静脈とリンパ管の役割

 静脈とリンパ管は、普段は注目されることの少ない、目立たない臓器ですが、体のなかでは次のような大切な役割を果たしています。
 まず、体のなかの老廃物を回収するという、いわば下水道的な役割です。
 人間の体は、機能的に分化した数多くの細胞からできていますが、これらの細胞に酸素や栄養分を送り届けるのは動脈の仕事です。動脈の終点は毛細血管という細い血管ですが、ここからは白血球、リンパ球、酸素、蛋白質などが、血管の外へしみ出していき、細胞の代謝と機能の維持に直接たずさわったのち、8割は静脈へ、残りの2割はリンパ管で再吸収され、再び心臓にもどってきます。
 リンパ管に回収される成分のうち最も重要なのが蛋白質で、血管内外における、さまざまな物質の運搬を調節しています。

どんな病気が起こるのか

 静脈やリンパ管に病気が起こると、これらの物質の輸送や心臓への還流が障害され、ひいては主に蛋白質が再吸収されず、血管の外に失われることによって血液中の浸透圧にも悪影響を及ぼし、組織の代謝が障害されます(リンパ管炎ではこの蛋白質が組織にもれ出し、たまった場所に硬結をつくります)。
 これらの管は、重力に逆らって下から上に内容成分を押し上げています。そのため、静脈には逆流防止弁が、リンパ管には自動収縮能が備わっていますが、これらの機能異常により、物質の還流障害、うっ滞などが容易に生じます。また、こうした還流障害やうっ滞は局所での炎症や血栓の原因ともなります。
 したがって、静脈とリンパ管の病気を予防するためには、循環をよくすること、すなわち心臓も含めた全身の血液の流れを改善することが最も重要です。また、静脈やリンパ管の病気は全身の病気に関係することもあり、全身の状態をチェックすることを忘れてはなりません。
 本項では、静脈瘤(じょうみゃくりゅう)、血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)、リンパ管炎(かんえん)リンパ浮腫(ふしゅ)上大静脈症候群(じょうだいじょうみゃくしょうこうぐん)の順に、5つの病気を解説します。
 聞き慣れない名前が多いと思いますが、静脈瘤上大静脈症候群は静脈の、リンパ浮腫はリンパ管の還流障害で起こり、血栓性静脈炎(静脈の炎症には静脈血栓を合併しやすいのでこのように呼ばれる)は静脈に、リンパ管炎はリンパ管に起こった炎症です。
 すなわち、静脈とリンパ管の病気は主に還流障害と炎症が原因で起こります。