心臓は規則正しいリズムで収縮しています。これは図18のように洞房結節(どうぼうけっせつ)から房室結節(ぼうしつけっせつ)を通ってプルキンエ線維までの刺激伝導系で電気的刺激を心臓全体に伝えているからです。
 不整脈とは、このリズムが乱れたり、リズムが一定でもそのリズムが非常に速かったり遅かったりする場合や、リズムが正常でも刺激伝導系に異常があって、心電図の波形に変化がみられる場合も含まれます。学校検診などで偶然発見される場合は、基礎疾患がない場合がほとんどです。
 不整脈には、以下のような心配のないものと要注意のものがあります。
心配のない不整脈
(1)心房性期外収縮(しんぼうせいきがいしゅうしゅく)、心室性期外収縮(しんしつせいきがいしゅうしゅく)
 洞房結節は心臓の電気的刺激を最初に出す場所ですが、それ以外の場所から先に刺激が出て心臓全体を収縮させる場合を期外収縮といいます。その臨時の刺激が心房から出る場合を心房性期外収縮、心室から出る場合を心室性期外収縮といいます。
 期外収縮は、精神的緊張、疲労、喫煙、カフェインの摂取などで増えることがあります。どきっと動悸(どうき)を感じることが、ありますが、とくに心配はいりません。
(2)第1度および第2度房室(ぼうしつ)ブロック
 房室ブロックとは、心房から心室への電気的刺激の伝導時間が延びたり、時々その刺激が伝導しなかったりする場合をいいます。単に伝導時間が延びる場合を第1度房室ブロック、時々その刺激が心室へ伝導しなくなる場合を第2度房室ブロックといいます。
 第2度房室ブロックには、1拍ごとに伝導時間が徐々に延びていって最後に数拍に1回の割合で刺激が心室へ伝導しなくなるウェンケバッハ型と、伝導時間は延びませんが、数拍に1回、刺激が伝導しなくなるモービッツ型があります。
 後述する完全房室ブロックに移行せず、また運動により房室伝導が正常になる場合には、問題はありません。
(3)WPW症候群


 心房と心室の間は、房室結節以外の場所では弁によって電気の伝導が絶縁されているので、刺激が伝わりません。しかし、このWPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)では、図19のように心房から心室へ心筋の橋渡し(ケント束)があり、心房の刺激がわき道(バイパス)を通って早く一部の心室へ伝わります。この刺激による心室の収縮は、心電図上でデルタ波として認識されます。
 後述する発作性上室性頻拍(じょうしつせいひんぱく)を合併しない場合には、とくに運動を制限する必要はありません。
(4)右脚(うきゃく)ブロック
 右心室への刺激を伝える右脚の電気的伝導が、延長または途絶した場合を右脚ブロックといい、心電図の形の変化で診断できます。心臓に異常がない場合もありますし、先天性心疾患やその術後にみられる場合もあります。延長の程度によって、不完全右脚ブロックと完全右脚ブロックに分類しますが、左軸の偏位や房室ブロックを伴わない場合には大きな問題はありません。
(5)その他心配のない不整脈(洞性不整脈(どうせいふせいみゃく))
 洞房結節のリズム自体が不整になるものに洞性不整脈があります。これは、小児の場合にはほとんどが呼吸性で、息を吸った時に脈が速くなり、吐いた時にゆっくりになるもので異常ではありません。
要注意の不整脈
 要注意の不整脈とは、放置すれば血圧低下から心不全や失神など重い症状を来す可能性のあるものです。このなかには、リズムが持続的に速くなる頻拍(ひんぱく)と、脈が遅くなる徐脈(じょみゃく)があります。脈が速すぎても遅すぎても、心臓のポンプ機能は低下してしまいます。
 以下に、小児でみられる主なものを説明します。
(1)発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく)
 小児の頻拍では最も多いものです。心拍数が1分間に180以上になります。症状は動悸、顔面蒼白などで、失神することはまれです。持続時間は、数分から数時間以上になることもあります。安静時にも運動時にも起こりますが、個人でそれぞれ特徴がある場合もあります。
 前述したWPW症候群では、心房‐房室結節‐心室‐ケント束(そく)‐心房という電気的な回路が形成されているので、この回路を電気的刺激が持続的に伝導することで発作性上室性頻拍を合併することがあります。そのほか、房室結節のなかにこの回路をもっている場合もあります。
 息こらえや顔面を冷水につけたりすると頻拍が止まることもありますが、止まらない場合は薬剤を使用します。発作を繰り返す時は、発作予防に薬を内服しますが、それでも繰り返し現れる時はカテーテル治療を行うことがあります。
(2)心室頻拍(しんしつひんぱく)
 心室から刺激が出る頻拍症です。心室の収縮様式が大きく変わるので、頻拍中は血圧の低下によるふらつき、顔面蒼白や失神などを来すこともあります。多くは心筋症心筋炎心筋梗塞(しんきんこうそく)、先天性冠動脈(かんどうみゃく)異常など心室筋の異常に伴いますが、基礎疾患のない場合もあります。
 心室頻拍は基礎疾患の有無にかかわらず、運動中の突然死の主な原因と考えられています。治療法には、薬剤のほか、カテーテル治療などがあります。
(3)完全房室(かんぜんぼうしつ)ブロック
 第3度房室ブロックともいい、心房と心室の間の伝導が完全に途絶えた状態をいいます。この場合は、ブロックされた下の刺激伝導系から洞房結節の代わりに刺激が出て心室へ伝わりますが、1分間の心拍数が40〜50程度になり、運動でも80〜100程度にしか増えません。
 小児では、心臓手術の合併症以外では先天性のことが多く、胎児期から発見されることがあります。無症状のこともありますが、心拍数が少ない場合は疲れやすいなどの心不全症状が現れたり、失神を起こすことがあります。症状が現れる場合には、ペースメーカー植え込みが必要になります。
(4)QT延長症候群
 心電図のQT時間(心室筋が電気的に興奮している時間)が延長し、特殊な心室頻拍が現れた病歴があるか、またはその可能性のある場合をいいます。薬剤や血液の電解質の異常により起こる場合もありますが、小児の場合、多くは先天性で遺伝子の異常によるものです。
 症状としては、運動や精神的緊張などが誘引となって特殊な心室頻拍が現れます。この心室頻拍は重症で失神を伴うことが多く、時に突然死となる危険があります。また、頻度は少ないのですが、睡眠中の徐脈が心室頻拍を誘発させるタイプもあります。原因不明で、とくに運動に関連した失神を繰り返す場合には、この疾患も念頭におく必要があります。
 失神や心室性不整脈を伴うものは、β(ベータ)ブロッカー(インデラル)などの薬物治療、ペースメーカーによる治療などが行われます。