歯の損傷とはどんな外傷か

 歯の損傷は、交通事故などでのあごの骨折や唇の裂傷を伴うような重傷な状態から、物の角にぶつけて歯がぐらつく状態まで、その程度はさまざまです。
 受傷年齢は、一般的に若年者に多い傾向がみられます。これは、運動神経の発育途上で外力に対する防御がうまくできないことで、顔面をぶつけ歯を損傷する可能性が高いからです。
 年齢を細かく分けると、就学前の幼児期に起こる外傷は、主に家のなかでのアクシデントにより乳歯(前歯)が抜けたり、ぐらぐらすることがよくみられます。
 小・中学生になると校庭での外遊び時の外傷が増え、永久歯の前歯が抜けたり、根が折れたり、歯が欠けたりすることが多くみられます。この時期は永久歯の根が未完成なこともあり、将来に大きな障害を残すことになりかねません。
 歯の生え代わるこの時期の子どもで外傷を受ける原因として、上顎前突(じょうがくぜんとつ)(出っ歯)が考えられます。口元が出ていることで損傷を受ける可能性が高くなります。こうしたことを防ぐためにも、歯並びが重要になってきます。
 成人では、飲酒後の転倒、自転車などでの交通事故、スポーツ外傷、殴打によるケースなどがあります。

受傷時の状態

 歯の損傷の状態は乳歯・永久歯に共通で、下記のように分類されます。 (1)歯が抜け落ちる場合(完全脱臼(だっきゅう)、脱落) (2)歯が骨のなかにめり込む場合(埋入(まいにゅう)) (3)歯がぐらぐらする場合(挺出性(ていしゅつせい)脱臼) (4)歯の根っこが折れる場合(歯根破折(しこんはせつ)) (5)歯の一部が欠ける場合(歯冠(しかん)破折) (6)歯の打撲(だぼく)・震盪(しんとう)
 以下に、各状態での対処法および経過を示します。

対処法および経過


(A)歯が抜け落ちた場合

 この場合、いかに早く歯科医院へ行くかが重要です。治療を受けるまで、抜け落ちた歯を保存するよい方法は牛乳内に入れておくことです。その際、周囲の汚れは、弱めの流水下で軽く洗い流す程度にしてください。強く洗ったり、ふき取ったりしないでください。歯の表面にある歯根膜(しこんまく)という組織があり、その歯根膜が傷ついたり乾燥してしまうと、適切な治療を行っても歯は生着しません。
 もし牛乳がない場合は、自分の口の中で保管してもよいです。この場合、誤って飲み込まないように歯茎と頬っぺたの間、もしくは舌の下に入れておくことがよい方法です。
 治療方法は、脱落した歯を抜け落ちた歯槽内に戻して整復固定します。固定は3週間行い、その後、歯の神経を取り除く治療が必要になります。固定したままにしたり、根の治療を怠ると歯根が溶けたり(歯値吸収)、骨と癒着したりすることがあります。
(B)埋入、ぐらぐらしている(挺出性脱臼)の場合
 歯が歯槽から抜け落ちないように気をつけ、整復固定を受けることです。この場合、歯槽骨(歯の植わっている骨)が折れていることがあります。
 術後についてはAとほぼ同様ですが、歯根が未完成の場合、神経が再生する可能性があるので、より慎重な経過観察が必要です。
(C)歯根破折
 根が折れていると歯がぐらぐらしており、挺出性脱臼と同じです。この場合はX線検査で確認しないとわかりません。折れている場所が悪ければ歯を残すことはできません。
 受傷直後にはあまり動揺がなく、X線検査でもはっきりしない場合でも、数週間から1カ月程度で動揺してくることもあり、術後の観察は必要です。
(D)歯冠破折
 歯の一部が折れている場合、折れた歯の状態にもよりますが、根と接着して戻すことができる場合があります。歯の破折の場合、歯の神経が露出して激しい痛みを伴うことがあります。
 露出した歯の神経は、汚染されていなければ鎮静し、治癒させることが可能です。根が未完成の場合は、とくに神経が残る可能性が高いので慎重な対処が必要です。
(E)打撲・震盪
 歯の揺れはないが痛み伴う場合、打撲・震盪の可能性があります。受傷直後は噛み合わせに気をつけ、状態によっては噛み合わせ調整が必要なことがあります。10日程度はできるだけ安静にすることが重要です。

歯の損傷のポイント

 外傷を負った歯は、受傷の状態によりその予後は大きく変わります。ただし、適切に治療がなされない場合、程度が軽くても抜歯に至ることもあります。受傷後はできるだけ早期に歯科医院を受診し、適切な診断・治療を受けることが重要です。永久歯の歯根が未完成な状態(学童期前半)の外傷は将来に及び、骨の成長にも大きな影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。
 損傷により歯の神経がダメージを受けると、色が黒ずんでくることがあります。受傷後の色の変化は治療のサインです。