高齢者での特殊事情

 呼吸不全とは、動脈の酸素濃度がとても低くなっている状態です。大きく急性呼吸不全と慢性呼吸不全に分けられます。高齢者の場合に注意すべき点を記載します。
 呼吸不全かどうか調べるには、動脈血液ガス検査やパルスオキシメーターで酸素濃度が下がっているか見ます。息苦しいかどうかも重要ですが、高齢者の場合は症状が少ないことも多く、診察してもどこが悪いのかはっきりしないこともよくあります。肺炎などで急性呼吸不全になると呼吸の回数が増えたり脈が速くなったりしますが、意識障害が最初に出ることもあって、注意が必要です。身体の機能が全体的に衰えてきていることから、肺炎などですぐに呼吸不全になることも多いです。
 慢性呼吸不全の原因も、若者とはやや異なります。高齢者では肺がん、肺気腫(はいきしゅ)や慢性気管支炎(きかんしえん)といった慢性閉塞性肺疾患(へいそくせいはいしっかん) (COPD)、肺炎の割合が高くなります。そのため、呼吸機能検査や胸部X線撮影、採血などの検査で原因を調べることが必要です。心臓など他の病気を合併していることもあり、原因が分かりにくくなっていることもあります。
 以上のことから、息苦しさや呼吸や脈がいつもと違ったら、呼吸不全を疑ってすぐ医療機関を受診しましょう。動脈の酸素濃度を調べるとともに、呼吸器のみにとらわれず、心臓など他の病気の検査も行い、原因を見つけることが大事です。

治療とケアのポイント

 急性呼吸不全、あるいは慢性呼吸不全が急激に悪化した場合、息苦しさなどの自覚症状がなく、周囲からみても体調の悪さが分からないことがよくあります。このため、受診した時にはすでに原因となっている病気や呼吸不全が重症になっていることが少なくありません。
 咳(せき)や痰(たん)、発熱などで肺炎が疑われる場合や、息苦しさが強くなってきた時はもちろんのこと、急に元気がなくなる、食欲が減るといった状態の変化も、呼吸不全を見つけるのに重要です。早く治療を始めるためにも、“いつもと何か違う”と感じたらすぐ医療機関に行き、医師の診察を受けることが大事です。
 COPD肺結核後遺症(はいけっかくこういしょう)などの病気がもともとあって慢性呼吸不全である場合、禁煙、薬物治療、肺炎などを防ぐワクチンの接種、在宅酸素療法、呼吸リハビリテーションなど症状を改善する方法がいくつもあります。具体的な治療方法について、患者さん側から担当医の意見を率直にたずねてみたり、それぞれの病気の専門的な医療機関を受診することも重要かと思われます。

その他の重要事項

 慢性呼吸不全において、呼吸機能を保つことは大事で、高齢者の場合も禁煙がとても重要であることを付け加えます。