。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
久永 浩靖先生


久永婦人科クリニック院長
1987年奈良県立医科大学卒業。同大附属病院産婦人科助手、東大阪市立中央病院産婦人科医長、奈良県立奈良病院産婦人科医長、和歌山県立医科大学附属病院紀北分院産婦人科助手、ASKAレディースクリニック院長を経て、2003年3月より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、母体保護法指定医。

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