メディカルメイクって知ってる? 肌の変色や手術痕をカバーするメイク

皮膚の変色や手術痕を目立たなくするメイクテクニック

精神的な苦痛を軽減し、日常生活の質の向上を図ることができるメイクの技術をサポーターが手助け

皮膚のトラブルは、QOLの低下を招きやすい

 皮膚にトラブルがあると、精神的なダメージが大きいものです。特に顔や手・腕、首筋・胸元など露出した部分のトラブルは、人目を気にして外出を控えてしまうなど、日常生活に支障をきたし、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまうことにもつながります。
 外見上のトラブルは本人にとってとても気になる要素です。他人には小さなことに思えても、本人にとっては、人生を大きく変えてしまうほど、悩んでいることも多いのです。
 あざなど皮膚の変色や手術痕などを、自然な感じに隠す化粧法があります。先駆的に取り入れた欧米では、「コスメティックカモフラージュ」「カモフラージュメイク」「カモフラージュセラピー」「スキンカモフラージュ」などと呼ばれています。
 日本では、「セラピーメイク」「メイクセラピー」「カバーメイク」「化粧療法」「メディカルメイク」など、それぞれの呼び方があります。
 メディカルメイクが米国から日本に導入されたのは1953年頃。当時は厚く塗ったり色が白すぎたりしましたが、現在では日本人の肌の色に合うように品質も改良され技術も向上し、自然にカバーできるようになりました。しかし、「知る人ぞ知る」の分野で、広く知られていないのが現実です。

 メディカルメイクの対象となるのは、先天的・後天的に生じた皮膚トラブルによる変色が主で、次のような症状が挙げられます。
・母斑(太田母斑、色素性母斑、扁平母斑)
・血管腫(単純性血管腫、海綿状血管腫、イチゴ状血管腫など)
・白斑、交通外傷の痕、熱傷痕、手術痕、リストカット、タトゥー(刺青)
・肝斑(シミ)、雀卵斑(ソバカス)、全身性エリテマトーデス(SLE)

ビューティーメイクはより美しく、メディカルメイクはより自然に

 私たちがよく知るビューティーメイクでは、より美しくなるために、シミ、ソバカス、血色の悪さ、皮膚の色むら、毛穴などを好みの色のファンデーションで覆い隠します。
 しかし、メディカルメイクではより美しくが目的ではなく、皮膚の色を再現することを目的に、カバー力のある専用のファンデーションを使用し、変色部分をカバーしていきます。言い換えれば周囲の人にカバーしていることを感じさせないことが大事です。
 メディカルメイクは、年齢や性別に関係なく生きていくために必要なメイクです。

●メイクアップカバー
 顔に症状があり、女性で、化粧ができる年代に適用されます。ファンデーションで好みの色を作り、顔全体をメイクアップしながら症状をカバーしていきます。

●部分カバー
 身体、顔でも男性・学生さんなどに適用されます。ファンデーションは、症状部分の周囲の色を作り、その症状部分のみにつけてカバーしていきます。

NPOの設立とサポーターの認定

 メディカルメイクには、カバーファンデーションの使い方およびカバーテクニックを修得する必要があります。
 このメイクアップ技術の普及のために、2001年に特定非営利活動(NPO)法人「メディカルメイクアップ アソシエーション(MMA)」が設立されました。
 MMAでは設立以来、メディカルメイクの技術者の養成を行っています。メディカルメイク技術を修得するためには、30時間の基礎を勉強しなければなりません。基礎試験を合格した人が症状別カバー技術を勉強し、すべての技術が合格点に達したときに、「メディカルメイクサポーター」(MMAでは略して、サポーターともいう)の認定証「DEPLOMA」が与えられます。その後、実習などを重ね、実際の活動ができるようになります。

 サポーターは全員ボランティアです。なかには、メディカルメイクをしている当事者の方もいます。現在、全国に約150人のサポーターがいて、病院の皮膚科や形成外科などに通う患者さんや、直接個人からのメディカルメイクの相談を受けています。
 メディカルメイクは、単に皮膚の変色をカバーするという、メイクアップの技法だけを指すものではありません。社会生活の中で生じるさまざまな支障や精神的な苦痛をも軽減し、その人が自分らしくいきいきと日常生活を送っていただくために有効な手段ととらえられており、サポーターの存在は大きいといえます。
 「子どものころから顔にあざがあって、外出することがおっくうでした。このメディカルメイクに出会って、別人のように明るく活動的になれました」と語る小井塚さんは、当事者でありサポーターでもあるという立場で、メディカルメイクの普及に努める一人です。

 医療とメイク、それぞれの特徴を理解し、互いに補い合うこうとで、患者さんのQOLの向上につなげることができると期待されるメディカルメイク。今後の展開が注目される分野です。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
小井塚 千加子さん


特定非営利活動(NPO)法人 メディカルメイクアップ アソシエーション 理事
メディカルメイクアップ サポートセンター長
1950年4月1日生まれ。オリリー株式会社に入社、医療関係およびメディカルメイクを担当したのち、日本をはじめアジア方面にメディカルメイクを紹介するほか、英国にもメディカルメイクを紹介し視察するなど、技術を向上させる。 2001年、ボランティア活動として特定非営利活動(NPO)法人 メディカルメイクアップ アソシエーションを設立。メイクボランティア(サポーター)の養成および育成を行っている。 自身の顔半分に母斑があることから、メディカルメイクを使用している経験を生かし、同じ悩みを持つ人の相談やメイク指導といった活動を実施。メディカルメイクの第一人者として美容・医療の分野で精力的に活動をしている。

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