予防接種ちゃんと受けてる? 定期接種と任意接種の違いとは

働き盛りの女性に必要な健康予防としての予防接種

予防接種の役割をもう一度考え、行政に働きかけていくことも必要

母子手帳を見直し、未接種の予防接種があれば接種を

 あなたは、自分がどんな予防接種を受けてきたか覚えていますか? ご自分の母子手帳がどこにあるかご存知ですか?

 大学生にはしかが流行っている、結核が若年者で増えている、長引く咳が百日咳だった、妊娠している女性社員の隣で仕事をしていた人が風しんだった……など、幼小児期に予防接種をきちんと行っていれば起こらなかったであろう問題が散見されるようになりました。
 自分の母子手帳をぜひ見直し、未接種の予防接種がないか確認してください。そして、もしも未接種のものがある場合は医師に相談し、接種を行ってください。

 日本の予防接種法は「伝染のおそれがある疾病の発生およびまん延を予防するために、予防接種を行い、公衆衛生の向上および増進に寄与するとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ること」を目的として、昭和23年に制定されました。その後何度か改定が行われ、現在のものは平成5年の決定を踏まえたものになっています。

 日本の予防接種には定期接種と任意接種があり、定期接種は、国が責任をもってすすめるもので、定められた接種期間中であれば公費で受けることができます。任意接種は、希望する人が自費で受けます。定期接種は、8つの疾患に対して次のようなワクチンの接種が行われています。しかし、これらは「受けなくてはならない」義務ではなく、「受けるように努めなければならない」という努力義務になっています。

 ●BCG(結核) 9本針の器械を使ってスタンプのように上腕に押す。生後6カ月までが推奨される
 ●ポリオ 生ワクチンで、飲むワクチン。生後3カ月から90カ月未満に2回
 ●DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風) 1期は生後3カ月から90カ月までに4回、2期はDT(ジフテリア、破傷風)で11歳以上13歳未満に1回
 ●MR(麻しん<はしか>、風しん) 1期は生後12~24カ月未満、2期は5歳以上7歳未満、3期は13歳となる年度、4期は18歳となる年度
 ●日本脳炎 1期は生後6カ月から90カ月までに3回、2期は9歳以上13歳未満

 MRワクチンに関しては、平成17年の「予防接種に関する検討会」で1回法では十分な免疫力がつかないということで、平成18年4月より2期接種が行われることになり、さらに平成19年の10~20代の麻しんの大流行を踏まえて、平成20年4月から5年間に限り、第3期(中学1年生)、第4期(高校3年生)を追加することになりました。

 妊娠中に麻しんにかかると流産や早産になりやすく、風しんは、妊娠前半期に初感染すると、風しんウイルス感染が胎児に及び、先天異常を含むさまざまな症状を起こす先天性風疹症候群が高率に出現します。妊娠可能年齢およびそれ以前の女性が風しんや麻しんのワクチン接種をしていることは、リプロダクティブヘルス(性生活や妊娠・出産にかかわる健康)の観点からとても大事なことです。

外国の予防接種事情はどうなっているの?

 では、外国での予防接種はどのようになっているでしょうか。米国の学校や保育園に入ろうとすると、詳細な予防接種歴を提出することが義務づけられており、医師による終了の証明書がないと入学・入園が許可されません。

 米国で入学・入園までに受けておく必要がある定期予防接種は、日本で行われているもの(BCGを除く)に加えて、インフルエンザb型菌(Hib)、肺炎球菌、おたふく風邪、水痘(水疱瘡)、A型肝炎、B型肝炎、髄膜炎菌、インフルエンザなど多数に上ります。さらに最近では、成人期に抗体価が低くなることに対応し、成人期に百日咳や破傷風ワクチンを追加する方向になってきています。

 米国では、どのような予防接種を行うべきか、「ワクチン接種に関する諮問委員会」(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices)という組織が決定しています。この組織は、15人の専門家委員、8人の政府関係者、25人の関連機関・企業の代表者からなり、定例総会が開かれています。定期予防接種費用は保険加入者は保険で賄われますが、保険に加入していない人に対しては連邦政府が援助し、接種率を高めるように努めています。

 また、何度も医療機関を受診するのは大変なので、混合ワクチンを開発し、同時に複数の接種を行うことで接種率を高める努力を行っています。つまり、接種率が低ければ、国民を感染症から守ることができないという危機管理的な考え方から、費用や接種機会の面で工夫をしているわけです。

 日本では、「予防接種に関する検討会」はあるものの、米国のような定例会議は行われておらず、メンバーも少数です。接種が努力義務になっていることに加え、財政援助は自治体に任されており、混合ワクチンへの歩みも遅いのが現状です。

働く女性にとって予防接種が大切なわけ

 働く女性は自分自身の予防接種も大事ですが、子どもの予防接種も大事です。何故かというと、働く女性(男性)にとって、子どもの病気、とくに感染性の病気は仕事にとっての大きなリスクになるからです。感染性の病気がある場合は、自宅待機を余儀なくされます。子どもが病気の場合、自分の親に頼むのも心配です。病児保育の施設があったとしても、一般的に感染性の疾患の場合は預けることはできません。髄膜炎など一刻を争う疾患が予防できることも、働く女性たちへの大きな支援になります。

 また、子宮頸がんの原因といわれるヒトパピローマウイルスに対するワクチンも世界各国で接種が始まっています。性行為開始前が望ましいため、universal vaccination(全体に対する接種)は11~12歳の少女が推奨されており、catch-up接種(接種しそびれた人が対象)は13~26歳とされています。
 オーストラリア、スウェーデン、イギリスでは学校で接種し、オーストラリアでは11~26歳の全女性に無料接種しています。イタリア、フランス、ドイツ、カナダなどでもuniversal vaccinationおよび一定期間のcatch-up接種の公費負担が始まっています。わが国で任意接種にした場合、HPVワクチンは360ドル程度といわれており、接種年齢、接種の場所、財政的問題などがあり、導入が困難であることが予想されています。

 「健康予防」の中で、予防接種が果たす役目についてもう一度よく考え、真に必要なものは定期接種、無料接種になるように行政や健康保険組合に働きかけていく必要があるのではないでしょうか。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
荒木 葉子先生


東京医科歯科大学女性研究者支援室特任教授
荒木労働衛生コンサルタント事務所所長
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。

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