医療の質を高めるチーム医療-メディカルスタッフで構成する最良の医療

一人の患者さんに、多方面からの力を結集した医療体制づくり

医療の主体である患者さんの満足度を上げ、医療の質の向上に貢献するために、専門家たちの連携を強固に

チーム医療の必要性と普及が求められる時代に

 近年医療現場では、一人ひとりの患者さんの状態に合わせて、さまざまな医療関連職種の専門家たちが連携し、治療やサポートを進めていく「チーム医療」の実践が広がっています。

 従来は、一人の医師を中心とし、医療関連職種の専門家たちは、いわば脇役的な存在として患者さんにかかわっていました。
 チーム医療を実践することで、関連職種の専門家たちが医師と平面的な立場に立ち、的確な役割分担とスムースな連携で主体的に患者さんにかかわることで、その専門性をより発揮することができ、医療の質を高め安全を確保することができます。また、専門家たちがチームワークを築いて、患者さんの多様なニーズに応えることで、患者さんの満足度が高まり、患者さんにとってよりよい医療を実現することにもつながります。
 リハビリ部門、栄養サポート部門、緩和ケア部門、病棟カンファレンスなどでは、すでに多くの医療機関でチーム医療が実施されていますが、そのほかの部門でも普及が期待されます。

 このチーム医療の本格的な推進に向けて、厚生労働省では、2009年8月に「チーム医療の推進に関する検討会」(座長:永井良三・東京大学大学院医学研究科教授)を発足し、医療現場や患者さんのニーズに合ったチーム医療のあり方などについて検討を始めました。
 それより前の6月に、医療関係職種および患者団体の合計13団体に、メディア関係者がオブザーバーとして参加し「チーム医療推進協議会」を発足しました。日本放射線技師会会長で同協議会代表を務め、中央社会保険医療協議会の専門委員でもある北村善明氏は、協議会発足記者会見において「病院内の多職種が協働して、患者さん中心の医療を実現したい。そのためには、医療関連職種全体の地位向上を図るとともに、教育などによりその職に就く一人ひとりのスキルアップを図りながら、患者さんにとって、よりよい医療に向けてチーム医療を推進していきたい」と、発足趣旨を述べました。

チーム医療を構成するさまざまな専門家たち

 チーム医療の考え方は欧米から導入されたもので、わが国ではイメージはおおまかに把握されつつありますが、定義はまだ確立されていません。「チーム医療推進協議会」では、医師を含めた医療関連職種を「メディカルスタッフ」と呼び、「一人ひとりの患者さんに対して、メディカルスタッフがそれぞれの職種を尊重し、さらに専門性を高めて、発揮しながら、患者さんが満足できる最良の医療を提供する」ことをチーム医療としています。

 多種多様の専門家の中から、そのときどきの患者さんの状態やニーズに応じ、適切な専門家たちがチームを構成し、患者さんに対応することが求められます。
 医療現場で直接・間接に患者さんにかかわる専門家としては、医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、診療放射線技師、医療ソーシャルワーカー、リンパドレナージセラピスト(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、あん摩・マッサージ・指圧師などが携わっている)、診療情報管理士、細胞検査士、臨床工学技士など、さまざまな職種があります。
 また、医師と一口にいっても多様で、たとえば、がん治療にかかわる医師を例にあげると、外科医(形成外科医、整形外科医を含む)、内科医、放射線科医(放射線診断医、放射線治療医)、腫瘍内科医(抗がん薬など薬物療法の専門家)、病理医(細胞・組織の検査や診断を行う専門家)、緩和ケア医、精神腫瘍医(がん患者さんの精神面の治療にあたる医師)、リハビリテーション医、麻酔医などがいます。

 こういった医療現場での専門家だけでなく、患者さんの生活面や精神面のニーズをサポートする臨床心理士、宗教家、音楽・絵画療法士、アロマセラピストなどの専門家のほか、患者さんの日常生活を直接・間接に支えてくれる家族や友人、ボランティアなども、チーム医療の構成メンバーであるという考え方も提唱されています。

医療の主体は患者さん。患者さん自身もチーム医療の仲間

 医療の主体は患者さんで、前述したような家族・友人なども含めた広い意味でのチーム医療を構成するメンバーたちは、患者さんの伴走者であったり、サポーターであったりする存在です。
 特に医療現場では、患者さんと医療関連職種の専門家たちは、治療を進めていくパートナーと考えられていますので、患者さん自身も受動的に治療を受ける存在から、自分の人生観や生き方を考え合わせながら、治療過程における意思決定の主体であるという自覚を持つことが大切です。

 患者さんは、いわば「患者の専門家」。患者さんがチーム医療に積極的に参加する方法として、自分の症状や日常の諸問題に関しては、専門家たち以上の知識を持っているという意識で、心身の調子の日常的な管理に責任を持つとともに、専門家たちに症状の変化を正確に伝えたり、生活面や治療上で何を優先したいかなども伝えたりすることが大切です。また、疑問や心配ごと、要求などが生じた場合は、家族や友人を含めた広い意味でのチーム医療を構成するメンバーに遠慮することなく正直な気持ちを伝え、サポートを随時求めることも可能です。

 今後、わが国のチーム医療の普及には、厚生労働省「チーム医療の推進に関する検討会」や「チーム医療推進協議会」などの動きに期待するところは大きく、同時に患者さん自身や国民も声を上げ、チーム医療の普及を強く要求していくことも原動力になることでしょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
北村 善明先生


(社)日本放射線技師会会長
チーム医療推進協議会代表
1973年東北大学医学部附属診療放射線技師学校を卒業後、順天堂大学附属順天堂医院、虎の門病院、厚生中央病院に勤務。94年5月より日本放射線技師会常務理事、同専務理事を経たのち、2008年6月より同会長に就任。現在、国民医療推進協議会理事、画像診断コンソーシアム副会長、日本画像医療システム工業会基準委員会委員、医療機器センター評議員、医療研修推進財団評議員、鈴鹿医療科学大学理事、チーム医療推進協議会会長、中央社会保険医療協議会専門委員なども兼務。

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