薬物依存<こころの病気>の症状の現れ方

 薬物依存でみられる症状としては、(1)乱用時の急性中毒症状、(2)精神依存の表現である薬物探索行動と強迫的な薬物使用パターンなど、(3)身体依存の表現である各薬物に特有な離脱症状(禁断(きんだん)症状)、さらに薬物の慢性使用による(4)身体障害の症状と(5)精神障害の症状があります。このうち、主な薬物にみられる(1)と(3)の主要症状は、表7にまとめてあります。
 何とかして薬物を入手するための行動を「薬物探索行動」といいますが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬の依存では、指示された以上に服用するために、薬をバスに忘れたとか落としてしまったと嘘をついたり、同時に複数の医療機関に受診すること(ドクターショッピング)がみられたりします。有機溶剤や覚せい剤の依存では、多額の借金をしたり、万引き・恐喝・売春・薬物密売などの事件を起こすこともしばしばあります。
 日本で流行している乱用薬物では、比較的高率に幻視(げんし)・幻聴(げんちょう)・身体幻覚(しんたいげんかく)や被害関係妄想(もうそう)、嫉妬(しっと)妄想などを主体とする中毒性精神病を合併し、まともな判断ができないために、自殺しようとしたり、傷害・殺人などの凶暴な事件にもつながりやすいのです。

薬物依存<こころの病気>の診断と治療の方法

 中毒性精神病が発病していれば、まず精神科病院に入院して、依存対象の薬物から隔離(かくり)・禁断することと、幻覚・妄想などの精神病症状を抗精神病薬によって治療することが必要です。本人が承諾しない時は、家族の依頼と精神保健指定医の診断によって医療保護入院で対応します。中毒性精神病を合併しない場合では、できるだけ本人から治療意欲を引き出して、任意入院で対応するのが原則です。
 薬物依存の治療には、認知行動療法が有効です。
 薬物依存者の薬物中心の生活に巻き込まれ、イネイブラーの役割を演じている家族などが、自分の行っている余計な支援にきちんと限界を設けて、薬物依存の過程でみられる各種の問題の責任を依存者自身に引き受けさせるようにしていけば、依存者は「底付(そこつ)き体験」をすることによって断薬を決意します。底付き体験とは、社会の底辺にまで身をおとすということではなく、自分の本来あるべき姿(同級生の現状で代表される)と現在の自分の姿を比較するなどして、このままではどうしようもないと自覚することをいいます。
 さらに、断薬継続のためには、NA(ナルコティクス・アノニマス)などの自助グループのミーティングに参加することが有効です。