心臓のはたらきと血液循環

 心臓は、その大部分が心筋(しんきん)という特殊な筋肉でできた臓器で、一般の成人で握りこぶし大(重量約300g)の大きさをしています。心筋が収縮、拡張を繰り返すことにより1分間に約5lもの血液を全身に送り出す、いわゆる「ポンプ」の役割をしています。


 血液の循環経路には、大きく分けて体循環と肺循環の2つがあります(図5)。
 体循環とは、心臓から拍出された酸素や栄養に富んだ血液(動脈血)が、身体のなかで最も大きい動脈血管である大動脈をとおって全身の組織(脳、臓器、筋肉など)に送り出され、組織から排泄された二酸化炭素や老廃物を多く含む血液(静脈血)が静脈を通じて再び心臓に帰る経路です。
 一方、肺循環とは、心臓にもどった静脈血を肺に送り、肺で二酸化炭素と酸素を交換し、再び動脈血として心臓に運ぶための経路です。これら2つの経路により全身の臓器、筋肉は十分なはたらきをすることができます。

冠動脈とは

 心筋も、他の臓器や筋肉と同様にたえず酸素が供給されないと、十分なはたらきをすることができません。また、体の他の部分にある筋肉と比べて約3倍の酸素を必要とします。そのため、心筋にはどの臓器や筋肉よりも優先的に新鮮な動脈血が供給されるようになっています。


 図6に示すように、心筋に動脈血を供給する血管を冠動脈といい、心臓からつながっている大動脈の根元より左右1本ずつ分岐し、心筋の表面を冠のようにおおっています。
 右冠動脈は、心臓の右側、下側をとおり、また左冠動脈は前側をとおる前下行枝(ぜんかこうし)と後・側面をとおる回旋枝(かいせんし)に分かれており、通常、冠動脈の主要動脈はこの3本といわれています。そして、これらの主要動脈は、さらに分岐することで心筋全体に動脈血を送ります。

冠動脈の病気



 冠動脈の病気の原因として、最も多いのは“動脈硬化(どうみゃくこうか)”です(図7)。動脈硬化が起こると、血管の内壁にコレステロールなどの脂肪が沈着し、血管の内側に盛り上がり(プラークまたはアテローム)をつくります。正常冠動脈の主要血管の太さ(内径)は約3〜4mmですが、プラークが大きくなり血管内腔が狭くなると、心筋に十分な血液が送れなくなります。この時、症状としては胸の痛みが出現します。この状態が狭心症(きょうしんしょう)です。
 さらに、プラークが壊れると血栓ができて血管は詰まり、心筋にまったく血流を送れなくなります。この状態が続くと心筋ははたらけなくなり死んでしまいます。この状態が心筋梗塞(しんきんこうそく)です。
 冠動脈の疾患の原因としてもうひとつ重要なのが、冠動脈のれん縮です。れん縮とは冠動脈のけいれんで、動脈硬化の進行していない部位にも起こります。
 れん縮が起こり、冠動脈の血流が減少または停止すると胸痛が起こります。動脈硬化の進行による狭心症とは起こり方が異なることから、異型(いけい)狭心症または冠(かん)れん縮性(しゅくせい)狭心症と呼ばれています。また、冠動脈のれん縮が長時間持続すると、血栓が詰まった時と同様に心筋梗塞となることもあります。