狭心症<循環器の病気>の症状の現れ方

 代表的な発作の症状としては、胸の奥が痛い、胸がしめつけられる・押さえつけられる、胸が焼けつくような感じ、などがあります。大多数は胸部の症状として現れますが、上腹部(胃のあたり)や背中の痛み、のどの痛み、歯が浮くような感じ、左肩から腕にかけてのしびれ・痛みとして感じることもあります。
 また、痛みの程度は、冷汗を伴う強いものから、違和感程度の軽いものまであります。とくに糖尿病の患者さんは、病変の重症度に比べて、症状を軽く感じることが多く、注意が必要です。

(1)労作(ろうさ)(性(せい))狭心症
 歩行、階段昇降などの身体的な労作、精神的な興奮・ストレスが誘因となります。安静にしたりストレスがなくなると、多くは数分で、長くとも15分以内で症状が改善します。
 通常、心筋は運動などにより動きが盛んになると、正常なはたらきを保つための十分な酸素・栄養を必要とし、冠動脈の末梢が広がることによって血流が増します。しかし、動脈硬化により冠動脈に狭窄があると、心筋に十分な血流を送り出すことができなくなります。
 狭窄の程度が強いと少し動いただけで、また狭窄の程度が軽いと激しい運動をした時に、心筋への酸素の供給が足りなくなります。つまり、心筋の仕事量に見合っただけの酸素供給が足りなくなった時に症状が現れます。

(2)安静(あんせい)狭心症
 労作・ストレスに関係なく起こる狭心症です。後述の異型狭心症、不安定狭心症がこれに属します。

(3)異型(いけい)狭心症
 冠動脈のけいれんによって起こる狭心症です。労作とは関係なく、夜間、明け方に発作が多いことが特徴です。

(4)安定(あんてい)(型)狭心症
 発作の起こり方が一定している狭心症で、労作性狭心症の大部分がこれに属します。

(5)不安定(ふあんてい)(型)狭心症
 狭心症の症状が、軽労作または安静時に起こった場合、最近1カ月の間に症状が新しく始まるか起こりやすくなり、毎日のようにまたは1日何回も発作を繰り返す場合、また、ニトログリセリンが効きにくくなった場合の狭心症です。
 安定(型)狭心症と比べ、冠動脈に高度な狭窄病変を認めることが多く、心筋梗塞(しんきんこうそく)へと進展する可能性の高い状態です。

狭心症<循環器の病気>の診断と治療の方法

 大きく分けて、薬物療法、経皮的冠動脈形成術(カテーテルインターベンション)、冠動脈バイパス手術の3つの方法があります。どの治療を選択するかは、患者さんの年齢、合併症の有無、症状や冠動脈の病変の形態などにより異なります。

(1)薬物療法
 抗血小板薬という血液をさらさらにする薬と、心臓の仕事量を減らすβ(ベータ)遮断薬、心臓の負担を減らして血管を拡張する硝酸(しょうさん)薬、カルシウム拮抗薬などを使います。
 もちろん、冠動脈危険因子である糖尿病高血圧脂質異常症などの治療も並行して行われます。また、カテーテル検査で高度な病変が確認され、後述の冠動脈形成術、バイパス術を行った場合も、内服治療が併用されます。
 異型狭心症では、硝酸薬、カルシウム拮抗薬により、発作の予防をします。この場合、β遮断薬は血管けいれんを誘発することがあり、原則的に使用しません。

(2)経皮的冠動脈形成術(けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ)
 心臓カテーテル検査と同様に細い管を冠動脈の入口に固定したあと、バルーン(風船)を狭窄部にもっていき、血管内側のプラーク(脂肪が沈着してつくった盛り上がり)を押し広げる治療法です。最近では、バルーンのあとにステントという金属でできた網状の筒を留置することが多くなってきました。詳細は心筋梗塞の項を参照してください。
 また近年、バルーン治療以外に、プラークを削りとる治療が行われるようになっています。その代表が方向性冠動脈アテローム切除術(DCA)と、高速回転式アテローム切除術です。今まで冠動脈形成術には不向きといわれてきた冠動脈の入口部の病変、びまん性で硬く石灰化の強い病変にも治療が行えるようになってきました。
 これらの治療法は、後述のバイパス術と比べて患者さんへの負担が少なく、順調であれば、一般的には術後1〜3日で退院することが可能であり、多くの施設で行われています。しかし、約20〜30%の患者さんは数カ月の間に血管内腔が再び狭くなる(再狭窄)ことがあり、冠動脈形成術を繰り返したり、バイパス手術を行うケースもありますが、近年、従来のステントに薬剤が塗布された「薬剤溶出ステント」が使用されるようになり、再狭窄のリスクを減らすことができるようになりました。

(3)冠動脈バイパス手術
 全身麻酔下で開胸し、狭くなった血管の先に他の部位の血管(グラフト)をつなぐ手術です。グラフトとしては、内胸動脈などの動脈、大伏在(だいふくざい)静脈(足の静脈)が使われています。
 一般的には左冠動脈前下行枝(ぜんかこうし)と回旋枝(かいせんし)の分岐する直前である左主幹部や、主要冠動脈3本ともに病変がある時は、この治療が選択されています。
 以前は手術中、心臓の拍動をとめ、その間、人工心肺装置により全身の循環を行うことが一般的でしたが、最近は、人工心肺を使わない心拍動下の手術や、手術の傷の小さな術式が普及しています。
 術後は3週間ほどで退院が可能です。患者さんの負担が少なくなるとともに、さらに早期の退院が可能となっています。