溶血性貧血とはどんな病気か

  • 赤血球が何らかの原因で破壊され(溶血)、本来の赤血球の寿命よりも短くなることによって、貧血と黄疸(おうだん)が主な症状として現れる病気です。
  • 大きく先天性と後天性に分けられます。
  • 先天性の代表として遺伝性球状赤血球症を、後天性の代表として自己免疫性溶血性貧血(じこめんえきせいようけつせいひんけつ)について解説します。
  • 表12 溶血性貧血の診断基準
  • 症状、検査、診断のあらましは、厚生省(当時)研究班の診断基準(表12)が参考になります。
  • 遺伝性球状赤血球症(いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう)

溶血性貧血とはどんな病気か

  • 先天性溶血性貧血(せんてんせいようけつせいひんけつ)で、日本の先天性溶血性貧血のうちでは最もよくみられるものです。

原因は何か

  • 赤血球膜の蛋白に異常があります。
  • そのために、正常の赤血球のように中央がくぼんだ穴のあいていないドーナツ状の形を維持できずに、球状となってしまいます。
  • 基本的には常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)の形式をとります。

症状の現れ方

表8 貧血の症状
  • 病的赤血球の破壊が亢進しても、その程度が軽ければ、骨髄(こつずい)の過形成によってカバーされて貧血の症状(表8)が出ないこともあります。

検査と診断

  • 溶血の亢進と、代償性の赤血球系造血亢進(ぞうけつこうしん)の2つについて検査を進めます。
  • 溶血があれば、血清中の間接型ビリルビンが上昇し、尿中ウロビリノーゲンが高値になります。
  • 血清ハプトグロビンは軽い溶血があるだけで低下します。
  • アイソトープで目印をつけた赤血球を使用して、赤血球寿命の短縮が確かめられれば決定的です。
  • 造血亢進は、骨髄穿刺(こつずいせんし)(針を刺して採取する)によって確認されます。
  • 末梢血では若い赤血球(網赤血球(もうせっけっきゅう))の増加がみられます。
  • 溶血性疾患のうち先天性球状赤血球であることを診断するには、末梢血の赤血球像が必須です。
  • 顕微鏡で球状赤血球をみれば診断がつきます。
  • 補助的には食塩水浸透圧(しんとうあつ)抵抗試験が有用です。

治療の方法

自己免疫性溶血性貧血(じこめんえきせいようけつせいひんけつ)
表13 血清ビリルビン値と治療
  • 新生児黄疸(しんせいじおうだん)がまず問題となります。
  • 表13に大まかな方針を示します。
  • 交換輸血か光線療法(中波長の紫外線を照射する)を行います。
  • 次に脾臓摘出(ひぞうてきしゅつ)ですが、これは学齢期に入るまで原則としては行いません。

溶血性貧血とはどんな病気か

  • 後天性溶血性貧血(こうてんせいようけつせいひんけつ)の代表格で、抗赤血球自己抗体によって赤血球が破壊されて起こります。
  • 抗体の免疫学的性状によって大きく温式(おんしき)と冷式(れいしき)に分かれます。

原因は何か

  • 先行する感染(ウイルス、マイコプラズマ)、膠原病(こうげんびょう)、悪性腫瘍、薬物などが原因になります。

症状の現れ方

  • 貧血、黄疸(おうだん)、脾腫(ひしゅ)に加えて、血小板減少を伴う病態もあります(エバンス症候群)。
  • 基礎疾患の症状も伴います。
  • 冷式抗体による寒冷凝集素症(かんれいぎょうしゅうそしょう)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症では、寒さにあたると溶血が悪化することがあります。

検査と診断

図37 自己免疫性溶血性貧血の診断手順
  • 貧血、高ビリルビン血症のほかに、クームス試験陽性、血清寒冷凝集素価上昇、ドナス・ランドスタイナー抗体陽性が問題になります(図37)。

治療の方法

  • 診断を確実にしたあとで、ステロイド療法、脾臓摘出(ひぞうてきしゅつ)、免疫抑制薬の使用が考えられます。
溶血性貧血

ヒトの赤血球には約120日の寿命があります。この寿命が異常に短縮した状態を、溶血と呼びます。赤血球の寿命が短くなっても、ヒトの骨髄(こつずい)では普通の状態の6〜8倍、赤血球を作る能力があるため、その程度が軽い場合には貧血は起こりません。赤血球の寿命が15〜20日より短くなって、初めて貧血が起こります。 溶血性貧血は、先天性のものと後天性のものとに分けられます。先天性では、赤血球そのものの異常が溶血の原因ですが、後天性の溶血性貧血は、発作性夜間血色素尿症(ほっさせいやかんけっしきそにょうしょう)などの一部を除いて、赤血球に対する抗体や、血管壁の異常などの赤血球以外の異常によって起こります。