だいけっかんてんいしょう大血管転位症の症状や原因・診断・治療方法と関連Q&A
英語/英訳:Transposition of great arteries
- 出典|「六訂版 家庭医学大全科」株式会社法研発行
- 総合監修者
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各編別監修者|循環器の病気|磯部光章 - 東京医科歯科大学大学院循環制御内科学・教授
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執筆者|
新岡俊治 - イェール大学医学部小児循環器外科部長
大血管転位症のどんな病気か・原因は何か
- 新生児期に高度のチアノーゼ(皮膚や粘膜が紫色になること)で発症する代表的な病気です。
- 近年、外科治療成績が著しく進歩したので、早期診断、早期治療が極めて重要です。
- 原因は不明ですが、ファロー四徴症(しちょうしょう)と異なり染色体異常を合併することはまれです。
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- 心房と心室は正常につながりますが、大動脈が右心室から、肺動脈が左心室から始まるという正常とは逆のパターンになります(図20)。
- 治療を何もしない場合は、生まれてから1カ月以内に50%が死亡し、6カ月までに85%が死亡するといわれています。
- しかし、現在では適切な治療をすれば約80%以上が長期生存します。
- 新生児期早期の専門的な治療戦略が必要となるので、疑われた場合はただちに専門病院を受診する必要があります。
大血管転位症の症状の現れ方
- 症状としては、新生児期の高度のチアノーゼが持続します。
- しかし、このチアノーゼは酸素吸入をしてもなくなりません。
- 患児は通常よく太った新生児であり、肺疾患の場合と異なり、明らかなチアノーゼがあっても末期に至るまで呼吸困難はありません。
大血管転位症の検査と診断・治療方法
- 確定診断は心臓超音波(心エコー)、心臓カテーテル検査で行いますが、その後に緊急手術になる場合もしばしばあります。
- チアノーゼが高度の場合には、カテーテルによる風船治療(心房中隔裂開術(しんぼうちゅうかくれつかいじゅつ))を必要とします。
- 肺動脈狭窄(きょうさく)を合併する例では乳児期にシャント手術を行い、2〜3歳でラステリ手術を行います。
- そのほかでは、新生児期または乳児期早期にジャテン手術(動脈スイッチ手術)を行います。
- 左心室の圧が低くて血圧を支えられない場合は、セニング手術(心房内血流転換術(しんぼうないけつりゅうてんかんじゅつ))を行います。
- 手術後は通常の生活が可能になりますが、長期に経過するとさまざまな続発症が現れるため、患者さんの約2〜3割は再手術が必要になります。