薬剤師なら知っておきたい!お薬手帳の現状と課題

まずはおさらい!お薬手帳のメリットとは?

 お薬手帳は、患者と医療従事者の双方が情報を共有するための記録です。患者は過去に処方された薬の種類や。薬の飲み方などを確認することができます。一方、医療従事者は、カルテなどの患者の情報が全くない場合でも、お薬手帳を見るだけで患者についてある程度把握することが可能です。つまり、お薬手帳は患者と医療従事者双方にとってメリットのあるアイテムと言えます。
 しかし、お薬手帳のメリットが最も発揮されるのは、不慮の事故や災害などの緊急時なのです。例えば交通事故や外出先で急に倒れりした場合など、患者本人や身内に確認できない場合でも、お薬手帳があれば円滑な救命活動が可能です。また、大規模災害時には処方箋がなくても薬の処方が認められる場合もあります。実際、東日本大震災の時は、お薬手帳を持っていた人は治療や薬の処方をスムーズに受けられたという実績があります。

2014年の診療報酬改定の背景にあるもの

 診療報酬は2年に1度見直されますが、ご存知の通り、2014年の改定では手帳に記載を必要としない患者の「薬剤服用歴管理指導料」が引き下げられました。この改定の背景には、国が抱える莫大な医療費問題があるのです。
 2013年度の医療費の概算は、前年度比2.2%増で39兆3千億円。保健医療費は国内総生産の1割を超えていて、先進国の平均を上回っています。また、服用されずに処分される薬は年間400億円になると推計されています。国が推奨している後発医薬品の普及も思うように進んでいません。
 そこで、国は医療費削減、残薬の管理、後発医薬品の普及を目標として、残約の確認と後発医薬品の情報提供を徹底した上で、医療費の削減に踏み切ったというわけです。また、薬剤服用歴管理指導料の不正受給の発覚により、国民の厳しい目が注がれるようになったのも、改定の背景の1つです。

活用されているの?お薬手帳が持つ課題

 お薬手帳は患者と薬局が正しく使えば、患者の健康管理や迅速な救命活動に多きな効果をもたらします。しかし、実際にお薬手帳は本来の目的で活用されているのでしょうか。
 答えはNo!です。活用できていない大きな要因の1つとして、お薬手帳について理解している患者が少ない、ということがあります。お薬手帳が何のために存在しているのかが周知されておらず、お薬手帳は別に必要ないと思っている人が大半なのではないでしょうか。
 健康保険証と同じようにお薬手帳を普段から持ち歩いている人は、ほとんどいないのが現状です。家にあるからとシールをもらっても、そのまま放置している人も多くいれば、受診するたびに毎回新しくお薬手帳を作る人もいます。
 お薬手帳は、既往歴やアレルギーなどの患者の基本情報と過去の薬の処方歴が正しく管理されて初めて機能するのです。また、せっかくきちんと管理していても普段から持ち歩かなければ、緊急時に効果を発揮することはあり得ないのです。

お薬手帳の電子化、現状と課題

 紙媒体がデジタル化される傾向の昨今、お薬手帳に関しても電子化の動きが強まってきました。現在、大阪府薬剤師会の「大阪e-お薬手帳」や川崎市薬剤師会が市とソニーとで共同開発した「ハルモ(harmo)」など公共団体が開発・運営しているアプリと複数の民間企業が独自開発しているアプリとがあります。これらを使用するとどの薬局で処方された薬であっても、基本的にデータが読み取れるようになっています。
 紙媒体では、個々の管理にゆだねられていたお薬手帳ですが、デジタル化することで情報を一括管理が可能になり、お薬手帳やアプリが手元になくても最適な医療が受けられるようになります。つまり、現状のお薬手帳が持つ課題の解決につながるのです。
 しかし、電子化にもまだまだ課題が残されています。デジタル化された他のシステムやサービスと同じように、アプリを使う環境にない人、もしくはアプリを使いこなせない人も多くいるのが現状です。また、お薬手帳の存在意義が周知されていなければ、そもそも何の意味も持たなくなってしまうのです。
 お薬手帳の現状と課題について見てきました。今、国や医療機関に求められているのは、お薬手帳の意義を国民にもっと伝えていくことではないでしょうか。国民一人一人が使いこなせない限り、医療費の削減も後発医薬品の普及も成し得ないように思います。
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