播種性血管内凝固症候群(DIC)とはどんな病気か
- さまざまな基礎疾患に伴い、血管内での血液凝固の亢進(こうしん)による全身の小血管での微小血栓の形成、その過程における血小板や凝固因子の消費と二次線溶亢進(せんようこうしん)(凝血を溶かす)による出血傾向および、微小血栓による虚血性(きょけつせい)臓器障害を示す病態の総称です。
播種性血管内凝固症候群(DIC)の原因は何か
- さまざまな基礎疾患に伴い、組織因子(血液内皮下などに存在し、外因系凝固反応を開始する因子)の循環血液中への過剰な出現と、血管内皮細胞障害を原因として発症します。
- 小児では白血病(はっけつびょう)などの血液造血器の腫瘍、敗血症(はいけつしょう)などの重症の感染症、新生児仮死や呼吸窮迫(きゅうはく)症候群などの新生児疾患に伴う場合が多いと報告されています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)の症状の現れ方
- 白血病(とくに急性前骨髄性(ぜんこつずいせい)白血病)を基礎疾患とした場合は線溶亢進型DICと呼ばれ、出血症状が著しくなります。
- これに対して敗血症などに合併した場合は、血管内皮細胞障害が優勢で形成された微小血栓が溶けにくく、線溶抑制型DICと呼ばれ、さまざまな程度の臓器不全症状が生じます。
播種性血管内凝固症候群(DIC)の検査と診断

- 基礎疾患があり出血症状や臓器不全症状、ショック症状が認められる場合には、DICを念頭においた血液凝固系の検査が必要です。
- 1988年の厚生省(当時)の診断基準、血小板数とFDP値(フィブリン分解産物)を重視した松田試案(表15)、新生児のDIC診断基準を参考に診断されます。
播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療方法
- 基礎疾患の治療を行うとともに、DICが疑われれば早期に以下のような治療を病態に応じて行います。
- (1)蛋白分解酵素阻害薬
- メシル酸ガベキサートやメシル酸ナファモスタットなどの蛋白分解酵素阻害薬は、抗凝固作用と抗線溶作用を併せもち、日本では第一選択として用いられることが多いです。
- (2)ヘパリン
- アンチトロンビンIIIと結合して抗凝固作用を示します。
- (3)アンチトロンビン濃縮製剤
- 抗凝固作用と、比較的大量に投与された場合は抗炎症作用もあるとされています。
- (4)補充療法
- 血小板や新鮮凍結血漿(けっしょう)の補充を適宜行います。
播種性血管内凝固症候群(DIC)
播種性血管内凝固症候群とは、さまざまな重症の基礎疾患により、血栓が多発して臓器不全、出血傾向のみられる予後不良の病気です。 播種性血管内凝固症候群(DIC)についてくわしく解説します。