女性は男性よりうつ病になりやすい-うつ病自己評価尺度でチェック

ホルモンバランスの急激な変化やライフイベントが影響

命にかかわることがある「うつ病」は、女性に多く発症。少しでも早く気づき、適切な治療に結びつけましょう

ホルモンバランスの急激な変化、ライフイベントに伴うストレスが原因に

 うつ病は男性よりも女性に多い病気です。女性が男性よりうつ病になりやすい原因の一つは、月経周期や妊娠・出産、閉経(更年期)による、ホルモンバランスの急激な変化による心身のストレスと考えられています。
 もう一つは、就職、結婚、妊娠・出産、子育て、介護といった、女性の生活環境に影響を及ぼす出来事(ライフイベント)によって、さまざまな選択を迫られることによるストレスです。これらのライフイベントは男性にも共通するものですが、(変わってきてはいるもののまだまだ)男性中心の社会では、女性への負担がより大きいことを、特に男性は理解しておく必要があります。

 ここでは、女性の主なライフイベントに伴ううつ病の起こり方や対処法を紹介していきますが、「ホルモンバランスの急激な変化」と「ライフイベント」が重なる妊娠・出産の時期や更年期は、いちだんと「女性のうつ病」のリスクが高まることを知っておいてください。

全出産の12~16%に「産後うつ病」、影響が大きいパートナーの言動

 出産後は女性ホルモンの分泌が大きく変化し、心の状態が不安定になります。これに子育て不安や、仕事をもっている女性では仕事との両立への不安などが加わると、一気にうつ病のリスクが高まります。
 出産後に心の状態が不安定になるのは、誰にでも起こり得る生理反応であり(マタニティ・ブルー)、通常は2週間ほどで回復しますが、そのままうつ病に進んでしまうケースもあります。特に産後3カ月前後に発症しやすく、「産後うつ病」と呼ばれています。
 産後うつ病は全出産の12~16%にみられ、なかでも一度産後うつ病にかかったことがある女性が出産した場合には50~62%という高い頻度で発症しています。

 出産~子育てに対して、パートナーをはじめ周囲の協力が得られないことや、協力が得られないと思い込む孤立感が女性を追い詰めることになります。子ども(子育て)を介して「つきあい」が変わってしまうこともストレスになりがちです。なかには、不安感から子どもの虐待、自殺や無理心中に進んでしまうケースもみられます。

 出産後に気分が落ち込み、子育てに対する過度な不安を訴える女性が周囲にいたら、「一人ではない」ことを伝えつつ、話を十分に聴く時間をつくりましょう。産後うつ病の発症にも予防にも、パートナーの言動が大きな影響を与えることは言うまでもありません。
 また、産後に「気分が落ち込む」「赤ちゃんに無関心」「赤ちゃんを心配し過ぎ」「疲れやすい」「眠れない(特に早朝覚醒)」「原因不明の頭痛や腹痛」など、産後うつ病が疑われる症状が続いたら、親しい友人や医療機関、カウンセリング施設、あるいは公的機関などで話を聴いてもらうことが大切です。

退職や子どもの独立、死別など喪失感が引き金になりやすい「更年期うつ病」

 産後うつ病を乗り越え、子育てがひと段落すると、今度は「更年期うつ病」があります。おおよそ50歳を中心に、45歳から55歳までの約10年間は、女性ホルモンの急減を背景にして、女性の心身にさまざまな変化が起こります。ほてり、動悸、頭痛、めまい、肩こり、不眠……さまざまな身体症状に加え、抑うつ感や不安感、イライラといった心の症状もよくあらわれてきます。
 これらに、親の介護や老後への不安感などが重なると、単なる更年期の抑うつ感にとどまらず、更年期うつ病に進みやすくなるのです。この時期は、自らの退職、子どもの就職・結婚、親しい人との死別など、「喪失感」を伴うライフイベントがうつ病に結びつきやすい傾向があります。
 この「喪失感」では、子どもが独立して離れてしまうことで起こる気分の落ち込みを「空の巣症候群」と呼んで一時期注目されました。しかし、景気動向などを反映し、最近ではむしろ独立してくれればラッキー、逆に、なかなか一人立ちできない子ども、離婚や失業で戻ってきてしまった子どもの存在がストレスになって、更年期うつ病の引き金になるケースも指摘されています。

 更年期には心身にさまざまな症状が起こる、ということを理解しておくだけでも、更年期の抑うつ感が抑えられると考えられています。自覚できるさまざまな症状を抑える治療を受けることでも、抑うつ感は改善できます。婦人科系の治療を受けても症状が改善しない場合や、抑うつ感が強く日常生活に支障が出るようなら、医療機関で抑うつ感(うつ病)の治療を受けることがすすめられます。

仕事も子育ても……すべて完璧を目指して陥りやすい「スーパーウーマンシンドローム」

 現代の女性たちには、社会に出て働き始めたときから、大敵が待ち構えています。仕事で男性を含め誰にも負けてたまるか、と常に肩ひじ張った働き方をしているうちに完璧主義に陥り、完璧にできなかったときに自分を必要以上に責め、これがストレスになって気分が落ち込み、うつ病へ、というパターンです。
 これは「スーパーウーマンシンドローム」と呼ばれ、結婚・出産を経験すると、「結婚や子育てで仕事ができなくなると思われたくない」と、さらに完璧主義がエスカレートするケースもみられます。

 こうした女性たちは、自分から他人に助けを求めることはしないため、周囲の人が話を聴く機会をつくることが大切です。そして、「完璧でなくてもいい」「仕事を分担して楽になって」「完璧でなくても、できた分だけ自分をほめて」などと伝えましょう。

 ほかにも、結婚による生活スタイルの変化に対応できずに、楽しいはずの結婚生活がうつ病の引き金になるケースも珍しくありません。下記のようなうつ病のセルフチェックを利用して、気分の落ち込みに早めに気づき、家族や友人、専門家(精神科や心療内科の医師、カウンセラー)など、周囲の人に悩みを聴いてもらうきっかけにしましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
平島 奈津子先生


昭和大学医学部精神医学教室 准教授
東京医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室にて研修を受け、1997年に昭和大学医学部精神医学教室講師に着任。2005年から同教室准教授 (現在に至る)。医学博士、精神保健指定医。関連学会は日本精神分析学会運営委員、日本女性心身医学会理事、日本うつ病学会評議員などである。主な著書には、『女性のうつ病がわかる本』(編著、法研)、『女性のうつ病ガイドブック』(編著、金剛出版)などがある。

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