検査と診断

 妊婦健診では通常、初期にSTS(梅毒血清反応の一種)のうち、ガラス板法・RPR法のいずれかが行われます。STSは妊娠、膠原病(こうげんびょう)などで時に偽陽性となることがあります。陽性であればTPHA定量を行い、それが陽性であれば梅毒と診断され、STS定量とTPHA定量との値により、治療の必要の有無を判定します。
 陰性であれば梅毒ではなく生物学的偽陽性(ぎようせい)と診断され、妊娠自体による影響と考えられるので治療の必要は全くありません。ただし、感染の初期にはSTSが陽性でTPHAが陰性となるので、感染が疑われる場合には2〜3週間後に再度TPHA定量を行い、そこで陽性であれば感染したと判断します。

治療の方法

 ペニシリン(アンピシリン、アモキシリンなど)の内服4週間を1コースとして治療します。ペニシリンが使用できない妊婦には、アセチルスピラマイシンを妊娠中期以降安全な時期に使用します。 治療効果判定は、STSを定量して抗体価の低下を目安とし、抗体価が低下または陰性化すれば治癒と判定されますが、TPHA抗体価は治療効果の指標とはなりません。分画TPHA(IgM‐TPHA)は、病原菌である梅毒トレポネーマの活動性の正確な指標となる検査で、これが陰性であれば梅毒は治癒したと判断されます。

梅毒の母子感染

 母子感染は梅毒トレポネーマの経胎盤感染が主で、妊娠に与える影響としては流早産、子宮内胎児死亡、子宮内胎児発育不全などがあります。出生児への影響としては、早発性と遅発性のものがあります。早発性先天梅毒は生後数週から2、3カ月で発症し、骨病変(骨膜炎(こつまくえん)、骨髄炎(こつずいえん)など)、鼻炎、皮疹、髄膜炎(ずいまくえん)などを呈します。遅発性先天梅毒は7〜14歳で発症し、歯の異常、実質性角膜炎難聴、皮膚異常(扁平コンジローマ、ゴム腫)、中枢神経障害を呈します。
 出生時に臍帯血(さいたいけつ)中のIgM‐TPHAを検査し、陽性であれば感染したと診断します。児の先天感染がなくても、臍帯血中のSTSとTPHA定量は母体血とほぼ同様の値となりますが、出生後1カ月ごとに半減するので、その推移をみることによって先天感染がないことを診断できます。
 先天感染が診断されれば、ペニシリンによる治療を開始します。