運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)とはどんな病気か

 運動神経(大脳からの運動の命令を筋肉まで伝える神経)が選択的に障害され、運動神経以外(感覚神経や自律神経、脳の高度な機能)はほとんど障害されない進行性の神経変性疾患を、総合的に運動ニューロン疾患(MND)といいます。
 代表的なのが筋萎縮性側索硬化症(ALS)というまれな疾患で、特定疾患に指定されています。多くは孤発性ですが、一部は家族内発症がみられます。

原因は何か

 原因はまだはっきりしていません。アミノ酸代謝の異常や自己免疫が関係するなどいくつかの学説があります。家族内発症の一部では、遺伝子異常が見つかっています。

症状の現れ方

 50代での発症が多く、いつとはなしに手足に力が入らなくなり、筋肉がやせてきます。典型的には片側の手の先に力が入らなくなり、徐々に全身に広がります。口やのどの筋肉が障害されると、ろれつが回らずうまくしゃべれなくなり、食事でむせ込み(嚥下(えんげ)障害)、咳(せき)が出るようになります。呼吸筋が障害されると呼吸がしにくく、痰(たん)も出しづらくなります。

検査と診断

 一般的な血液検査や頭部CT、MRI検査では正常です。類似した疾患を除外し、筋電図検査で運動ニューロンの障害を証明することで診断されます。
 似たような病気には、頸椎症(けいついしょう)、末梢神経障害、多発性筋炎などの筋肉の病気、脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)や脊髄腫瘍(しゅよう)など、さまざまなものがあります。

治療の方法

 病気を治す方法は、現在のところまだありません。リルゾール(リルテック)という薬は病気の進行を遅らせる効果が証明され使われていますが、その効果はごく軽微です。そのほか、いくつかの薬の開発・治験が進められています。
 基本的には対症療法となり、嚥下障害に対しては経管栄養、呼吸筋麻痺に対しては鼻マスクや気管切開をして、人工呼吸器で呼吸を補助する方法があります。
 この疾患は、やがて全身の筋肉が動かなくなって寝たきりになり、最後は呼吸筋麻痺で死亡します。発症から死亡までの期間は2〜4年ですが、なかには10年以上にわたりゆっくり経過する人もいて、進行の速さには個人差があります。

運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)に気づいたらどうする

 似たような病気があり、また進行性の疾患なので、専門医(神経内科)の診察を受けてください。
 病気が進行すると飲み込みにくさのため誤嚥性(ごえんせい)肺炎や窒息(ちっそく)を起こすので、食べやすい食事の形態の工夫や、痰を除去するための吸引装置の準備、経管栄養や胃瘻(いろう)の造設が必要になります。呼吸筋麻痺については、将来的に気管切開や人工呼吸器を使用することがあります。担当医と本人、家族とで、あらかじめよく相談しておくことが大切です。

関連項目

 脊髄性(進行性)筋萎縮症進行性球麻痺頸椎症ニューロパチー