急性肺性心(きゅうせいはいせいしん)

肺性心(急性・慢性)とはどんな病気か

 何らかの原因で肺の血液の循環が急激に悪くなり、肺へ血液を送り出す心臓の右心室に大きな負担がかかると、右心室の急激な機能不全が起こります。この状態を急性肺性心といいます。

原因は何か

 比較的大きな肺動脈の閉塞が原因です。手術、分娩、外傷、骨折などで長期間絶対安静を続けている時に血栓が静脈のなかに生じ、その血栓がはがれて肺動脈に到達し、血液の流れを妨げてしまうことで起こります。健康な人でも航空機や列車などに長時間同じ姿勢で座っていることでこのような状態になることがあります。

症状の現れ方

 急激な呼吸困難、チアノーゼ、胸部痛などを起こし、喀血(かっけつ)・失神を伴うこともあります。発熱し、頻脈(ひんみゃく)になり、ショックや突然死に至ることもまれではありません。
 また、しばしば右心不全を起こしますが、その症状は急激に現れます。

検査と診断

 血液中の酸素飽和度が著しく低下します。心電図では右心負荷の所見を示します。心臓超音波検査では、たいてい右心室が拡大して左心室を圧迫しているような所見が認められます。核医学検査で、肺の換気の状態が正常なのにもかかわらず肺の血流の状態が低下しているような所見があれば、診断は確定します。

治療の方法

 血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)や静脈瘤(じょうみゃくりゅう)がある場合にはこの病気を起こしやすいので、適切な治療による予防が必要です。長期の絶対安静が必要な場合には、努めて下肢を動かしたり姿勢を変えたりして静脈血栓ができないようにします。
 また手術後なるべく早いうちに医師は歩行をすすめますが、これも静脈血栓を避けるための処置ですから、ぜひ守らなければなりません。
 急性肺性心を発病すると、多くの場合、人工呼吸管理や血栓を溶かしたり吸引したりするなどの救急の治療を必要とします。

慢性肺性心(まんせいはいせいしん)

肺性心(急性・慢性)とはどんな病気か

 肺気腫(はいきしゅ)、気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)または肺の動脈硬化などの病気があることによって肺動脈の血圧が上昇すると、右心室は血液を肺へ送り出すために余分な力が必要になります。このため右心室の壁は余計にはたらこうとして肥大してきます。
 この肥大した右心室が強い力で血液を肺へ送り込もうとすることによって、肺の血管のほうでさらに抵抗を高めるような時には、肥大した右心室は負担に耐えきれなくなります。このため、右心室の慢性的な機能不全という状態が起こります。これが慢性肺性心です。

原因は何か

 肺気腫、気管支喘息(ぜんそく)肺結核(はいけっかく)、慢性気管支炎、脊柱弯曲症(せきちゅうわんきょくしょう)などのほか、肺の血管の疾患が原因になります。そのうち、肺気腫による場合が最も多く、肺の細小動脈、毛細血管に閉塞ができ、その結果、肺動脈の血圧が高くなって右心室、右心房に圧力の負荷を加えます。病状が進むと右心不全へと発展します。

症状の現れ方

 動作時に呼吸困難があり、多量の痰を伴った咳があり、気管支喘息を伴うこともあります。呼吸は安静時でも激しく、多くの場合、胸部痛があり喀血(かっけつ)をみることもあります。また、チアノーゼもみられます。
 症状が進むと右心不全が現れ、失神、めまい、嗜眠症(しみんしょう)(眠くてしかたがない状態)などの脳障害、肝腫大、末梢の浮腫(むくみ)、頸(けい)静脈の怒張(どちょう)(ふくれあがる)、腹水などが起こってきます。

検査と診断

 先に述べたような肺の病気があり、かつ右心不全の症状が現れたら、慢性肺性心が疑われます。心電図では右心負荷の所見を示します。心臓超音波検査では、右心室が拡大し、重症化すると左心室よりも大きくなります。

治療の方法

 原因となっている肺疾患の治療を行いながら、利尿剤や血管拡張剤を用いて右心不全の治療も行います。痰を出して空気の出入りをよくすることも大切です。かぜや気管支炎が誘因になる場合もあるので、注意が必要です。