歯ぎしりは歯をボロボロにする? 歯ぎしりが与える体へのダメージ

歯周病の悪化、顎の痛みや肩こりなど全身の不調にもつながる

歯ぎしりが疑われたら歯科医に相談し、マウスピースで保護。かみ合わせの調整やストレス対策が必要なことも

ほとんどの人が無意識に歯ぎしりをしている

 友人との旅行先などで夜中に「ギリ、ギリ、ギリ」と何やら不気味な音を耳にして、目が覚めてしまったことはありませんか? しばらく耳を澄ませて音の出所を探っていると、音源は歯ぎしりだということがわかり、音があまりに大きいことに驚いてしまいます。それなのに、当の本人はぐっすり眠っていて、目も覚めなければ、自分が歯ぎしりの音を立てていることも気づきません。誰かに歯ぎしりを指摘されない限り、自分で歯ぎしりに気づくことはほとんどないのです。

 歯ぎしりには、寝ている間に無意識に上下の歯をこすり合わせるタイプと、寝ている間や緊張しているときに上下の歯をグッとかみしめているタイプがあります。前者では「ギリ、ギリ、ギリ」と大きな音を出し、後者ではほとんど音はしません。
 いずれにしても、ほとんどの人が無意識のうちに歯ぎしりをしているといわれます。無意識に行われる歯ぎしりでは、起きているときには考えられないような大きな力が出て、体重と同程度か、それ以上の力が歯に加わることさえあります。

 歯ぎしりの主な原因は精神的なストレスで、歯ぎしりをすることで無意識にストレスを解消しているといわれています。他にも顎の筋肉の緊張、上下の歯のかみ合わせが悪いことなども原因になると考えられますが、そのメカニズムはまだわかっていません。最近では、睡眠時無呼吸症候群と深い関係があるのではないかという指摘もあります。
 ストレスや緊張が強くなったりかみ合わせが悪いほど、歯ぎしりの頻度や程度がひどくなるといわれています。

歯の寿命を縮め、顎のダメージから全身の不調の原因にも

 歯ぎしりで問題なのは、歯を傷めて歯の寿命を短くしたり、顎にダメージを与えて全身に悪影響を及ぼしたりすることです。歯ぎしりの影響には、次のようなものがあります。

●歯のすり減りやひび割れ、歯の根もとの欠け
 歯は、通常の生活を送っているうちに少しずつ摩耗(まもう)していきますから、成人の歯がある程度すり減っているのは普通のことです。しかし、ひどい歯ぎしりがあると、歯は病的にすり減っていきます。時には、歯がひび割れてしまうこともあり、冷たい水が歯にしみる知覚過敏を起こしたり、歯を抜かなければならないケースもあります。特に中高年の人や歯の神経を抜いた人は、歯がもろくなっていてひび割れやすいので注意が必要です。くり返し大きな力が加わることで歯の根もとが欠けて、知覚過敏を起こすこともあります。

●歯周病が進行する
 大きな力が加わっても、歯ぐきが健康な状態であれば、ある程度は耐えることができます。しかし、歯周病が進んで歯を支える力が弱くなっていると、自分の体重ほどもある力に耐えることはできません。歯がグラグラしたり、歯が動いて歯並びが変わってしまうこともあります。歯周病に拍車をかけて、歯の寿命を一気に縮めてしまいかねないのです。

●顎関節症から頭痛、腰痛、めまいなども
 歯ぎしりの影響は歯だけにとどまらず、歯を支えている顎にもダメージを与えます。顎の筋肉や関節に大きな負担がかかり、口を開けたり動かしたりするたびに顎の関節が音をたてたり痛んだりする顎関節症になることもあります。顎関節症を放置すると、首や肩のコリにつながり、頭痛、腰痛、めまいなどを引き起こすこともあります。

マウスピースで保護したり、かみ合わせの調整、ストレス解消の工夫も

 こうして全身の不調を招きかねないのですから、「たかが歯ぎしりくらいで」と軽く考えることはできません。もし、家族や友人から歯ぎしりを指摘されたら、放置しないで歯科、あるいは口腔外科を受診し、相談してください。

 よく行われる治療は、マウスピースを使った「スプリント療法」です。プラスチック製のマウスピースを上下どちらかの歯並びに合わせてつくり、夜寝るときに装着します。こうして歯が強くこすれ合うのを防いで保護します。マウスピースは健康保険でつくることができます。歯のかみ合わせが悪い場合は、かみ合わせを整える治療が必要です。

 精神的ストレスや緊張が原因と考えられる場合は、できるだけストレスの原因を取り除き、十分に休養をとって、心身の疲れを解消するようにしましょう。趣味やスポーツを楽しむなど、気分転換を図るのも一つの方法です。ケースによっては、心療内科を受診する必要もあります。

 なお、一人暮らしなどの場合、歯ぎしりを指摘される機会がなく、なかなか歯ぎしりに気づかないこともあるでしょう。朝起きた時に「歯が浮いた感じがする」「顎がだるい」といった症状があったら、歯ぎしりによるものかもしれません。一度、歯科医を受診したほうがよいでしょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
菅野 直之先生


日本大学歯学部歯周病学講座准教授
同大付属歯科病院予防歯科科長
1988年日本大学歯学部卒業。92年日本大学大学院歯学研究科終了。同年日本大学歯学部助手。94年~97年米国スクリプス研究所研究員。日本大学歯学部講師、助教授を経て、07年より現職。日本歯周病学会専門医評議員、日本歯科保存学会専門医評議員、日本抗加齢医学会専門医評議員などを務める。

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