二次性高血圧とはどんな病気か

 何らかの特定される原因があって高血圧を示す状態を二次性高血圧と呼びます。原因にもよりますが、治せる高血圧ということもできます。症状は無症状のものから、その原因に起因した特徴的なものまでさまざまです。検査の手順、診断、さらに治療方法に関してもそれぞれの疾患に応じて行われます。


 以下、頻度の高い二次性高血圧について具体的に概説します(表3)。

腎実質性高血圧(じんじっしつせいこうけつあつ)

原因は何か

 二次性高血圧のなかでは最も頻度の高いもので、全高血圧の2〜5%を占めます。腎臓病、糖尿病、膠原病(こうげんびょう)などの基礎疾患をもとに腎障害を示している病態で、腎臓実質(腎血管以外の腎臓)の障害による糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)、慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん)、腎硬化症(じんこうかしょう)、多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)により、高血圧になります。腎臓実質の障害から高血圧に至る正確な機序(仕組み)は不明です。

症状の現れ方

 高血圧による特徴的な症状はなく、原疾患による症状が前面に現れます。

検査と診断

 血液検査に加え、糸球体濾過値(しきゅうたいろかち)測定やシンチグラフィ、レノグラム、腹部CT、MRIなどの画像検査による腎機能の評価は重要です。鑑別診断のために、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる腎生検も行われます。

治療の方法

 現在のところ、慢性腎疾患の発症を予測し、予防することは難しい状況です。したがって、透析が必要になる末期腎不全(じんふぜん)への移行を防ぐうえで、血圧のコントロールは非常に重要です。これら原疾患としての腎臓病の治療に関しては、それぞれの項目の治療欄を参考にしてください。
 降圧目標は13085mmHg未満とし、1日の尿蛋白排泄量が1g以上の高度な尿蛋白があるものでは、腎機能に注意しながら12575mmHg未満にコントロールすることが推奨されています。

二次性高血圧に気づいたらどうする

 原疾患の治療に加え、降圧薬の減量・増量、変更や追加、食事(食塩量、水分摂取量、蛋白摂取量)をはじめとした生活習慣改善など、きめ細かな対処が必要になります。

腎血管性高血圧(じんけっかんせいこうけつあつ)

原因は何か

 腎動脈が狭くなることで、腎臓からレニンというホルモンが分泌され、引き続いて強力な昇圧物質であるアンジオテンシンIIがつくられることにより高血圧になります。頻度は全高血圧の1%程度です。
 狭窄(きょうさく)の原因としては、中高年に多い動脈硬化によるものが3分の2で、残りは比較的若年者にみられる線維筋性異形成(せんいきんせいいけいせい)や塞栓、大動脈炎などによるものです。

症状の現れ方

 特徴的な臨床症状には乏しく、本態性高血圧との区別は症状だけでは困難です。しかし、家族歴のない若年発症の高血圧、中高年での突然の高血圧発症や急速な血圧コントロール不良、急速な腎機能悪化、腹部での血管雑音などの症状がある時は、本症が疑われます。

検査と診断

 詳細な問診、狭窄部位での血管雑音の聴取、レノグラムやシンチグラフィ、安静時および刺激時でのレニン活性高値、血管造影による狭窄の確認、腎静脈血レニン活性の測定により確定診断します。実際に本症と診断されるのは、腎血管病変の治療後に、血圧が正常にもどったことを確認することによります。

治療の方法

 治療法は症例により適宜選択されますが、まず試みられるのはバルーンカテーテルによる経皮経管(けいひけいかん)腎血管形成術です。とくに線維筋性異形成では治療成績もよく、第一選択になります。動脈硬化によるものは拡張後の再狭窄が問題になっていましたが、ステント(筒状の器具)の留置が可能になってからの成績はよくなっています。また、外科的治療(バイパス手術や自家腎移植)が行われることもあります。
 これらの治療ができない場合は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬を中心に薬物治療が行われます。

二次性高血圧に気づいたらどうする

 経皮経管腎血管形成術の進歩や薬物療法により、予後は著しく改善していますが、気づかずに放置していると重い合併症が起こりやすくなります。他の二次性高血圧でも同じですが、早期発見が重要です。

原発性(げんぱつせい)アルドステロン症(しょう)とその類似疾患(るいじしっかん)

原因は何か

 原発性アルドステロン症は、副腎皮質(ふくじんひしつ)からアルドステロンというホルモンが過剰につくられる疾患です。狭い意味での原発性アルドステロン症はアルドステロン産生副腎腺腫(せんしゅ)のことをいいますが、両側性の副腎過形成(かけいせい)に伴う特発性(とくはつせい)アルドステロン症や副腎がんを含めて、広い意味で原発性アルドステロン症と呼ばれることがあります。
 以前は全高血圧の0・3〜1%と報告されていましたが、近年の診断法の進歩により、その頻度は10%前後と決して少ないものではないことが明らかになってきました。

症状の現れ方

 過剰につくられたアルドステロンの直接作用あるいは二次的効果により、高血圧、筋力の低下や多尿などの症状を示すことがありますが、大半の人は無症状のことが多いようです。

検査と診断

 臨床検査上は、低カリウム血症、血漿(けっしょう)レニン活性の低下、血中アルドステロン濃度の上昇、副腎皮質よりつくられるコルチゾール値が正常である正コルチゾール血症を特徴とします。二次スクリーニング検査として、アルドステロン分泌刺激あるいは抑制試験が有用です。以上の検査によって本症と診断されれば、鑑別診断のためにCT、MRIやシンチグラフィなどの画像診断を行います。
 一般に腫瘍の径が1〜2cmと小さなことが多いため、画像診断で不確かな時は副腎静脈造影や、カテーテルによりさまざまな静脈部位で直接採血してホルモン産生部位を推定する副腎静脈サンプリングを行います。

治療の方法

 副腎腺腫による原発性アルドステロン症と副腎過形成に伴う特発性アルドステロン症とでは、治療法が大きく異なります。前者は外科的治療(副腎腺腫の摘出)ですが、後者では内科的治療(スピロノラクトンという利尿薬)が選択されます。
 本症の予後は一般に良好とされていますが、心血管合併症の頻度は本態性高血圧症よりも高いことが報告されています。理由ははっきりしませんが、副腎腺腫を摘出したにもかかわらず高血圧が続くこともあります。

褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)

原因は何か

 褐色細胞腫は、カテコラミンという副腎髄質(ふくじんずいしつ)から分泌されるホルモンが過剰につくられる疾患です。“10%病”と呼ばれるように、両側副腎由来が10%、悪性が10%、副腎外由来が10%、家族内発症が10%を占めます。全高血圧の0・1〜0・2%を占めます。発症に男女差はなく、年齢も10〜80代まで幅広くみられます。

症状の現れ方

 著しい高血圧、頭痛、発汗過多、代謝亢進、高血糖を特徴とします。褐色細胞腫の3分の2は、普段は無症状ですが発作的に症状が現れる発作型です。

検査と診断

 カテコラミンの過剰産生を血液や尿の検査で証明します。一般に、発見時の腫瘍の径は大きく、CT、MRIやシンチグラフィなどの画像診断が容易です。最近は、画像診断で腫瘍が偶然見つかった(偶発腫瘍)あと、本症と診断される例が増えています。糖尿病高脂血症の合併もよくみられます。

治療の方法

 治療の原則は、外科的に腫瘍を摘出する方法です。

二次性高血圧に気づいたらどうする

 腫瘍を完全摘出した場合は血圧も正常にもどり、予後は良好です。しかし、放置していて血圧上昇が著しい場合には、高頻度に脳卒中(のうそっちゅう)や心不全を来します。

クッシング症候群(しょうこうぐん)

原因は何か

 クッシング症候群は、副腎皮質(ふくじんひしつ)よりコルチゾールというホルモンが過剰につくられる疾患群で、クッシング病(下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ))と副腎腺腫が大半を占めます。まれな疾患で、全高血圧の患者さんの0・1%以下です。30〜40代に好発し、女性に多くみられます。

症状の現れ方

 コルチゾールの過剰による高血圧に加え、中心性肥満、満月様顔貌(がんぼう)、背部の水牛様(すいぎょうよう)変化、多毛など非常に特徴的な症状を示します。性機能の低下や糖尿病もよくみられます。

検査と診断

 基本的にコルチゾールの過剰産生を証明しますが、原因特定のため詳細なコルチゾールの抑制あるいは刺激試験が必要です。部位診断や鑑別診断のためにCTやMRIなどの画像診断を行います。

治療の方法

 治療の原則は、外科的に腫瘍を摘出する方法です。
 下垂体腺腫、副腎腺腫とも、腫瘍の完全摘出例では予後は良好ですが、副腎がんによるものは予後不良です。
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 以上、述べてきた疾患のほか、表3に示すように、大動脈炎症候群大動脈縮窄症(しゅくさくしょう)、甲状腺疾患、副甲状腺疾患、末端肥大症(まったんひだいしょう)、睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)、さらに薬剤などが高血圧の原因になることがあります。