てんかんとはどんな病気か

 てんかんは大脳の病気です。発作的に繰り返し、自律的に大脳が異常に興奮する状態をてんかんと呼びます。
 そのため、1回きりの発作や熱性けいれんは、てんかんとは呼びません。また、交通事故からの回復期(ほぼ事故後1週間以内)に限って起こる発作や、脳の手術や脳炎の急性期に起こる発作も、てんかんとは呼びません。
 脳が急性期から回復し、安定してからも繰り返し発作的に異常に興奮する状態が起こる場合に初めて、てんかんという言葉が当てはまる可能性が出てきます。

原因は何か

 交通事故で強く頭を打ったあとで、てんかんが起こることがあることからも明らかなように、脳が受けた何らかの傷がてんかんの元になる場合が多くあります。
 ただし、脳に傷があるからといっててんかんが必ず起きるわけではありません。むしろ、この傷をカバーして機能を回復させようとする脳の試みが、もともとはわずかな漏電を大規模な異常放電に最終的にはつなげるような結果をもたらすことがあります。
 てんかんの本体は、傷のまわりにできた一種の電気回路なので、解剖しても肉眼的には確認できないこともあります。この電気回路は、電気が流れれば流れるほど太い回路に成長する傾向があり、逆にまったく使用されなければ、なくなってしまう可能性もあります。

症状の現れ方



 てんかんには大きく分けて、発作の開始時に脳の両側からてんかん性の興奮が出現する「全般てんかん」と、発作は傷の周囲の特定の電気回路から始まる「部分てんかん」の2つがあります(図2)。
 ムカムカする、光が見えるといった数秒から数分の前兆や、手や顔面の片側が、意識がなくなる前にけいれんするといった症状がある場合、また、けいれんしたあとで半身の麻痺(まひ)が残るような場合には、部分てんかんと考えられますが、こうした症状がなく急に意識がなくなったからといって、全般てんかんと決めつけることはできません。
 意識が急になくなっていても、しばらく口をムニャムニャさせたあとで意識がないのに動き回るような場合には、局在関連てんかんの可能性が高く、見分けるためには専門医の問診が必要です。


 図3のように部分てんかんはさらに2つに、全般てんかんもさらに2つの種類に分かれます。
 発症年齢が乳児期・幼児期の場合には、比較的難治のてんかん性脳症の場合もありますが、発症年齢が学童期以降の場合には、発作の寛解(かんかい)(和らぐ)率が高く、予後のよい特発性(とくはつせい)全般てんかんの可能性が大きくなります。
 部分てんかんのなかでも、幼児期から学童前期にかけて、とくに夜間睡眠時に発作が起こる特発性部分てんかんは、成人すれば自然に治る極めて予後がよいてんかんなので、安心のためにも診断をきちんとつけておいてもらう必要があります。

検査と診断

 脳波とMRIが最も大切な検査ですが、脳波でもMRIでも異常が認められないてんかんも少なくはなく、逆にてんかん性の脳波が出ていても、てんかんではない人もいます。脳波とMRIの所見は、あくまでも問診で推定された病像との組み合わせで意味をもつものだと承知しておく必要があります。

治療の方法

 非常に大雑把には、部分てんかんに関してはカルバマゼピン(テグレトール)、全般てんかんにはバルプロ酸(デパケン)が第一選択薬になります。その次にどうするかは、専門医と相談しながら考えていく必要があります。
 カルバマゼピンは、薬疹(やくしん)と関連した重い副作用が出現する可能性があること、バルプロ酸は他の抗てんかん薬よりも催奇性(さいきせい)(胎児に奇形を起こすこと)が高いことなど薬の副作用をよく聞いてから、治療薬を選択する必要があります。


 症状の現れ方の項であげたてんかん類型によって、予後には大きな違いがあります。1996年までの、私が治療した患者さんでの1年寛解率を図4に示します。難しい症例が比較的集まりやすい施設での数値なので、実際にはこれよりは治りやすいと考えてよいと思います。

てんかんに気づいたらどうする

 てんかんを疑った場合、小児であれば小児科にかかるべきです。多くの小児科の医師は、てんかんに関して少なくとも基本的なトレーニングは積んでいます。
 成人の場合には、専門医は神経内科、精神科、脳神経外科に散らばっており、患者さん側からてんかん診療のトレーニングを積んでいる医師かどうかの判断をすることは困難です。むしろ、信頼するかかりつけ医に、誰にかかるのがいちばんよいか、たずねてみるのが近道でしょう。