閉塞性動脈硬化症<お年寄りの病気>の診断と治療の方法


フォンテイン分類I、II度
 この段階では、基本的には薬物治療が主体になります。まず、高血圧糖尿病、高コレステロール血症を適切な指導と薬剤で十分にコントロールします。とくに禁煙は絶対に守ってください。
 薬剤は、抗血小板薬の投与、抗血小板作用と血管拡張作用を併せもつプロスタグランジン製剤の投与が中心です。高血圧の患者さんでは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、α(アルファ)遮断薬など下肢の血管拡張の効果も期待できる降圧薬を用いますが、末梢血管を収縮させるβ(ベータ)遮断薬は基本的に禁忌(きんき)で、やむをえない場合にはαβ遮断薬を用います。
 重度の間欠性跛行(かんけつせいはこう)があり、薬物治療が十分にできない患者さんや、日常の活動性の高い患者さんの場合は、血管形成術、外科的治療も検討します。間欠性跛行とは、歩くと脚が痛み、しばらく休むと痛みがなくなるという状態です。また、糖尿病の悪化、外傷、感染を契機に容易に虚血性潰瘍(きょけつせいかいよう)に陥ることがあるので注意してください。

フォンテイン分類III、IV度
 この段階の血行不良が進んだ重症虚血肢では、薬物治療を継続しながら積極的に血管内治療、バイパス手術を考慮します。
 重症虚血肢では、痛みのコントロールも極めて重要なポイントです。非ステロイド性抗炎症薬では効果がみられない場合は、麻薬や痛みの神経を遮断する硬膜外(こうまくがい)ブロックを行う場合もあります。血液循環が著しく低下した虚血部位が比較的末梢に限られる場合は、交感神経ブロックも有効です。
 しかし、血行再建術ができない時や非成功例で、その痛みが非常に強い場合は、下肢切断をせざるをえないのが現状です。TASCに掲載されている重症虚血肢治療のフローチャートを図10に示します。
 現在の治療では治りにくい重症虚血肢の患者さんに対しては、血管新生因子を用いた閉塞性動脈硬化症に対する多くの遺伝子治療(再生治療)が、すでに欧米を中心に臨床治験として実施されています。
 患部血管付近への内皮細胞増殖因子VEGF、FGFの遺伝子導入による血管新生療法(血管再生療法)ではその効果も報告され、日本でも血管新生因子HGF遺伝子を用いた血管新生療法の臨床研究が行われています。また、骨髄液(こつずいえき)から抽出した単核球(たんかくきゅう)細胞(幹(かん)細胞)移植による血管新生療法も行われており、臨床研究では内皮前駆細胞による血管新生の効果が報告されています。
 今後、このような先進医療が重症虚血肢の新しい治療法のひとつとなる可能性も出てきており、体への負担が少ない治療法として、とくに高齢者への応用が期待されています。