女性の生き方の変化-未婚率の増加、妊娠の高齢化、低体重児の増加など

この20年で女性の生き方・働き方はどのように変わったのか

男女の役割意識、働くこと、産むこと、生活習慣などはどのように変わってきたか、健康で幸福になったのか?

1985年は女性の生き方・働き方を変える大きな分岐点だった

 平成に入って早20年余。この間、女性の生き方や働き方がどのように変化してきたか、一緒に振り返り、これからの自分の生き方や働き方を考えてみましょう。

 平成を迎える数年前の1985年、わが国は、女子に対するあらゆる差別を撤廃することを目的とした「女子差別撤廃条約」を批准しました。翌1986年には「労働基準法」が改正され、女子の時間外労働、休日労働、深夜業の規制が撤廃されました。今でこそ、女性が夜9時すぎまで残業するのは珍しいことではありませんが、それ以前には、例外規定となっている職業以外は、女性が深夜や休日に働くことは認められていなかったのです。
 1986年はまた、「男女雇用機会均等法」が制定され、企業の募集、採用から定年、退職、解雇に至る雇用管理における男女の均等な機会及び待遇の確保が定められ、さらに「労働者派遣事業法」が制定されました。1985年は女性の生き方を変える、大きな分岐点になる年だったわけです。

 それから10年後の1995年に「第4回世界女性会議」が北京で開催され、このとき出された「北京宣言」のなかで、女性の健康や女性への暴力などに対して行動しよう、ということが決められました。この「北京宣言」を受けて、同年わが国でも「男女共同参画ビジョン」が出され、1999年には「男女共同参画基本法」が交付・施行されました。

 こうして、男女の人権の尊重、家庭と仕事の調和などへ向けて法的な礎が整い、徐々に男女役割意識の変化、働くことの変化、産むことの変化、生活習慣の変化、個人と社会のかかわりの変化が起こってきました。

女性はどのように変わってきたのか

 この20年の女性の変化を思いつくままにあげてみましょう。

●男性は仕事、女性は家庭……とは考えなくなった。一方では、専業主婦願望も強くなった
●男性は「草食系」、女性は「肉食系」と呼ばれるタイプが増えた
●就学率が上がった
●結婚しなくなった、離婚が増えた
●子どもを産まなくなった(性行為が減った? 妊娠しなくなった? 産まなくなった? 産めなくなった?)
●働く人は増えたが、出産後の離職は以前と変わらない
●派遣などの非正規雇用が増えた
●さらに長生きになった
●初潮年齢が早まった
●「やせ」体型が増えた
●喫煙や飲酒の習慣のある人が増えた
●偏った食生活を送る人が増えた(昼食はケーキ、春雨スープなど)
●運動不足になった
●睡眠時間が短くなった
●若年期から更年期症状をもつ人が増えた
●若い人の乳がんや子宮頸がんが増えた
●メンタルの病気の人が増えた……

 などでしょうか。男女雇用機会均等が本当に達成されたのか、そして男女ともに健康で、幸福になったのか……、なかなか微妙な気がしますね。

出生率が低下、妊娠の高齢化が目立ち、低体重児が増えている

 1985年には平均寿命は男性74.78歳、女性80.48歳であったのが、2007年には男性79.19歳、女性85.99歳になりました。生涯未婚率は男性3.9%(1985年)から12.4%(2000年)、女性4.3%から5.8%に。男性30~34歳の未婚率は28.1%から42.9%、女性25~29歳の未婚率は30.6%から54.0%になり、「婚活」が必要な時代になりました。

 合計特殊出生率(一人の女性が一生に産むであろう子どもの数)は、1980年1.75から2006年1.32まで低下し、日本の人口は減少の一途をたどることがはっきりしてきました。1980年には第一子出産年齢はほとんどが30歳未満でしたが、2006年になると30~34歳が30%、35~39歳が10%、40歳以上も数%見られるようになり、妊娠の高齢化が目立ってきました。
 また、不妊治療者も増加傾向にあり、1999年の調査(「生殖補助医療技術に対する国民の意識に関する研究」)では、約28.5万人だったのが2003年には約46.7万人と約1.6倍になっていることが報告されています。

 女性の「やせ」体型もじわじわと増えており、1985年には20歳以上の低体重者は8%程度でしたが、2007年には11%になり、それに呼応するかのように、赤ちゃんの出生時体重もどんどん少なくなってきています。1980年には男の子の平均体重は3.23kg、女の子は3.14kgだったのが、2006年にはそれぞれ3.05kg、2.96kgとなり、低体重児の割合は、1980年それぞれ4.8%、5.6%から2006年8.5%、10.7%になりました。

 低体重児とは生まれたときに2500g以下の赤ちゃんのことをいいますが、低体重児は、大人になってメタボリックシンドロームになりやすく、知能指数や寿命、生殖能力にも影響が及ぶ、といわれています。小さく産んで大きく育てるのは間違い……のようです。低体重児になる理由は、母親の「やせ」、栄養失調、タバコなどです。女性の健康が次世代にまで影響してしまう、ということになります。

女性のワーク・ライフデザインは、これからの課題

 女児は生まれたときすでに卵巣内に、卵子のもとになる細胞(卵母細胞)を持っています。妊娠16~20週の時点では、胎児の卵巣には600万~700万個の卵母細胞があります。その多くは徐々に消失し、出生後もどんどん減り続け、思春期を迎えるころには30万個程度まで減ってしまいます。それでも女性の生涯の生殖機能を支えるには十分すぎるほどの数です。生殖可能期間の間に成熟して卵子となるのは、ごくわずかで、何万個もの卵母細胞は成熟することなく退化していきます。
 とくに閉経前の10~15年間に急速に退化し、閉経期にはすべての卵母細胞がなくなります。また、数だけではなく、卵子の機能も閉経に近づくにつれて低下していきます。つまり卵子は本人と同じように年を重ねて老化していくわけです。

 現代の女性はとても若く見えます。年齢の7割掛け、といわれるように40歳でも28歳程度に見える方も稀ではありません。しかし、残念ながら、卵子の歳をごまかすことはできません。とくに35歳以上になると、卵子の老化に伴い、妊娠しにくくなり、不妊治療をしてもなかなか成功しなくなり、せっかく妊娠しても流産しやすくなります。また、染色体や遺伝子の異常が出やすく、胎児の先天異常も増えてきます。いくつになっても産める……と考えているのは、子どもが欲しい方には気をつけていただきたい幻想です。

 世界中で一番長生き、一番子どもを産まないのは日本の女性です。こうした生き方が、どのような健康影響を及ぼすのか、誰にもわかりません。日本は、世界の中で少子高齢社会の先頭を走っています。
 労働人口はますます減ってきます。好むと好まざるとにかかわらず、女性は働くことになるでしょう。どのような働き方、どのような生き方が男女とも健康で幸福になるのか……。
 女性自身がリーダーシップをとって切り拓いていく時代になってきましたね。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
荒木 葉子先生


東京医科歯科大学女性研究者支援室特任教授
荒木労働衛生コンサルタント事務所所長
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。

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