子宮頸がんワクチンは本当に有効なの? 検診をプラスして確実に予防

検診+ワクチンで唯一予防できるがんに

任意接種は昨年開始。今年から小中学校の女子を対象に接種費用を助成する自治体が増加中。

子宮頸がんは若い女性に急増。原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)

 多くのがんが40歳を過ぎたころから増えるのと異なり、子宮頸がんは20~30歳代の若い女性に多いのが特徴です。最近はこの年代に急激に増える傾向にあり、日本では、毎年約15,000人の女性が子宮頸がんを発症し、およそ3,500人が亡くなっています。若い女性に子宮頸がんが増えている最大の理由は、子宮頸がん検診を受けていないからです。検診の重要性がもっと強調されるべきです。

 子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)への感染が原因であることが明らかになっています。そこで、予防ワクチンが開発されました。ワクチンは、このHPVに対する免疫機構を体につくって、がんを予防します。すでに欧米諸国では、積極的にワクチン接種が行われています。

 日本では、2009年に予防ワクチンが認可され、医療機関での接種が始まりました。子宮頸がんは「検診とワクチンで予防できるがん」になったといえるでしょう。

ワクチンはハイリスクのHPV16型・18型に効果

 HPVは、昔からある一般的なウイルスで、性体験のある女性の80%は、HPVへの感染を経験しているといわれます。しかし、感染しても90%以上は一過性で、異物を排除しようとする元々備わっている免疫の働きで消滅してしまいます。ごく一部が感染したまま進行し、5~10年以上かけてがん化します。また、一度感染し消滅しても、HPVは粘膜の上皮細胞に感染することから抗体がつくられにくく、再び感染する恐れがあります。

 HPVは100種類ほどあることがわかっています。その中で、子宮頸がんの発生に深くかかわっているハイリスクグループは13種類。現在、認可されている子宮頸がんの予防ワクチンは、そのうちのHPV16型と18型の感染を予防します。この2種類のHPVが子宮頸がんの原因として最も多く報告され、その約70%を占めています。

 HPVワクチンは、HPVに感染していない人に有効です。HPVは、おもにセックスによって感染するため、性的接触を経験する前にワクチンを接種するほうが効果的です。そのため、日本産科婦人科学会などは11~14歳の女子への優先的な接種をすすめています。
 12歳の女児(ほとんどがHPVに感染していないと思われる)にワクチンを接種した場合、子宮頸がんの発症率を7割以上減少させると推計されています。もちろん、ワクチン接種の推奨年齢を超えた15歳以降でも効果はあり、20歳代で7割程度、30歳代でも5割以上が子宮頸がんを予防できるとされています。

 子宮頸がんのワクチン接種は、半年に3回筋肉注射を受けます。費用は、現在のところ全額自己負担で、3回分で約5~6万円(医療機関によって異なる)です。小学校5年生または6年生から中学3年生までの女子を対象に接種費用の一部または全額を助成する自治体も徐々に増えてきています。

ワクチンだけでは完全ではない。検診をプラスして確実に予防を

 しかし、予防ワクチンを接種したら万全というわけではありません。ワクチンはあくまで接種後の感染を防ぐものですし、有効なのはおもにHPV16型と18型に対してであり、ほかのHPVには効果が期待できません。また、すでに感染していたり、がん化している細胞を治療する効果はありません。

 子宮頸がんをより確実に予防するには、ワクチン接種に加えて、子宮頸がんの検診を定期的に受けることが大切です。子宮頸がん検診は、子宮頸部の細胞を採取して調べる細胞診で、日本のレベルは世界でもトップクラスです。ほかのがん検診と異なり、子宮頸がん検診では、がんになる前の段階(異形成といわれる前がん病変)で見つけることができます。つまり、定期的に検診を受けていれば、本物のがんになる前のタイミングで治療することができるのです。
 子宮頸がんの予防には、ワクチン接種と検診が車の両輪になります。ワクチンを接種したからといって安心するのでなく、検診も必ず受けてください。また、ワクチン接種にあたっては、安全な性行動や、将来の検診の必要性などを教える必要があることはいうまでもありません。

 なお、欧米のいくつかの国では、細胞診とHPV検査を組み合わせて行っています。HPV検査は、細胞診と同じように子宮頸部の細胞を採取した後、DNA を取り出し、HPVに感染しているかどうかを調べるものです。ハイリスクHPV感染の有無がわかり、より精度の高い検診が可能になります。HPV検査は今のところ全額自己負担ですが、希望すれば医療機関で受けられます。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
今野 良先生


自治医科大学附属さいたま医療センター 産婦人科教授
1959年生まれ。84年自治医科大学医学部卒業。96年東北大学医学部産婦人科講師、2002年自治医科大学附属大宮医療センター助教授、08年4月より現職。1988年から子宮頸がんとヒトパピローマウイルスの研究をはじめ、現在、子宮頸がんとHPV(検診、ワクチン、治療)に関する研究および啓発活動、さらに国内外の共同研究・著作に取り組む。日本婦人科がん検診学会理事ほか各種専門学会に所属。「子宮頸がん征圧をめざす専門家会議」実行委員長。

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