上腕二頭筋腱断裂とはどんな外傷か

 上腕二頭筋は、いわゆる力こぶを作る筋肉で、上端が2つに分かれています。分かれた外側は長頭と呼ばれ、その長い腱(長頭腱(ちょうとうけん))は肩関節のなかをとおって肩甲骨関節窩(か)(肩関節の受け皿)の上に付きます。もう一方の内側の頭は短頭と呼ばれます。下端は、太い1本の腱で橈骨(とうこつ)(前腕の親指側の骨)に付いています。
 この筋のはたらきは、主に肘関節を曲げることと前腕の回外(手のひらを上に向ける運動)です。
 上端の断裂は長頭腱に限って生じ、完全断裂と部分断裂(腱の一部だけが切れる)があります。完全断裂は特殊な場合を除いて障害はありません。部分断裂は、痛みが強い場合は肩の動きに支障を与えます。
 下端の腱断裂は上端の腱断裂と比べて約30分の1と少ないのですが、重大な障害です。

原因は何か

 高齢になると、肩関節の部分で長頭腱の上面を包んでいる腱板が自然に高率に断裂します。長頭腱の断裂の大部分は、この腱板の断裂に伴って長頭腱が徐々に摩耗(まもう)され、何でもない日常生活中に生じます。
 一方、どの年齢層にも腱板断裂を伴わない長頭腱断裂が生じます。肉体労働やスポーツ(ことに剣道)に伴って、急に力を入れた時にブチッという音とともに断裂します。
 下端の腱断裂は中・高年の男性肉体労働者に多く、下から重い物を急に持ち上げる時や、高い所からの荷崩れを支えようとした時などに生じます。

症状の現れ方

 長頭腱の断裂では、肩から二の腕の前面に痛みを感じます。肘を曲げて重い物を持ったり、手のひらを力いっぱい上に向けたりすると痛みが増します。数日たつと痛みは薄れますが、力こぶの前面の皮膚に出血による青あざが出ます。
 下端の腱断裂では、バキッと音がして肘の前面に強い痛みが現れ、肘の動きと手のひらを上に向ける動きは痛みのために不可能になります。次第に肘前面にはれと出血による青あざが現れます。

検査と診断

 長頭腱の完全断裂では、力こぶをつくると筋が下端のほうに移動して肘関節のすぐ上に半球状の膨隆(ぼうりゅう)(膨らみ)が現れるので、簡単に診断されます。高齢者では前述のように陳旧性(ちんきゅうせい)(以前から存在する古くなった)の腱板断裂の存在を疑わねばなりません。
 部分断裂は特徴的な症状が乏しく、外来でできる諸検査でも診断ができず、関節鏡検査(関節のなかに細いのぞき棒を入れる)が必要になることがよくあります。下端の腱断裂は、発生した状況や特徴的な症状から診断は簡単ですが、断裂の詳細を把握するためにはMRIが必要です。

治療の方法

 長頭腱の完全断裂は、それ自体ではとくに日常生活に支障がないので、高齢者の場合は、痛みがとれるまで比較的安静を守るだけで構いません。しかし、上腕二頭筋に命令を伝えている神経(筋皮神経と呼ぶ)が引っ張られて肘の外側から前腕の親指側に痛みを起こした場合には、手術が必要です。
 長頭腱が断裂しても肘を曲げる力は保たれますが、手のひらを上に向ける力が弱くなるので、若い人や中年の肉体労働者の人では断裂した腱を上腕骨の上端に固定する手術がすすめられます。
 部分断裂で痛みが強く続く場合には、断裂の部分を削って滑らかにしたり、完全断裂と同様の手術をします。
 下端の腱が断裂した場合には、全例で手術が行われます。通常骨に腱が付く所で切れますので、骨に孔(あな)をあけてしっかり縛りつけます。

応急処置はどうするか

 長頭腱断裂では、とくに痛みが強ければ三角巾(風呂敷やスカーフを三角形に折ったものでよい)で腕を吊ります。痛みが少なければ、とくに何もしません。痛みの原因を知るためにも、整形外科を受診してください。
 下端の腱断裂では、三角巾で腕を吊り肘の部分を氷などで冷やして、できるだけ早く整形外科を受診してください。