卵巣のう腫ってどんな病気? 良性の場合がほとんど|治療は必要?

卵巣腫瘍の中で、液体成分がたまっているものが卵巣のう腫

卵巣は病的な状態になっても自覚症状が出にくい臓器。軽い下腹部の違和感でも積極的に婦人科を受診して

ほとんどは良性だが、ごく一部に悪性のものも

 卵巣のう腫という病名は、女性ならどこかで聞いたことがあるかもしれません。身近にも卵巣腫瘍の検査や治療を受けた方がいらっしゃるかもしれませんが、実際にはどういう病気なのか、イメージがつかみにくいと思います。
 卵巣のう腫はいったいどういう病気なのか、どう検査するのか、どんな症状が出るのかについてお話します。

 卵巣は骨盤の深いところにあって、子宮の両脇に左右一つずつある、うずらの卵くらいのサイズの臓器です。靭帯というひも状の組織で子宮とつながっていて、靭帯の中には血管が通っています。卵巣の中には数十万個の卵子が入っており、女性ホルモンなどのホルモンを作り出しています。
 この卵巣が病的に腫れたものを「卵巣腫瘍」といいます。腫瘍というのは、「腫れ物」全体を指し示す言葉で、良性の場合も悪性(がん)の場合もあります。その中で、袋状に腫れて、中に液体状のものがたまっているものを「のう腫」と呼び、これが卵巣にできたものが「卵巣のう腫」です。卵巣のう腫のほとんどは良性ですが、ごく一部に悪性のものがあります。

閉経後の女性に見られる卵巣の腫れは、すぐに詳しい検査を

 卵巣には、実際の腫瘍でなくても、腫れ物のように見えるものができることがあります。のう腫のように見えるのですが、時間をおいて確認すると、小さくなったり消えたりして、治療をしなくてもいいものがあります。これは、卵巣が活動している年齢の女性に時々見られます。
 卵巣の中では毎月1個ずつ卵子が成熟して「排卵」が起き、閉経まで続きます。排卵とは、卵子の周囲に卵胞液という液がたまってそれがだんだん大きくなり、その卵胞がはじけるようにつぶれて、おなかの中に向けて卵胞液と卵子が出ることをいいます。
 排卵したあとの卵巣の部分には、黄体(おうたい)という活発にホルモンを出す場所ができます。この部分に少し血液がたまって、まるで腫れ物のように見えることがあります。また、排卵しきれなかった卵胞が卵巣の中に残ったものも、同じように腫れ物のように見えることもあります。これらは、数週間や数カ月の間にしぼんで小さくなったり、消えたりしますので、経過を見ることで判断することができます。

 しかし閉経すると卵巣が働かなくなって排卵も起きなくなるため、こういった変化は起きません。そのため、閉経後の方に卵巣の腫れが見られたときは、経過を見ずに、すぐに詳しい検査を行う必要があります。

まず触診と超音波検査、さらに詳しく調べるにはMRIやCT検査を

 卵巣について詳しく調べるには、触診だけでは不十分です。もともと小さい臓器ですので、腫れがあるかどうかがわかりにくい場合が少なくありません。簡便に行える検査の中で、効果的なものは超音波(エコー)検査です。
 先にお話しました、消えてしまうタイプの腫れ物は、直径5cm以上になることは少なく、腫れ物の中身の様子を超音波検査などで詳しく調べることで、ある程度は消えるタイプの腫れ物かどうか判断できます。

 超音波検査の結果によってさらに詳しく調べる必要があると医師が判断すれば、MRI(核磁気共鳴画像)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査を行い、少し経過をみてよいものかどうか、すぐに何かしらの治療が必要なのかどうか、治療するならどのような方法が向いているのかといったことを検討します。

 卵巣は子宮や胃などと違って、その部分の細胞を取ってがんかどうかを調べることは簡単ではありません。卵巣の腫れ物が良性か悪性かを調べるには手術が必要です。そのために大きさや腫れ物の状態によって、手術を行うかどうかを慎重に判断します。

卵巣は沈黙の臓器。まれに、急な腹痛が起きるケースも

 卵巣のう腫にはどんな症状があるのでしょうか? うずらの卵くらいのサイズの卵巣が、治療を考え始める5~6cmのサイズになっても、実際にはほとんど自覚症状は出ません。卵巣がんを発症していてかなり進行した状態でも、「なんとなくおなかが張るような気がする」「最近おなかが出てきたかなぁ……」「尿が少し近くなったような気がする」といった、漠然とした症状しか出ないこともあります。そういったことから卵巣は「沈黙の臓器」と呼ばれることもあります。

 一方、子宮とつながっている靭帯の部分が強くねじれると、下腹部に急に強い痛みが出ます。これは卵巣のう腫の茎捻転(けいねんてん)と呼ばれます。救急車で病院に行こうと思うほどの強い痛みが突然起きます。何かの拍子にねじれが戻ると、痛みは急になくなりますが、痛みが続く場合には緊急手術を行います。
 幸い、こういった茎捻転が起こる確率は卵巣のう腫のある方の5%くらいと言われていますが、手術まで必要になる方の中には、以前にも強い痛みが起きたけれど自然に治ったことがあり、治療しなかったという方がいます。その段階で病院に相談していただいていれば、十分な準備のできないままの緊急手術でなく、きちんと準備を整えて治療や手術ができたのにと感じるケースがあります。思い当たる方は、ぜひ早めに婦人科医に相談してください。
 妊娠するとねじれる確率が上がることが知られています。妊娠を計画し始めたら、まずは子宮や卵巣の健康状態を確認するための検診を婦人科で受けるようにしましょう。

 卵巣は病的な状態になってもなかなか症状が自覚しにくい臓器です。軽い下腹部の違和感でも積極的に婦人科の診察を受けたり、機会を見て積極的に超音波(エコー)検査を受けることをお勧めします。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
福本 由美子先生


済生会奈良病院・松原徳洲会病院婦人科医
1986年奈良県立医科大学卒業。同大附属病院、東大阪市立総合病院、湘南鎌倉総合病院、松原徳洲会病院の産婦人科勤務を経て、大阪中央病院泌尿器科・ウロギネセンターで産婦人科医としての経験を生かし、女性泌尿器科診療に携わった。現在は済生会奈良病院・松原徳洲会病院で婦人科医として診療を行う。医学博士。日本産科婦人科学会認定専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本性科学会認定セックス・セラピストなど。共著に『女性泌尿器科外来へ行こう』(法研)、『30歳からのわがまま出産』(二見書房)など。

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