• ●腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)

分娩麻痺とはどんな病気か

  • 分娩時に腕の神経が損傷を受け、麻痺が生じたものです。

原因は何か

  • 腕神経叢は頸髄(けいずい)下部から胸髄(きょうずい)上部にかけての脊髄神経根で形成され、そこから腕神経が腕に向かって伸びています。
  • 分娩時に頸部が側方に過剰に引き伸ばされることで損傷が起こります。
  • 損傷の受け方としては、神経が引き伸ばされたことによるものと、完全に断裂したものとがあります。
  • 発生頻度は比較的高く、0・2〜0・5%に発生するとされています。

症状の現れ方

  • 損傷を受けた場所により、上位型(エルブの麻痺)、下位型(クルンプケの麻痺)、全型に分けられます。
  • 上位型では肩や肘(ひじ)を動かすことができず、腕全体がだらりとした感じになりますが、指を握ることはできます。
  • 下位型では肩や肘を動かすことはできますが、指を動かすことができなくなります。
  • 全型では肩、肘、指のいずれも動かすことはできません。
  • また、横隔膜(おうかくまく)神経が近くにあるため、横隔膜の麻痺を伴うことがまれにあります。
  • その場合はチアノーゼ(皮膚などが紫色になること)、呼吸数の増加、呼吸困難がみられます。

検査と診断

  • MRI検査で神経根の断裂が証明されることがありますが、ほとんどの場合は、症状から診断されます。

治療と予後

横隔膜神経麻痺(おうかくまくしんけいまひ)
  • 最初の1〜2週間は腕の安静を保ちます。
  • そのあと、関節の拘縮(こうしゅく)(変形して硬くなる)を防ぐためにリハビリテーションを開始します。
  • 多くの場合は3〜4カ月で完全に回復しますが、神経の完全断裂によるものでは回復を望めず、手術によって神経を修復することが必要になります。
  • 生後3カ月で手首を曲げられない場合、または生後6カ月で肘を曲げられない場合は手術を行うほうがよいとされています。
  • いずれにせよ、整形外科による診断と経過観察が必要です。

分娩麻痺とはどんな病気か

  • 分娩時に横隔膜神経が損傷を受け、横隔膜の運動が損なわれるために呼吸障害を起こす病気です。

原因は何か

  • 横隔膜神経は頸部脊髄から分岐していますが、分娩の際に頸部が過剰に引き伸ばされることによって横隔膜神経の損傷が起こります。

症状の現れ方

  • 出生直後から、チアノーゼ、多呼吸、陥没呼吸、不規則な呼吸などがみられます。

検査と診断

  • 胸部X線検査では、損傷を受けた側の横隔膜の挙上がみられます。
  • その他、X線透視検査も行われます。

治療の方法

顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)
  • 呼吸障害に対しては必要に応じて酸素投与、人工呼吸器などの対症療法を行います。
  • 通常は自然に回復しますが、1〜3カ月ほどかかることが多いようです。
  • 回復がなければ、横隔膜を縫い縮める手術(横隔膜縫縮術(ほうしゅくじゅつ))が必要になることがあります。

分娩麻痺とはどんな病気か

  • 分娩時に顔面神経が損傷を受けたために、顔面筋の麻痺を生じるものです。

原因は何か

  • 顔面神経は脳から分岐し、頭蓋骨の、耳の前方に開いている管を通って表面へ出てきて顔面の筋肉に分布します。
  • 分娩時にとくに頭蓋骨を貫通する部分が強く圧迫を受けて神経に浮腫が生じるか、神経の断裂が起こった時に顔面神経麻痺が起こります。

症状の現れ方

  • ほとんどの場合は片方のみに起こります。
  • 麻痺を受けた側の眼が閉じられない、口が引きつり大きく開かない、麻痺を受けた側の口角からミルクをだらだらこぼすなどがみられます。
  • とくに泣いた時にはっきりします。

治療と予後

  • 通常は2〜3週間で自然に治ります。
  • その間は、閉じられないほうの眼の角膜の乾燥を防ぐために点眼を行います。
  • 神経断裂によるものは手術を行い、神経を修復する必要があります。
分娩麻痺

分娩麻痺とは、新生児が出生直後から上肢を動かさない病気です。肩にまったく力が入らず、肘を曲げずに上肢全体をだらっとさせています。重症例では手指もまったく動きませんが、軽症例では手指は動いています。 上肢を動かす神経は、大脳から脊髄を通って末梢神経となり、手に向かいます。その途中、神経は頸部から鎖骨のあたりで腕神経叢(わんしんけいそう)という複雑な神経網を形成しますが、分娩麻痺はその部分で生じる分娩外傷(分娩時に生じる外傷)のひとつと考えられています。