内視鏡の発達に伴い、ポリープ切除術だけでなく内視鏡的粘膜切除術(EMR)が胃や大腸の疾患に対して広く行われるようになりました。
 また、腹腔鏡下手術は、消化器疾患領域では胆嚢(たんのう)摘出術が最も早く世界中に広まりました。それ以後、技術の熟練とともに腹腔鏡補助下大腸切除術や腹腔鏡補助下幽門側(ゆうもんそく)胃切除術など、消化管の手術が行われ徐々に浸透し始めています。腹腔鏡下手術はさらに腸閉塞(ちょうへいそく)に対する手術、虫垂(ちゅうすい)切除術、肝切除術、膵(すい)切除術など広がりをみせています
(1)胆石症(たんせきしょう)、胆嚢炎(たんのうえん)
 胆石症胆嚢炎の手術適応については、消化器疾患の手術適応の項にあげたとおりです。原則的には症状がある場合にのみ適応となります。高齢者では症状の軽い例や頻度の少ない例では経過観察される場合も少なくありません。
 高齢者における腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応もほとんど同じです。上腹部手術の既往のある患者さん、高度の炎症や線維化のみられる患者さんに対しては原則的に開腹術が行われます。
 胆嚢結石に総胆管結石が合併している場合には、まず内視鏡的乳頭括約筋(にゅうとうかつやくきん)切開術(EST)を行い、経乳頭的に胆管結石を除去したのちに、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。ファーター乳頭部を切開することは乳頭機能の廃絶や障害を意味するため、非高齢者では慎重に選択するべきですが、高齢者については一般的に乳頭切開術が第一に行われます。胃切除・ビルロートII法再建などの既往がありESTが施行できない胆管結石の患者さんには、開腹して胆管切開・切石、T‐チューブドレナージを行います。
 状態の悪い患者さんや90歳を超える超高齢者には、胆石がある慢性胆嚢炎やその急性増悪に対して、経皮経肝胆嚢ドレナージ術で炎症を抑えれば十分なことがあります。炎症がおさまったら胆嚢摘出術などはしないで、そのままドレナージチューブを抜去すればよい場合が少なくありません。
(2)大腸の内視鏡および腹腔鏡下手術
 主に早期がんに対して行われます。早期大腸がんのリンパ節転移の危険因子は(1)粘膜下層を中等度以上超えたがん浸潤(しんじゅん)、(2)中〜低分化腺がん、(3)脈管侵襲(みゃくかんしんしゅう)陽性、(4)がん先進部がパラパラと散らばって存在していること、です。
 大腸の内視鏡的ポリープ切除術は、隆起型および表面隆起型のポリープに対して行われます。EMRは脈管侵襲のないm〜sm1(粘膜内がん〜わずかな粘膜下層浸潤がん)が適応となります。肉眼的には表面型から陥凹(かんおう)型を示します。
 腹腔鏡補助下大腸切除術の適応は、EMRの適応外およびEMRの困難な症例、深達度が粘膜下層への500μm以下のわずかな浸潤であるものの、脈管侵襲陽性例(リンパ管浸潤+、静脈浸潤+)、および深達度が500μm以上であるsm2以上の早期がん症例とすることが一般的です。しかし腹腔鏡補助下大腸切除術の適応を、進行がんや直腸がんに対する低位前方切除術にまで拡大している施設もあります。


 山形大学消化器・乳腺甲状腺・一般外科における腹腔鏡補助下大腸切除例の術後の経過をみると、排ガスまでの期間や経口摂取開始時期は開腹手術に比べ腹腔鏡補助下の手術で短い傾向にあり、在院日数も短く、とくに高齢者で顕著に認められました(表19)。このことは腹腔鏡補助下大腸切除術が、高齢者における有用な大腸手術術式のひとつであることを示しています。
(3)胃の内視鏡および腹腔鏡下手術
 胃がんにおけるEMRの適応は、リンパ節転移がなく、腫瘍が一括切除できる大きさで、一括切除できる部位にあること、具体的には2・0cm以下の肉眼的粘膜がんと診断される病変で、組織型が分化型であるもの、また肉眼的に陥凹を有する場合は潰瘍を伴わないことです。
 腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG)の適応は、胃の中部から下部に存在するがんで、EMRの適応にならず、がん湿潤がsm1にとどまる早期胃がんです。なお、根治性よりも安全性や生活の質(QOL)を重視せざるをえない高齢者では、この適応は臨機応変に拡大されます。
 がんが比較的高い位置にある場合は、腹腔鏡補助下幽門輪温存胃切除術(LAPPG)が適応となる場合があります。