先天性股関節脱臼とはどんな病気か

 先天性股関節脱臼とは、出生時または生後数カ月の間に、大腿骨の骨頭が寛骨臼(かんこつきゅう)から脱臼した状態を指します。完全脱臼だけでなく亜脱臼も含めることが多い傾向にあります。「先天性」という名称に反し、出生時すでに脱臼が完成していることは少なく、むしろ出生後、徐々に骨頭が転位し脱臼へと進んでゆくことが多いです。

原因は何か

 先天性股関節脱臼の原因は複数あります。出生前要因として骨盤位(こつばんい)(とくに単殿位(たんでんい))、双角(そうかく)子宮、子宮筋腫(きんしゅ)、多胎(たたい)、羊水過小などが関与しており、胎児の不良肢位が発症につながると考えられます。またこのほかに遺伝的要因、臼蓋(きゅうがい)が浅いこと、関節が緩いことも原因となりうることが指摘されています。
 一方、出生後要因として窮屈なおむつ(巻きおしめ)、厚着、抱き方(横抱き)などがあげられています。これらは乳児の下肢を伸ばした状態で強制固定することにより、脱臼を発生させると推定されています。事実、日本では1970年代の予防活動により、発生頻度が2%から0・1〜0・2%へと激減しました。

症状の現れ方

 先天性股関節脱臼が放置されたり、治療がうまくいかない場合は、歩行の発達が遅れ、歩行開始後には跛行(はこう)(片足が正常に動かず、引きずるように歩くこと)が顕著になります。加齢とともに変形性股関節症が進行し、人工関節手術に至る例も少なくありません。

検査と診断

 新生児・乳児においては、医師が視診で下肢の動き、皮膚のしわ、角度、長さの左右差、触診で股関節の開排(外側へ広げる)制限やクリック(骨頭が寛骨臼内に戻された時の音)を認めることにより診断され、乳児健診における重要なチェック項目になっています。
 股関節脱臼の疑いが強い時は、整形外科専門医による経過観察が行われます。補助診断としてはX線検査や超音波検査が行われます。年長児では、腰椎前弯(ようついぜんわん)の増強、跛行、トレンデレンブルグ徴候(患側の下肢で立った時、骨盤が健側に沈下する現象)がみられます。

治療の方法



 先天性股関節脱臼の治療法として、まず生後3〜4カ月からリーメンビューゲルという装具を装用します(図30)。乳児期には約80%がリーメンビューゲルにより自然整復されます。整復率は亜脱臼ではきわめて高く、完全脱臼では半分程度に下がります。残る20%弱の症例では、乳児期後半に手による整復が、多くは全身麻酔下で行われます。それでも整復されなかった症例には、幼児期に手術(ルドルフ法など)が行われます。手による整復や手術のあとにはギプス固定が行われます。しかし術後に骨頭壊死(えし)を生じやすいことなど、治療には困難が多く、再手術がしばしば行われます。

先天性股関節脱臼に気づいたらどうする

 先天性股関節脱臼が疑われたら、小児の整形外科専門医の診察を受け、おむつの当て方、抱き方、リーメンビューゲルの装用法などについて指導を受けます。