50代女性の健康と美容管理-抑えておきたい6つのポイント

50歳からの女性の健康管理のポイント

50歳過ぎたら本当にしたいことをして、キラキラ輝こう。そのためには積極的な健康管理が必要。

50歳以降の人生を輝かせるために、これまでの人生の振り返りを

 「働く女性の応援団 7」(18~39歳)、「働く女性の応援団 8」(40~49歳)と、年代ごとの女性の健康管理について解説してきました。今回は50歳以降についてみていきましょう。

 50歳代になると、これまで女性の健康を守ってきてくれた女性ホルモンがいよいよ少なくなり、なんと男性の女性ホルモン量よりも少なくなります。血管や骨を強力に守ってきてくれた女性ホルモンの低下は、心臓、脳、骨などの老化となって現れてきます。健康の喪失を強く感じる年代になってきますから、アクティブに健康管理をする、という心の切り替えが必要になってきます。一方、月経から解放され、妊娠の可能性が低くなりますので、日常生活や性生活には新たな局面が見えてきます。
 歳を重ねるほど、見かけ年齢の個人差は大きくなっていきます。同級生の中で、自分が若く見えるほうか、残念ながら逆なのか、同窓会は一つのチャレンジ。50歳以降、女性としてキラキラ輝く、新しい自分創りが待っています。

 これからの人生をキラキラ輝かせるために一番大事なことは、今までの自分の振り返りです。「あの人はいいなあ、仕事も充実しているし、ご主人は素敵だし、お子さんは良い学校に通っているし、何よりも本人が若々しいし……。」と、ついつい他人と自分を比較してしまい、羨んだり、いじけたり、恨んだり。こうしたマイナスの感情を抱えていると心身の健康は遠ざかってしまいます。反省はしても後悔はしない。少しずつ自分の人生のまとめに入っていくこの時期を、大事に過ごしたいですね。

 さて、自分の棚卸しの第一歩は、自分が一番楽しかったことをなるべく多く、最低でも5つは挙げてみましょう。頭の中に、どんなことが浮かんできますか?  そして、これからどんなことを「本当に」したいと考えていますか? 「本当に」と書いたのは、人は誰でも何らかの役割を担って生きているので、知らず知らずのうちに役割を「演じていること」が多いからです。特に女性は誰かのため……という文脈で生きていることが多いので、自分が本当に何をしたいのかが隠されてしまっている場合もあるのです。
 何かやりたいことがあると、不健康になどなっていられない、と思うようになります。人生の折り返し地点で、自分の健康は自分で守る責任があると、強く、強く思うことが大事です。

簡単な体力チェックをしたり、自分の健康データを整理しましょう

 気持ちはやりたいことにあふれていても、実際に動くためには体がしっかりしていることが必要です。まず、ラジオ体操第一、第二がきちんとできるか試してください。昔はできたことが意外に難しく、特に筋肉や関節を伸ばす運動がやりにくくなっていることに気づくでしょう。また、ジャンプしても同じ場所に着地できない、首を回すとめまいがする、など「こんなはずじゃなかった」と気づくはずです。弱くなった部分を鍛えるようにしましょう。

 次に、最近受診した健康診断のデータをそろえてみましょう。血液検査や乳がん検診など、受けたつもりでいても、すでに2、3年経っていることがあります。50歳になったら、「私の健康手帳」を作成しましょう。整理するのが苦手な方は、「健康ボックス」でもかまいません。病院の領収書、処方箋の写し、人間ドックの結果、サプリメントなどの領収書、気になった健康記事……。何でも一カ所にまとめておくようにしましょう。

 残念ながら、50歳を超えてくると、いろいろな不調が出てきます。「なんとなくだるくて、少しむくんで、ときどき心臓がぎゅっと痛んで、めまいがする。胃も痛いし、朝起きると手がしびれて……」こうした訴えが実は一番診断をつけるのが難しいのです。心臓病、腎臓病、消化器疾患、脳神経疾患、内分泌疾患、メンタル疾患、更年期障害、がんなどさまざまな可能性があります。重篤な病気なのか、ゆっくり経過を観察すればよいのか、1回の診療ではなかなかわかりません。
 かかりつけの医師なら、日頃からその方の日常や性格などをある程度把握していて、「いつもとは違う」という感覚を持つことができます。50歳をすぎたら、できれば主治医を持つことをおすすめします。

特にこのポイントを押さえて、健康管理を

 米国保健福祉省の女性部門であるOWHは、女性の年代ごとに行うべき健康チェックと予防について示しています。「働く女性の応援団 6」では、それを表にして紹介しました。この表にそって、50歳以上の女性の健康管理のポイントについて考えてみましょう。

(1)体重と虚血性心疾患や脳卒中との関係
 若い女性は「やせ」が問題ですが、閉経以降は「肥満」が問題となってきます。わが国では、肥満の定義はBMIが25以上としています。50歳を過ぎると20%以上の方が肥満と判定されるようになりますが、最近の50代の方は、以前に比べてスリムになってきているようです。

 女性の場合、体重と虚血性心疾患や脳卒中との関係は、やせているほうがリスクが高いことがわかっています。虚血性心疾患は、BMIが27以上になるとリスクは大きくなりますが、脳卒中のリスクはあまり変わりません。体重というより、内臓脂肪が心血管疾患と関連が強いことがわかっており、女性の場合は皮下脂肪が多い洋ナシ型肥満が多いので、肥満と病気との関係があまりはっきりしないのです。けれども、内臓脂肪が多い場合は、女性でも生活習慣病との関連が強くなることがわかっているため、メタボリックシンドロームでは、腹囲を測ることになっています。ウエストでも構いませんから、定期的にチェックしましょう。また、ゴムでゆったり……ではなく、ウエスト周りに敏感な洋服を着るように心がけましょう。

(2)高血圧、脂質異常症、糖尿病
 閉経以降、高血圧、脂質異常症、糖尿病の方も増えてきます。1980年から19年間にわたり、男性4,098人、女性5,255人のデータを追いかけた「NIPPONDATA80」という研究があります。年齢、喫煙、糖尿病、血圧、体重、コレステロールがどの程度、冠動脈疾患や脳卒中にかかわるかを示したものです。これによれば、女性の場合は、年齢、喫煙、糖尿病、血圧は影響が大きいことがわかりましたが、コレステロールの影響は大きくありませんでした。

 女性と男性のコレステロールの基準については、最近論議が盛んになってきました。
 日本動脈硬化学会の基準値では、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)値以外の主要危険因子が1~2つあると、脂質管理目標値はLDLコレステロール140mg/dL未満とされます。女性の場合は、「55歳以上」というのが主要危険因子の1つに挙げられています。日本の女性は世界で最も長生きで、心血管疾患が少ないにもかかわらず、世界の基準で最も厳しい目標値を掲げています。本当にこのような厳しい管理が必要なのでしょうか。
 昨年、日本脂質栄養学会から「長寿のためのコレステロール ガイドライン」が発表され、大きな話題になりました。そこでは「40~50歳以上の一般集団では、血清コレステロール値が高いほうが総死亡率が低い」とされ、これまでのガイドラインとはまったく内容が異なるものだったのです。

 コレステロールにはLDLコレステロール、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)などいくつかの種類があること、また、コレステロールが酸化した状態かどうか、どの程度の期間、脂質異常症が持続しているのか、合併している疾患は何か、など複合的に考える必要があります。
 女性の場合、他に危険因子がない場合は、LDLコレステロールの基準はもう少し高くてもよいのではないか、と考えられています。けれども、もし、糖尿病や高血圧、喫煙などの危険因子がある場合は、やはり厳しい管理が必要です。複数の危険因子がある方は、頸動脈エコー、眼底検査など複合的な動脈硬化の検査をぜひ受けてください。
 さまざまな病気の治療にガイドラインが設けられていますが、人それぞれ健康問題は異なります。かかりつけ医とよく相談しながら治療を進めていきましょう。

(3)甲状腺機能
 甲状腺は首の前の部分にあるハート型をした器官です。代謝のコントロールをするあたかも指揮者のような役割を担っています。そして、なぜなのか理由はわかっていませんが、甲状腺の病気は圧倒的に女性に多いのです。
 甲状腺機能が高まりすぎると、心臓がドキドキする、汗をかきやすい、のどが詰まった感じがする、目が飛び出て人相が変わる、ものが二重に見えるなどの症状が出てきます。代謝が高まっているのでやせてきますし、疲れやすくなったりします。逆に甲状腺機能が低下すると、だるい、髪の毛が抜ける、寒い、便秘、なんとなくだるくてボーとした感じ、むくみ、月経異常などの症状が出てきます。
 甲状腺機能は簡単な血液検査でわかります。コレステロールがいきなり上昇したときも、甲状腺機能異常を疑う必要があります。家族内発症も多いので、母親や姉妹などに甲状腺の病気がある場合は、ご自分もチェックしてもらいましょう。

(4)骨のケア
 女性ホルモンは骨を守るホルモンなので、閉経以降、どんどん骨は弱くなり、骨粗しょう症の危険が高まってきます。カルシウムを積極的にとること、運動することはもちろんですが、骨密度を測り、自分の骨量に気を配るようにしましょう。骨折は骨量だけではなく、骨の性質や筋肉の支え、体の柔軟性も関係してきます。
 高度な骨粗しょう症には、さまざまな薬が出てきているので、症状に合う薬を処方してもらいましょう。

(5)がん検診
 乳がん、子宮頸がんだけでなく、子宮体がん、大腸がん、肺がん、胃がんなどの検診も心がけましょう。

(6)感覚器のケア
 残念ながら、目、耳、歯、鼻、皮膚感覚すべてが低下してきます。感覚器の低下は、人生の質を損ないます。めがねやサングラス、歯周病予防に役立つ歯磨きグッズ、紫外線対策など、これからもまだ長らくお世話になる自分の分身たちに、今まで以上に丁寧なケアをするようにしていきましょう。美しいものを見たり聞いたり、味わったりして、これからの人生を優雅に過ごしてください。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
荒木 葉子先生


内科医、荒木労働衛生コンサルタント事務所所長
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。2008~2011年3月東京医科歯科大学女性研究者支援室特任教授。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。

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