メタボリックシンドロームってなに? 心筋梗塞や脳卒中の危険因子に

内臓脂肪の蓄積が引きおこす具体的なメカニズム

ウエストが気になり始めたら要注意。心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるメタボリックシンドロームの正体とは

腹部肥満があり、かつ血圧・血糖・中性脂肪が高値の状態

 腹部肥満、高血圧、高脂血症、高血糖が重なると、一つひとつは軽度であっても心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まることは、1980年以降、国内外で注目されてきました。また日本では、「3つ以上の危険因子をもつ人の心筋梗塞等の発症率は、1つもない人の30倍以上」という研究結果が示され、2001年に4つの危険因子をもつ労働者に労災保険で二次健診や保健指導を行う予防給付制度が設けられています。近年では、これら複数の危険因子の重なりの多くが、内臓脂肪の蓄積によって生じていることが明らかになりました。

 今年4月には、日本内科学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会など8学会が内臓脂肪の蓄積(腹部肥満)がベースにあるうえに、血圧、血糖、血清脂質の異常が重複して現れた状態を「メタボリックシンドローム」とする診断基準を発表しました(図参照)。

新たに発見された物質「アディポネクチン」

 では、なぜ内臓脂肪の蓄積が悪いのでしょうか?

「まず、空腹時には中性脂肪(トリグリセライド)が分解されますが、内臓脂肪が増加していると、分解された遊離脂肪酸とグリセロールという物質が肝臓に流れ込んで脂質・糖代謝異常を引きおこすと考えられているからです。また、近年、脂肪細胞から分泌される「アディポサイトカイン」というホルモン様物質が、内臓脂肪の蓄積によって増加し、糖尿病や高血圧、動脈硬化を促進することも、明らかになっています。さらに、日本で発見された、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンという物質がメタボリックシンドロームのキープレイヤーであることが明らかになりました。この物質は、本来、動脈硬化を予防する働きをしているのですが、内臓脂肪が増加すると逆にアディポネクチンは減少することがわかっています。その結果、インスリン抵抗性(インスリンがうまく働かなくなること)が増えたり、直接血管に作用して動脈硬化を予防できなくなるため、心血管病が発症しやすくなると考えられています」(廣部氏)。

 

内臓肥満の蓄積はウエスト周りが目安に

 内臓脂肪の蓄積を正確にみるためには、CTでの内臓脂肪面積の測定が必要ですが、ウエスト周り(周囲径)を測ることによって、おおむね判断できます。日本の基準では、男性85cm以上、女性90cm以上だと腹部肥満と診断されます。ちなみに、厚生労働省の国民健康・栄養調査では、30歳代〜60歳代の働き盛りの男性の約30%がメタボリックシンドロームの診断基準に相当するウエスト85cm以上という結果になっています。

 「心筋梗塞や脳卒中などの一次予防として、メタボリックシンドロームの予防・改善は重要です。内臓脂肪の蓄積があれば、いまは危険因子が1つしかなくても、後に複数出てくる可能性があります。そのため、運動と適切な食生活で内臓脂肪を減らすことが健康を維持するうえで重要なポイントとなります」と廣部氏。

(「へるすあっぷ21」、法研より)

【取材協力】
みずほフィナンシャルグループ大阪健康開発センター所長 廣部 一彦氏

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