高齢者での特殊事情

 血圧は一般に年齢とともに高くなるといわれていますが、高齢者においても14090mmHg以上を高血圧としています。この定義によると、高齢者の3分の2以上が高血圧であり、ありふれた病気といえますが、脳卒中(のうそっちゅう)や認知症(にんちしょう)、さらに寝たきりの原因となっているため、高齢者においてもその予防、治療、管理は極めて重要です。
 高齢者の高血圧動脈硬化の進展、とくに血管の弾力性の低下が基盤にあり、若壮年期の本態性(ほんたいせい)高血圧とは異なる特徴があります。
(1)収縮期高血圧と脈圧の開大
 加齢とともに収縮期(しゅうしゅくき)血圧(最高血圧)が上昇し、血管が硬くなるので拡張期(かくちょうき)血圧(最低血圧)が低くなり、脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)が大きくなります。これら収縮期血圧と脈圧の上昇は心血管病の危険因子として重要であることが知られています。
(2)血圧が動揺性で起立性低血圧を起しやすい
 血圧の調節機構のはたらきが悪くなり、血圧が変化しやすく、とくに立ち上がり時に血圧が下がったり、食後血圧が低下することがあります。1日のなかでも血圧は変化しやすく、早朝高血圧の頻度も高いといえます。一方、夜間就寝中の血圧は一般には低下しますが、高齢者では非降圧型が増え、この場合、脳、心臓、腎臓の合併症を伴いやすくなります。家庭で測定した血圧は低いのに、診察時には著しく上昇する白衣高血圧(はくいこうけつあつ)も多くみられます。

治療とケアのポイント

 血圧は動揺性のため、診断にあたっては日を変えて何回か測定(通常3回)する必要があります。家庭での血圧の測定は大変参考となるので、医師に報告してください。難治性の場合、動脈硬化による腎血管性高血圧(じんけっかんせいこうけつあつ)の疑いがあります。
 治療は非薬物療法と降圧療法からなります。とくに150mmHgまでは減塩、運動など非薬物療法が中心です。しかし、これのみで140mmHgに下がらない場合は降圧薬療法を行います。降圧目標は最終的には14090mmHg未満としますが、高齢者の場合、脳血流、冠血流など主要臓器の血流が障害されている場合が多いので、ゆっくり降圧を図ることが重要です。70代後半以上では中間的な降圧目標として150mmHg未満とし、しばらく様子をみた後、めまいや、立ちくらみなど障害がみられなければ最終的に140mmHgを目指します。


 降圧薬はカルシウム(Ca)拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、および少量の利尿薬を第一選択薬とし、降圧効果が不十分な場合は併用療法(図9)を行います。高齢者では合併症をもっている場合が多く、合併症に応じて患者さん個々に最適な薬剤が選択されます(表6)。