冬はうつ病になりやすい-通常のうつとの相違点・予防のための3か条

冬の間抑うつ状態になり春には元気になる季節性感情障害

日照時間の短縮によるホルモン分泌の変化などが原因。規則正しい生活、光を浴びること、栄養と休養が大切

気分が落ち込む、眠い、甘いものが欲しい

 朝夕冷え込む季節になりました。それに、日が暮れるのがずいぶん早くなったと思いませんか? お天気にもよりますが、夕方5時すぎには暗くなって、この時期、何となく気分が落ち込む、気がめいる、といったことは誰にでもあるでしょう。

 しかし、気分の落ち込みが長く続き、仕事や家事、勉強などにさしつかえるようなら要注意です。秋から冬にかけて起こる「冬季うつ病」という病気があることをご存じですか? 冬季うつ病は、季節によって抑うつ状態(気持ちが沈んで晴ればれしない状態)が出る「季節性感情障害」の一つ。秋または冬に抑うつ状態が始まり、春になると治ってしまうか、人によっては軽い躁(そう)状態になるのが特徴です。比較的若い女性に起こりやすく、毎年くり返し起こる傾向があります。

 冬季うつ病では、抑うつ状態のほかに、次のような症状が現れます。
・早く寝て遅く起きるのにまだ眠い
・食欲をコントロールできず、体重が増える(とくにご飯やパンなどの炭水化物や甘いものが食べたくなる)

 このように、冬の間だけほかの季節とは明らかに違う心や体の不安定な状態が起こるようなら、ひょっとして冬季うつ病かもしれません。

通常の「うつ病」とはここが違う

 どうして冬だけこのような症状が出るのでしょうか? これには日照時間が関係していると考えられています。眠気を引き起こすホルモンであるメラトニンは、暗くなると分泌が活発になります。日照時間が短いと、メラトニンの分泌のタイミングがずれたり過剰になり、常に眠けを起こすと考えられます。また、うつ病の人に不足するといわれる脳内神経伝達物質セロトニンも、日照時間の短縮により減少することが指摘されています。
 このため冬季うつ病は、極端に日照時間の短い北欧や、雪の多い地方などで多くみられ、日当たりの悪い部屋に住んでいる人もおちいりやすいといわれています。

 通常のうつ病との違いは、冬季うつ病が季節限定であることのほかに、通常のうつ病でよくみられる不眠や食欲低下による体重減少とは逆に、いくら寝ても眠い、食欲が増して体重が増えるということ。また通常のうつ病は、まじめで几帳面、責任感・正義感が強い人などがかかりやすく、なりやすい性格やタイプがある程度わかっていますが、冬季うつ病の場合そういった傾向はみられません。

多くは光を浴びる治療で改善する

 冬季うつ病の治療には、太陽と同じくらいの強さの光を当てる光療法が効果的とされています。これは、高照度の光照射装置を用いて2,500~1万ルクスの強い光を浴びる治療法で、毎朝30~60分ほど約1週間連続して行います。照射装置は市販もされており、1分間に一度約10秒間光源を見るだけで、眠らなければ何をしていてもよいので、自宅で治療を行うこともできます。
 数日以内に効果が現れ、抗うつ薬や認知行動療法などを併用すると、効果が高まります。頭痛や疲れ目、焦燥(しょうそう)感、不眠などの副作用が出ることもありますが、重大なものではありません。

 病気の予防・改善のために、日ごろから次のようなことに気をつけましょう。

●規則正しい生活をして積極的に日を浴びる
 朝はきちんと起きてカーテンを開け朝日を浴びる。午前中に外へ出て日光を浴び、夜は早く寝ることが大切。南のほうへ旅行するのも効果的。

●通常のうつ病対策も欠かさずに
 ストレスをためない。無理をせずたっぷり休養を。

●セロトニンを増やすビタミンやたんぱく質を十分に
 セロトニンは必須アミノ酸トリプトファンからつくられ、その吸収には炭水化物やビタミンB6が必要。食事は炭水化物を中心に、肉、魚、大豆などのたんぱく質を欠かさず、ビタミンB6を多く含む青背の魚やレバー、バナナなどを積極的にとるとよい。

 冬季うつ病はまだあまり知られておらず、病気だと気がつかない人も多いようです。また、春になると治ってしまうため、そのまま放置してしまいがちですが、ひどくなれば通常のうつ病同様、自殺の危険性もあります。つらい症状を改善するためにも、思い当たることのある人は、早めに精神科や心療内科の専門医に相談してみることをおすすめします。

【監修】
兼子 直 先生


弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座 教授
1976年弘前大学大学院医学研究科修了。1978~79年連合王国Bristol大学留学(英国文化振興会給費生)。1987~88年連合王国Cambridge大学客員教授。Douning College Fellow(文部省在外研究員)。1989年弘前大学神経精神科助教授。国際抗てんかん連盟委員会委員。1995年弘前大学神経精神科教授。著書に『てんかん教室(追補改訂)』(新興医学出版社)、『患者と家族のためのてんかんQ&A(改訂4版)(共著)』(ライフ・サイエンス)など多数。

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