老年期精神病<お年寄りの病気>の診断と治療の方法

 老年期精神病に対する治療の中心は、抗精神病薬による薬物療法です。薬物代謝能力が低下している高齢者では副作用が生じやすいため、できるだけ少量から始めることが基本です。主な副作用としては、表情が乏しくなる、体の動きがぎこちなくなるなどの錐体外路(すいたいがいろ)症状や起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)などがあります。
 近年、より副作用の少ない非定型抗精神病薬(ひていけいこうせいしんびょうやく)と呼ばれる薬が登場し、高齢者に対しても第一選択薬として使われるようになっています。リスペリドン(リスパダール)、クエチアピン(セロクエル)、ペロスピロン(ルーラン)、オランザピン(ジプレキサ)、アリピプラゾール(エビリファイ)などといった薬物がこれに相当します。ただし、これらの薬物は血糖値上昇を来すことがあり、クエチアピン、オランザピンは、糖尿病(とうにょうびょう)や糖尿病の既往がある方には禁忌(きんき)になりますので、注意が必要です。
 幻覚・妄想への対応は、頭ごなしに否定もしないし、といって同調もしないということが基本です。訴えの真偽に焦点をあてるのではなく、本人が感じている不安やよりどころのなさに共感をもって耳を傾ける必要があります。本人自身には病気という自覚が乏しく、自ら病院を訪れたり薬物療法を希望したりすることが少ないため、医療に結びつけるためには、本人とそれを取りまく家族、知人、医療者との間にしっかりとした信頼関係を築くことが重要です。また、社会的孤立状況や経済状況の悪化も発症要因になりますので、家族との同居や老人ホームへの入所、ヘルパー導入などといった環境調整が有効な場合もあります。