腎臓の形態異常には、さまざまな疾患が合併することが多いので、まずは正確な診断と病像の把握が必要です。そのあとは腎機能をいかに保つことができるかが重要になります。
 発見された時期や合併症の有無、異常を放置していると腎機能に悪影響を及ぼす可能性があるかなどを総合的にみて、治療が必要かどうかを判断します。

●数(かず)・大(おお)きさの異常(いじょう)
(1)両側腎無発生(りょうそくじんむはっせい)
 両側の腎臓が完全にない状態です。胎児期に尿の生成がないことから高度の羊水過少症を伴い、特有な顔つきや四肢の奇形、肺の発育不全などを生じます。
 ほぼ全例が、出生後呼吸不全で亡くなります。
(2)片側(へんそく)腎無発生
 片側の腎臓のみが完全にない状態です。反対側の腎臓が正常ならば、通常、症状が出ることはなく、一般的に治療や日常生活の制限は必要ありません。女性の場合は、比較的高率に子宮や腟といった生殖器の奇形を合併します。
(3)過剰腎(かじょうじん)
 3個以上の独立した腎臓があるもので、極めてまれです。
(4)低形成腎(ていけいせいじん)
 先天性の発育不良の腎臓で、正常な腎臓に比べてサイズが小さくなります。ネフロン(コラム)の数も少ないのですが、構造は正常で、腎臓の機能はある程度備わっています。膀胱尿管逆流(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅう)を伴うことも多くあります。
 両側の低形成腎の場合は、程度により腎不全に至ることがありますので、定期的な受診が必要です。根本的な治療法はありませんが、降圧薬に分類されるアンジオテンシン受容体拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬の内服が、腎不全の進行を遅らせる可能性が報告されています。
 一方、片側のみの低形成腎の場合は、反対側の腎臓が代償性に大きくなり、とくに症状が出ることはありません。成長後に、偶然発見されることもありますが、とくに治療は必要となりません。

●形態(けいたい)と位置(いち)の異常(いじょう)
(1)融合腎(ゆうごうじん)
 本来、体の左右に1個ずつある腎臓がつながってしまっている形態異常です。腎臓の下端が体の中心線上でつながり、馬の蹄鉄(ていてつ)に似た形態となる馬蹄腎(ばていじん)が代表的です。超音波検査やCT、腎シンチグラフィで形態の検査を行うことにより診断ができます。
 合併症がなく、無症状の場合はとくに治療は必要ありません。しかし、結合部が尿管を圧迫して尿の通過障害を起こし、そのため感染症を起こしたり、尿路結石(にょうろけっせき)が発生したり、腰痛の原因となっていたりする場合があります。このような時は、結合部の離断などの手術が必要となることがあります。
(2)変位腎(へんいじん)
 腎臓は、胎生初期に骨盤内で発生し、徐々に上昇してきて正常な腰の位置に達します。この上昇過程に異常が生じると腎臓の位置が異常となり、変位腎と呼ばれます。
 上昇が不完全な場合、腎臓が骨盤内にある骨盤腎(こつばんじん)となり、まれではありますが、上昇が過剰だと胸腔内にある胸部腎(きょうぶじん)となります。また、片側の腎臓が、体の中心線を越えて反対側に存在する場合、交差性変位腎と呼ばれます。
 変位腎の多くは無症状で、偶然発見されます。発見された場合、腎臓の血管系がどのような状態になっているかを調べることも大切です。
(3)腎下垂(じんかすい)、遊走腎(ゆうそうじん)
 腎臓は、健康な人でも息を吸った時や立った時には4〜5cm下方へ移動します。下降の程度が強く、そのためにいろいろな症状が出るものを腎下垂または遊走腎といいます。
 腎臓を支えている周囲の組織の力が弱いために生じると考えられており、一般に、やせていて体つきの細い女性に多く、大部分は右側に起こります。尿管の屈曲や腎動静脈の伸展が起こりやすく、尿流通過障害や腎盂腎炎(じんうじんえん)、尿路結石、腰痛などの症状を起こしやすくなります。
 症状がなければ治療の必要はありません。やせている人は、少し太るような食事をしたり、また、適度なスポーツなどで筋力をつけることも効果があります。

●構造(こうぞう)の異常(いじょう)(嚢胞性腎疾患(のうほうせいじんしっかん))
(1)単純性腎嚢胞(たんじゅんせいじんのうほう)
 腎臓の実質内に、1個または2〜3個の比較的大きな嚢胞ができている場合をいいます。加齢とともに発生頻度が増え、高齢者ではしばしばみられますが、小児では比較的まれです。
 無症状のまま経過することが多く、腎不全に至ることはありません。時に、嚢胞が大きくなって周囲の臓器を圧迫するような場合、また悪性化の疑いがある場合は手術をします。
(2)常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)
 両側の腎臓全体にわたって、大小さまざまな無数の嚢胞ができ、次第に大きくなってくる病気です。成人型とも呼ばれますが、小児でも診断されるため、この名称は使われなくなってきています。
 受診理由として多いのは、肉眼でわかる血尿や腰背部痛、検診で偶然発見された、家族に多発性嚢胞腎の人がいる、などです。
 嚢胞が大きくなってくると、腎機能が次第に低下して腎不全になります。すべての人が腎不全になるわけではなく、60歳で約半数の人が末期腎不全になるとされています。10代で腎不全に至る場合もありますが、透析(とうせき)が導入される平均年齢は50歳前半です。
 他の問題としては、頭蓋内出血高血圧、心臓の弁逆流を合併することがあります。また、肝嚢胞(かんのうほう)を高率に合併しますが、肝機能障害を来すことはほとんどありません。
 腹部超音波検査で、腎臓に多数の嚢胞を認めることにより診断されますが、若年者では発見されにくいこともあります。また、CT検査も有用です。
 根本的な治療法はなく、進行性の腎不全に対しては、食事療法や血圧の十分な管理が大切です。
(3)常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)多発性嚢胞腎
 幼児型と呼ばれていたもので、新生児期には高血圧や腹部の圧迫症状、腎不全の管理が極めて難しく、生後まもなく死亡することも多い病気です。長期生存できても、肝線維化による門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)や肝不全が問題となります。
(4)多嚢胞性異形成腎(たのうほうせいいけいせいじん)
 胎生期の初期の発生障害により、正常な腎臓の形成が行われず、大小多数の嚢胞がみられ、ブドウの房のような外観を示す病気です。腎臓は無機能ですが、通常は片側性のため、反対側の腎臓が正常であれば腎不全には至りません。
 胎児の超音波検査が普及し、妊娠中に発見されることが多くなってきていますが、乳児期以降に腹部腫瘤(しゅりゅう)として発見されることもあります。超音波検査やCT、腎シンチグラフィといった画像検査で診断を確定し、腎盂(じんう)造影や膀胱造影などにより、反対側の腎臓の合併症の有無を調べます。
 他の臓器への圧迫症状や悪性化の所見がなければ、腎臓摘出を行うことなく、画像検査で経過を観察するのが一般的です。成長とともに、嚢胞は小さくなることも多く、20〜30%は自然に消失します。
(5)海綿腎(かいめんじん)
 腎臓の集合管が嚢胞状に拡張する先天性の病気で、嚢胞内に尿が停滞するためにしばしば尿路感染症や腎結石、血尿で発見されます。成人に多く、大半が両側性に生じます。
 特定の治療法はなく、軽症例は経過の観察となります。