敗血症とはどんな病気か

 種々の侵襲(しんしゅう)に対して、炎症を引き起こす化学物質(炎症性サイトカイン)が生体内で連鎖的に放出されることにより全身性の炎症反応が生じることがあります。近年、このような状態を全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ぶようになりました。敗血症とは、細菌をはじめとする種々の病原体による感染により起きたSIRSと捉えられています。

原因は何か(なりやすい人)

 健康な人がいきなり敗血症になることはありません。人間は、常に細菌などの病原微生物の攻撃を受けていますが、免疫のはたらきで、その侵入を防いでいます。たとえば、抜歯のあとには血中に高い頻度で細菌が侵入しますが、細菌は白血球に貪食(どんしょく)されるため、健康な人では一過性の現象で何ら症状はみられません。このように、血液中に細菌が検出されても無症状の場合を、菌血症(きんけつしょう)と呼びます。生後3カ月から3歳までの高熱のある小児では、菌血症の状態が一時的に生じている(潜在性菌血症)リスクが数%あるとされています。


 しかし、毒力の強い細菌の感染が起こり、十分な治療がなされなかった場合や免疫力の低下した状態などでは、細菌が持続的に血液中に侵入し、敗血症が起こります。敗血症を起こすリスクの高い病態を表22に、血液から細菌が検出されることが多い疾患とその主な原因菌を表23に示しました。

症状とその進行(図51

 原発の感染病巣の症状に加え、病原体の全身的な侵入に対し、生体の反応として、(1)発熱(38℃を超える)あるいは低体温(36℃未満)、(2)頻脈(ひんみゃく)(90回分以上)、(3)多呼吸(20回分以上)、(4)白血球数増多(12000μl以上)あるいは減少(4000μl未満)がみられ、このうちの2つ以上を満たす場合が全身性炎症反応症候群と定義されています。カッコ内は成人の基準値で、小児では深部体温が38・5℃を超える、あるいは36・0℃未満、脈拍、呼吸数、白血球数は年齢により正常値が異なることを考慮して判定します。
 治療の効果が十分でないと、重症敗血症、敗血症性ショック、さらには多臓器不全(たぞうきふぜん)症候群に進み、死に至ることがあります。

検査と診断

 最も重要な検査は、血液からの病原体の検出です。原疾患の病巣からの細菌培養や、各種のカテーテルの先端の培養結果も参考にします。白血球増加(時に減少)、CRP陽性、赤沈亢進などが認められ、血中にエンドトキシン(細菌毒素の一種)が検出されることもあります。

治療の方法

 原因病原体に効果のある薬剤(抗菌薬・抗真菌薬など)を強力に投与し、原疾患に対する治療と併行して、循環・呼吸動態を安定させるために補液、電解質補正、昇圧薬投与、酸素投与、人工呼吸が行われます。血漿(けっしょう)交換、交換輸血が行われる場合もあります。栄養状態の改善も重要です。
 敗血症性ショックの死亡率は、原疾患、基礎疾患の有無、年齢、栄養状態により異なりますが、40〜60%とされ、多臓器不全症候群に進むと、さらに死亡率が高くなります。