市販薬の販売方法の変更-第一・第二類医薬品は店頭でしか買えない?

私たち消費者も、副作用を認識し安全な使用を心がける必要が

リスクが比較的高い薬でもコンビニで買えるようになる一方、通信販売には制限も

リスクの程度に応じて市販薬が3種類に分類されます

 6月1日の改正薬事法の完全施行にともない、一般用医薬品の販売方法が変わります。一般用医薬品とは、市販薬、大衆薬、あるいはOTC(Over the counterの略、店頭でカウンターごしに買えるから)薬とも呼ばれ、医師の処方せんがなくても購入できる薬のことです。私たちの生活に大変なじみの深いこれらの薬の買い方に、一体どのような変化が生じるのでしょうか。ごく簡単にお話したいと思います。

 これまで一般用医薬品は、すべて同じように薬剤師による販売が義務づけられていましたが、現実にはそれほど徹底されていたとはいえません。今後は医薬品がリスクの程度により3区分に分類され、それぞれに応じた販売方法が定められます。

 リスクの最も高い第一類医薬品とは、医療用医薬品(医師の処方が必要な薬)を一般用に転換したいわゆる「スイッチOTC」などを含み、比較的作用が強いため、従来どおり薬剤師でないと販売できません。それに対して、第二類および第三類医薬品は、薬剤師のほかに登録販売者でも販売できるようになります。
 登録販売者とは、一定以上の実務経験のある人が都道府県の実施する試験に合格することにより取得できる資格です。昨年から始まった試験で、すでに多くの合格者が出ています。

 一般用医薬品の9割は第二類および第三類医薬品が占めるのですが、これらを販売するのに薬剤師を確保する必要がなくなるということは、薬をより販売しやすくなることを意味します。そのため、これまで薬を扱っていなかったスーパーマーケットやコンビニエンスストアも、続々と医薬品販売に参入する動きがみられます。これらの店は店舗数も多く、営業時間も長いので、私たちにとっては大変便利になることは間違いないでしょう。
 一方、第一類医薬品はこれまで以上に詳しい情報を提供してもらえるものの、薬剤師が店頭にいないときには購入できなくなるので、不便さを感じることがあるかもしれません。

市販薬の通信販売が規制されます

 現代社会ではインターネットや電話、ファクシミリによる通信販売は日常生活に浸透しており、医薬品も例外ではありませんでした。しかし改正薬事法施行後は、通信販売ができるのは第三類医薬品のみとなり、品目数で約7割を占める第一類・第二類医薬品は店頭でしか購入できなくなります。

 前述のように店頭での医薬品購入が便利になる面はあるものの、山間部や離島にお住まいでお店へのアクセスが悪い方にとって、通信販売の禁止は非常に困るという声も聞かれます。店頭で購入するのが少々恥ずかしい薬(痔の薬や妊娠検査薬など)を通信販売に頼っていた方々からも、不満の声が上がっているようです。

 国は増え続ける医療費を抑制するため、セルフメディケーション(症状が軽い場合は医師を受診せず、市販薬を服用して養生すること)を推進していますが、今回の通信販売規制はこの流れに逆らうものであるとの批判もあります。大手ネット通販会社は大々的に反対運動を展開していますし、高齢者からの電話・ファクシミリによる注文が売上げの大部分を占める老舗の漢方薬店などにとっては、まさに死活問題です。

 そのため厚生労働省は、薬局・薬店がない離島に住む人などに限って2年間は利用できるとするなど、一定の条件下で6月以降も通信販売を認める経過措置を盛り込んだ省令を公布しましたが、引き続き経過を見守る必要がありそうです。

安全性と利便性を両立させるために

 医薬品は食品や飲料とは違い、ごく少量でも私たちの体に大きな影響を与えます。調子の悪いときに改善するのは「作用=有効性」で、私たちはそれを期待して医薬品を使います。しかし、医薬品には「副作用=有害性」もあることを忘れてはいけません。作用と副作用は表裏一体、紙一重の関係にあり、誤った使い方をすれば命にかかわることもあるのです。

 改正薬事法は、医薬品のこのような性質を再確認し、より安全に使用することを目的としています。通信販売を制限するのはそのためです。実際、ネットで購入した大量の睡眠薬で自殺を図った事例などもあり、対面販売にすればこのような事故はかなり防げるものと期待されます。薬剤師や登録販売者はその目的に沿うべく、医薬品を正しく安全に使用できるよう最大限の努力をすることになります。

 一方で、市販薬はセルフメディケーションの観点から、すぐに入手できるところにメリットがあります。その利便性を保証するには店頭販売だけで十分でしょうか。商品の通販システムは目まぐるしい速度で普及しており、医薬品だけがその流れに乗らないのは困難にも思えます。私たち消費者もただやみくもに利便性だけを求めるのではなく、副作用の可能性を認識しながら、安全に医薬品を使用するよう心がけたいものです。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
藤江 敬子先生


薬学博士、薬剤師
京都大学薬学部卒。藤沢薬品工業(株)およびアステラス製薬(株)に研究員として20年間勤務し、抗炎症薬、糖尿病薬などの創薬研究に携わる。現在は筑波大学大学院にて充電中。東京大学医療人材養成講座5期生。

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