遺伝性球状赤血球症とはどんな病気か

 正常では円盤状の形を保っている赤血球が、赤血球膜の異常のために球状に変形してしまうことにより本来の機能が低下し、壊れやすくなってしまう(溶血(ようけつ))病気です。
 日本で発見される先天性溶血性貧血(せんてんせいようけつせいひんけつ)のなかで最も頻度が高い疾患で、人口5〜10万人に1人の頻度とされています。多くは遺伝性ですが、約30%は突然変異による弧発(こはつ)例です。

原因は何か

 赤血球膜の骨格をなす物質の遺伝的異常(バンド3やバンド4・2などの欠損)が原因であることが知られています。これらの蛋白質は赤血球の形態維持や変形機能に重要な役割を担っており、赤血球が壊れやすくなります。

症状の現れ方

 主要な症状は貧血、黄疸(おうだん)、脾臓(ひぞう)の腫大(はれ)です。学童期以降は骨髄(こつずい)での赤血球産生の亢進により代償(だいしょう)されて貧血を認めないこともあります。とくに重要なこととして、伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)(リンゴ病)の原因になるヒトパルボウイルスB19に感染すると、急激に著しい貧血(無形成発作(むけいせいほっさ)と呼ばれる)を生じることがありますので、リンゴ病の流行期には注意が必要です。
 赤血球が壊されると黄疸として現れます。約30%で新生児黄疸が強く現れ、光線療法が必要になることがあります。重症の新生児黄疸の場合には交換輸血が必要な場合もあります。また、過剰なビリルビンのため胆石が出来やすくなります。
 脾臓の腫大は乳幼児で50%、年長児で75〜95%にみられます。かぜをひいた時(ほとんどはウイルス感染症)に、脾臓の機能が亢進し溶血が盛んになることがあります(溶血発作)。

検査と診断

 正球性正色素性貧血(せいきゅうせいせいしきそせいひんけつ)、赤血球の形態観察で球状赤血球、網状赤血球の増加、黄疸(間接ビリルビン上昇)、脾腫(ひしゅ)、赤血球の浸透圧抵抗(しんとうあつていこう)の低下などを総合して診断します。可能であれば、電気泳動により膜蛋白の異常を同定します。
 なお、新生児期には形態、浸透圧抵抗ともに典型的な所見(しょけん)をとらないことも多いため、診断が難しいことがあります。

治療の方法

 無形成発作による急激な貧血の悪化や、新生児期の重度貧血などには赤血球輸血が必要になります。
 赤血球は主に脾臓で壊されていますので、脾臓を摘出(脾摘(ひてき))すると諸症状が改善します。近年では、腹腔鏡による低侵襲(体を傷つける程度が低い)の脾臓摘出術が可能になっています。ただし、脾臓は免疫(めんえき)臓器の一部であり、とくに乳幼児期は脾摘後に重症細菌感染症(じゅうしょうさいきんかんせんしょう)(とくに肺炎球菌)にかかりやすくなるため、重症例(ヘモグロビン6〜8gdl)でも6歳になるまで脾摘は待つほうが良いと思われます。ただし、頻回に輸血が必要な最重症例では、3歳以前でも脾摘を行うことがあります。
 軽症例では青年期まで待機可能な場合もあります。脾摘後の感染症予防のため、脾摘前の肺炎球菌ワクチン接種と術後のペニシリン予防内服が推奨されています。小児期を過ぎれば、重症感染症の発生頻度は少なくなります。

遺伝性球状赤血球症に気づいたらどうする

 重症例、中等症では骨髄での赤血球造血が盛んなので、葉酸(ようさん)欠乏が生じないように緑黄色野菜を多くとるなど、食事に気をつけてください。また胆石も重要な合併症ですので、定期的に超音波検査を受けることも大切です。